研究課題/領域番号 |
22K13104
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
秋本 隆之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (70824845)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 複合述語 / 語彙範疇 / 無他動性 / 形容詞 / 形容名詞 / 異形態 / 分散形態論 / 日本語 / 複合語 / 動詞 / 動名詞 / 軽動詞 / 連濁 / 省略 / ラベリング / 主要部 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語には様々な複合語が存在しているが、それらの品詞的振る舞いは一様ではない。例えば、「叩き壊す」と「手洗い(する)」という複合語の右側要素(すなわち、壊す、洗う)はいずれも動詞であるが「叩き壊す」は動詞として活用できるのに対して、「手洗い」は「*手洗う」のように動詞活用はできず、「勉強する」のような動名詞と同じような活用を示す。本研究は、このような品詞的振る舞いが変わらない複合語と品詞的振る舞いが変わる複合語を比較し、最新の言語理論から捉え直すことで、日本語の複合語形成の理解に貢献するとともに、日本語の複合語形成を通して一般言語理論に寄与することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、形式的な形態統語理論を用いて、下記①~④の日本語複合語の構造と派生メカニズムの解明を目的としている。 具体的には、分散形態論と極小主義統語論の二つの理論モデルを用いて複合という語形成を再検討し、複合語形成に関わる「主要部と主要部の併合」に提起される理論的問題と、①~④の複合語における「右側要素と複合語全体の性質」に関わる経験的問題の解決を通して複合語形成の理解と一般言語理論への貢献を目指す。①V-V型 複合動詞(例:叩き壊す、駆け上がる、焼け落ちる、など)、②X-V型 複合動詞(例:手洗い、早食い、立ち読み、など)、③X-A型 複合形容詞(例:根深い、心細い、肌寒い、など)、④X-A型 複合形容名詞(例:骨太な、気弱な、極細な、など) 本年度前半は②のV-V型(抜き取る)の形態統語構造の分析を行った。前年度の研究において、②のV-V型は①のX-V型とは異なり、前項動詞(V1)は独立して書き出し(Spell-out)されるという仮説を提案したが、どのタイミングでV1がV2と併合するかについては今後の課題として残った。今年度はV-V型に見られる無他動性と動作主性という観点からV-V型の中にはVoiceレベルでの複合が起こるものがあると提案した。本年度後半は、③、④の複合形容詞・形容名詞を通して日本語のPred主要部の異形態選択および日本語の語彙範疇について研究を進展させた。Nishiyama (1999)の日本語形容詞分析を発展し、日本語のPredの異形態選択は範疇化辞aの形態素性を参照することを主張した。さらに、いわゆる範疇(Category)には統語操作で必要とされる範疇素性と形態操作で必要とされる範疇素性があるという仮説を提案し、日本語に特有とされる動名詞や形容名詞といった範疇は統語的範疇と形態的範疇の不一致によるものだとする仮説を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はV-V型の形態統語構造および複合メカニズムの深化と複合形容詞・形容名詞を含む日本語の形容詞類の形態統語構造の解明が主たる目標であった。そのいずれについても、考察対象である現象に関する分析を考案し、その妥当性を裏付けるデータと理論的説明を得ることができた。前者については、台湾で開催された国際学会で発表し相応のフィードバックを得ることができた。また同学会で得られたフィードバックから本研究課題に関わる軽動詞「する」を伴う現象のうち「そうする・そうなる」の研究に進展させることができた(この研究は、9月に滋賀大学で開催された国内研究会で発表した。)。後者については11月に東京大学で開催された日本英語学会で発表し有益なフィードバックを得ることができた。それをもとに英語学会のプロシーディングスであるJELSに論文を投稿した。以上の理由から、研究が当初の計画通り進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、23年度に行った研究発表の内容を論文にまとめる作業を進めていく。特に、「軽動詞「する」はVoiceの具現形である」という仮説は非常に大きな説明力があると判断できるため、この仮説を中心に据えた論文を国際誌に投稿する。また、V-V型複合動詞に関わる無他動性と動作主性に関する研究も日本語動詞の項構造研究に重要な役割を果たすためにこちらも論文としてまとめ投稿する。これと同時に、本研究課題のサブテーマの1つである「主要部と主要部の併合におけるラベル付けの探究」を範疇の観点から深化させていく。
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