研究課題/領域番号 |
22K13132
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
山中 延之 京都女子大学, 文学部, 准教授 (00782591)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 抄物 / 桃源瑞仙 / 黄氏口義 / 室町時代の日本語 / 高山寺 / 鎌倉時代の日本語 / 明恵 / 百衲襖 / 史記抄 / 室町時代語 / 中華若木詩抄 / 日本語史 / 国語史 / 中世 |
研究開始時の研究の概要 |
室町時代を代表する五山僧のひとり、桃源瑞仙(1430-89)の諸資料を調査することで、室町時代、特に15世紀後半の言語及び文化について研究する。桃源は室町時代語資料の最大の記録者のひとりと言ってよく、また、抄物の文体・体裁の確立者であると言ってよい。後代は桃源の影響を大きく蒙っていることから、本研究によって抄物史前半(15世紀)のかなりの部分をカバーすることができると思われる。
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研究実績の概要 |
1,共著書『抄物を読む―『黄氏口義』提要と注釈―』を刊行した。『黄氏口義』は黄庭堅の詩の諸注釈の集成であり、難解な抄物として知られる。本『抄物を読む』は『黄氏口義』の概説と一部の詩の注釈である。本科研代表者は第一部の概説の中では「6『黄氏口義』の言語」・「7参考文献」の2章を、第二部の翻刻注釈の中では劈頭の詩「古詩二首上蘇子瞻(其一・江梅)」の1首を担当した。「6『黄氏口義』の言語」は、『黄氏口義』と現代日本語との異なる部分を中心に言語の概略を述べたものであり、抄物資料全般の言語解説ともなっている。「7参考文献」も、『黄氏口義』だけでなく、抄物を研究する際に応用できる文献一覧となっている。注釈は、200以上の注釈や底本にはない追加の訓点などにより、抄物初学者の理解を助けている。
2,「抄物からの汎用的語釈の採集」と題して口頭発表をおこなった。室町時代語のより正確な理解のために、同時代の一資料群である抄物に含まれる語釈的注釈、及びそれに類する類義語等の記述を、以下の3つに分類しつつ紹介した。1つ目は、ある語への直接的な語釈が抄物本文に見られるもので、「語釈的な注釈」と呼ぶこととした。2つ目は、抄物に多用される類義語・対義語による説明から、間接的に語の意味を知ることのできる「類義語・対義語を示す注釈」である。そして3つ目は「表記に関する注記」である。
3,研究論文「小川義章師覚書類の翻刻(その6)―『高山寺記録 寺史作成の資料Ⅰ』(その3)―」は、本年度9月度に実施した高山寺調査の成果である。高山寺に所蔵される明恵上人関連等の典籍は鎌倉時代の日本語資料として貴重であり、室町時代の日本語資料を扱うためにも重要な資料となる。本『高山寺記録 寺史作成の資料Ⅰ』は鎌倉時代・室町時代を含む高山寺の歴史を総合的に捉えた資料であり、所蔵典籍をよりよく知るための文献として翻刻するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記「研究実績」のうち、特に共著書の刊行と研究発表とをおこなうことができたことによる。 共著書『抄物を読む』の本科研代表者担当部分は、前回・前々回の代表科研によって得られた成果も含まれている。機会があれば今後の増補も期したいと考えている。 研究発表「抄物からの汎用的語釈の採集」は、実際に取り上げることのできた語釈の数は少なかったが、今後の調査によって大きく増補することが可能であり、一定の数が集まれば室町時代語研究に大いに資すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本科研のもっとも主要な目的は、室町時代を代表する抄物作者のひとりである五山僧・桃源瑞仙の諸資料を調査することであった。本年度に概説・注釈を刊行することのできた『黄氏口義』は、その編纂素材に桃源の講義に基づくかと思われる部分を有している。ただし、今の段階では桃源講と断定するに至っていない。その検討が今後の課題である。
また、本年度の研究発表において、抄物中の語釈の意義に触れた。今後はまず、桃源瑞仙の作成した抄物を網羅的に調査して、語釈的な記述を採集したい。桃源の講解態度なども明らかになってくると思われる。
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