研究課題/領域番号 |
22K13105
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 日本大学 (2023) 二松學舍大學 (2022) |
研究代表者 |
戸内 俊介 日本大学, 文理学部, 教授 (70713048)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 上古中国語 / 方言 / 甲骨文 / 金文 / 否定詞 / 量詞 / 判断文 / モダリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の初歩的調査では西周金文の言語がいくつかの文法的特徴の違いにより、大きく二組に分けることができると考え、その上でこの現象は一組が殷代中国語の影響を受けた周王室の言語を、もう一組が春秋戦国時代の言語へと繋がる諸侯の言語を反映したものであると推定する。本研究はこの仮説を論証しつつ、甲骨文の殷代中国語と西周金文の西周中国語、そして春秋戦国時代の上古中期中国語の方言差を明らかにすべく、個々の文法現象(否定詞の機能、コピュラ文の形式、二重目的語の語順など)の各時代における様相を比較・分析した上で、殷代中国語や西周中国語がどのように上古中期中国語へと交替したのか、そのプロセスを描き出すことを試みる。
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研究実績の概要 |
2023年度はコロナ禍が明けたのち、早い段階で中国の北京大学中文系に訪問学者として招聘され、8月11日から9月10日の1か月間滞在するという好機を得られた。その間、漢語史与出土文献系列講座《基于出土文献的語法研究》というタイトルのもと、本科研に関わる成果を3回に分けて講演を行った。1回目は〈上古漢語否定詞“不”“弗”演変補論:兼論“不”分勿切的読音来源〉で、上古中国語の否定詞「不」「弗」の文法機能の変遷について論じた。2回目は〈殷商漢語数量表達研究〉で、殷代甲骨文に見える数量表現を網羅的に調査した結果を報告した。本発表は今年度論文としても刊行された。 3回目は〈西周金文中的社会方言〉で、本科研の主体となる研究である。西周金文の否定詞「不、弗、勿、毋」の文法機能、及び判断文の文法的現れに基づき、西周金文の銘文が2種類の社会方言に分けられることを論じた。 このほか論文も単著3本、共著4本を刊行した。いずれも中国語で執筆したものである。 上古中国語のモダリティに関する研究として〈上古漢語非真実情態成分“其”〉、〈西周漢語非真実情態成分“其”〉を刊行した。また〈殷商漢語数量表達研究―兼論漢語個体量詞的来源〉は殷代甲骨文に見える数量表現を網羅的に調査した論文である。このほか共著の戸内俊介・野原将揮・海老根量介・宮島和也「安徽大學藏戰國竹簡(二)《仲尼曰》譯注(1)」は、チームを組んで戦国時代の竹簡(楚簡)を読み進めた研究成果である。 さらに研究代表者は、一般向けにも文章を積極的に発表している。日本漢字能力検定主催のwebサイト「漢字カフェ」(https://www.kanjicafe.jp/)において毎月1回の連載を持ち、そこで古代中国語や漢字を話題としたコラムを執筆している。2023年度は4月から3月まで12回、文章を公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023度は西周金文が反映する言語に見える方言的要素について検証すべく、西周金文の用例をより広範に収集し、詳細に検証した。西周金文はその内容によって、王室や諸侯の儀式を中心に叙述したものと、訴訟の経過など儀式以外のものに分けることができ、その上で①前者は王室メンバーの対話や、王室の儀式、王室の儀式を模倣した諸侯の儀式で用いられる言語を反映し、②後者は非王室メンバーが用いる口語性の強い言語を反映していると研究代表者は考えている。つまり西周金文に見える言語には2種類の社会方言が反映されているということである。この仮説は以下の点から確認できる。 (1)①の方言では否定詞「弗」「勿」はしばしば目的語をともなう動詞を否定する。これは殷以来の古めかしい用法である。一方②ではしばしば目的語をともなわない動詞を否定する。それは春秋時代以降につながる新興の文法現象(すなわち、「弗」は「不」+目的語代名詞「之」が併合した形式で、「勿」は「毋」+目的語代名詞「之」が合併した形式)である。 (2)判断文を表すとき、①の方言ではコピュラ「唯/惟」が積極的に用いられ、②の方言では名詞述語文が用いられる。前者は殷代に、後者は春秋時代以降によく見られる形式である。このような、同時代資料内における言語的、文法的な違いを、本研究では西周における社会的方言の違いと見なす。 とはいえ、(1)(2)ともに、この仮説に合致しない例文がいくつか見られ、現在はその用例の検討を中心に進めている。また、北京大学中文系で〈西周金文中的社会方言〉という題目の講演を行った際に、北京大学諸先生から多くの助言をいただいた。現在はその意見に基づき、用例の再検討も行っている。 さらに、上記の②の方言の直接の後継言語と目される春秋戦国時代の言語について、当時の言語を直接反映する生の資料として、戦国時代の竹簡(楚簡)の釈読も積極的に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は海外で研究報告を行えた上、さらに論文も複数本公開でき、多くの業績を蓄積することができた。 今後については以下のような計画である。まず西周金文に見える方言に関する研究は、引き続き西周金文の分析を行いつつ、否定詞や判断文以外で、社会方言の違いが反映されていると思われる言語的、文法的現象を探し、自説の補強を行う。同時に自説にとって問題のある例文を重点的に調査する。 また春秋戦国時代の言語については出土文献を積極的に利用し、検討を進める。2023年度は安徽大学蔵戦国竹簡所収の『仲尼曰』篇をチームを組んで読みつつ、その前半の訳注を中国語で刊行した(戸内俊介・野原将揮・海老根量介・宮島和也・宮内駿「安徽大學藏戰國竹簡(二)《仲尼曰》譯注(1)」)。2024年度はその後半の訳註を作成するとともに、同じ安徽大学蔵戦国竹簡所収の『曹沫之陣』を読みつつ、訳注の作成に取り組む予定である。その上で、西周金文に見える言語的、文法的現象との比較を行う。 このほか、甲骨文や西周金文を読み解くための基礎的作業の一環として、漢字や古文字に対する研究も継続的に遂行し、文法研究への足掛かりとする。
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