研究課題/領域番号 |
22K13116
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
朱 冰 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (30827209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | テキスト的意味 / 間主観的意味 / 語用論的標識 / 談話標識 / 中国語 / 主観化 / 間主観化 / 意味拡張 |
研究開始時の研究の概要 |
テキスト・談話の内部関係や一貫性を表すテキスト的意味と聞き手に対する話し手の注意を表す間主観的意味の発達は、意味変化の後期段階に起こることが多く、しばしば主観化・間主観化の理論枠組みにおいて論じられている。しかしながら、意味変化に関する従来の研究では、テキスト的意味と間主観的意味との密接な関係について体系的な分析が遅れている。本研究は、言語類型論の観点から、中国語と他言語との対照を通じてテキスト的意味と間主観的意味の連続性と相互拡張の実態を明らかにし、このような機能上の連続性を動機づける要因を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、テキスト的意味と間主観的意味の相互拡張のパターンについて、2つのケーススタディを通じて考察を行った。 (1)中国語の談話標識“要知道”における(間)主観的意味とテキスト的意味の発達 中国語の“要知道”は、義務を表すモーダル助動詞“要”(なければならない)と動詞“知道”(知る)の組み合わせに由来した談話標識で、背景情報を導入するとともに、それを相手に注意させるように促すというテキスト的機能と間主観的機能を果たすマーカーとされている。一方、相手に注意を促す目的は、話し手が自分の判断や主張を正当化するため、“要知道”は話し手がスタンスを取り、主観的な態度を示す一面も持ち合わせていると考えられる。もとの組み合わせは、相手に義務を課し、指示を出すという間主観性が高い表現と考えれば、談話標識としての“要知道”には、多様な談話機能を獲得し、主観的意味、間主観的意味とテキスト的意味のような多様な意味拡張が見られる。 (2)禁止表現に由来した接続詞“別V”に見られる間主観的意味とテキスト的意味の交渉 禁止の意味を表す副詞“別”と一部の動詞の組み合わせ“別V”(「~しないで・~するな」)が、譲歩や条件などを表す接続詞に転成し、テキスト的意味を獲得した。しかし、他の接続詞と比べ、“別V”パターンの接続詞が用いられる場合、話し手が聞き手に従属節の命題内容から目を離させ、より重要な主節の命題内容に注目させるように誘導しているニュアンスが強く、元の禁止表現が持っている間主観的意味が残存していることが分かる。それは文法化の度合いにも関係しているが、“別V”パターンの接続詞は、テキスト的意味と間主観的意味を持ち合わせており、両者がなしている連続体に位置していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)“要知道”に見られる(間)主観的意味とテキスト的意味の発達について、国際学会で発表し、有益なコメントをもらい、これから論文化する予定である。 (2)“別V”パターン接続詞に見られる間主観的意味とテキスト的意味の交渉について、論文化して提出し、これからの出版に向けて進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
豊富な古代語・現代語の資料と電子コーパスを持つ中国語は、他言語に観察されない重要な言語事実を提供する可能性が高く、テキスト的意味と間主観的意味の連続性に見られる言語間の普遍性と多様性を解明するために言語類型論の観点から大いに貢献できると考えられる。今後、これまで中国語のデータに対する分析を踏まえ、先行研究から他言語のデータを収集し、言語類型論の観点から対照研究を行うことによって、テキスト的意味と間主観的意味の連続性に見られる中国語と他言語との共通点と相違点を明らかにする。
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