研究課題/領域番号 |
22K13127
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
トート ルディ 長崎大学, 多文化社会学部, 助教 (60824620)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 日本語学史 / 幕末 / 長崎方言 |
研究開始時の研究の概要 |
江戸時代の外国人による日本語研究資料は,当時の口語・長崎方言の文法や語彙,発音を知る上で貴重な資料であるが,本研究で対象とする幕末期の四つの資料(出島オランダ商館長ドンケル・クルチウス編纂の日本語文典の原稿・蘭和辞典の断片,同文典についての勝海舟著のメモ,商館医ファン・デン・ブルック編纂の蘭和辞典)は,オランダ語で書かれているためか,まだ十分に検討されていない。本研究では各資料の成立過程を検討し,資料中の口語・長崎方言の実態や資料作成者の日本語観を明確にする。さらに,各資料を翻刻・訳注して他の研究者にとっても扱いやすいものとして公開することで,方言(史)学や通時的社会言語学等の分野に貢献する。
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研究実績の概要 |
2022年の夏にオランダへ赴き、オランダ国立文書館とライデン大学附属図書館およびユトレヒト大学附属図書館を訪れた。さらに、出島オランダ商館医ファン・デン・ブルックが出島で編纂した蘭和辞典の原稿を含む、ファン・デン・ブルック旧蔵資料のマイクロフィルムを入手した。 オランダ国立文書館では、1857年に出版された出島オランダ商館長兼オランダ領事官ドンケル・クルチウス編纂の日本語文典『日本文法試論』の日本への輸入に関する文書や、1860年代にこの文典を用いて日本語を学習して渡日した人物に関する文書等をいくつか見つけて、撮影した。また、オランダのライデン大学附属図書館およびユトレヒト大学附属図書館に所蔵されている『日本文法試論』の数冊を閲覧し、この文典を増訂出版したライデン大学の最初の日本語教授ホフマンや当時のオランダ植民地大臣によるいくつかの書き入れを確認し撮影した。これらに含まれる『日本文法試論』の成立についての情報に関しては現在検討中である。 ファン・デン・ブルック旧蔵資料のマイクロフィルムには、蘭和辞典の原稿以外にもいくつかの日本語研究資料が含まれているが、ファン・デン・ブルックがこれらの編纂または筆写にどのような資料を用いたかに関しては現在調査中である。既に、ファン・デン・ブルックが資料の一部には蘭和辞典『ドゥーフ・ハルマ』、メドハーストの『英和・和英辞典』やフィッセルの『日本の知識への寄与』等を用いた可能性が高いことが判明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、①幕末の長崎におけるオランダ人による日本語研究資料の成立過程の解明と、②その内容の検討・訳注に大きく分けることができるが、予定よりも早くファン・デン・ブルック旧蔵資料のマイクロフィルムが入手できたため、特に①の目標はすでに達成に近い状況となっている。その反面、本格的に②に取り組むことが令和5年度からとなった。
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今後の研究の推進方策 |
『日本文法試論』に関しては、開国しつつあった日本との有利な関係を保とうとするオランダ政府が増訂出版を命じたという背景があるため、幕末日本に対するオランダ政府の言語政策の一環として位置づけて、これらの政策についての論文を執筆する予定である。 ファン・デン・ブルック旧蔵資料に含まれる各種の日本語研究資料に関しては、それぞれの資料の特質と成立(既存の辞書の使用等)についての論文を執筆する予定である。 同時に、『日本文法試論』の原稿やファン・デン・ブルック編纂の蘭和辞典の原稿の訳注に取り組む。
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