研究課題/領域番号 |
22K13133
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
岡村 弘樹 佛教大学, 文学部, 講師 (90848110)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 自動詞・他動詞 / 四段動詞の下二段化 / 助動詞「リ」 / 中世語 / 聞書 / 抄物 / 文法史 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語では自動詞・他動詞の形態的・意味的対応が上代より見られる。しかしその傾向や特徴が現代まで変わらずに引き継がれているのか、あるいは変化・変遷しているのかは十分に明らかにされていない。そこで本研究では、中世語を対象として動詞の自他の対応に見られる傾向・特徴に変化があるか否かを確認する。さらに、中世後期以降盛んになり、後の可能動詞へと繋がる四段動詞の下二段化が自他の対応といかに関係するかを解明し、中世から近世にかけての文法史をより精緻に記述することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、日本語史の転換期とも言える中世における動詞を対象とし、自動詞・他動詞の対応の傾向・特徴にそれまでの時代と違いがあるか否かの確認と、中世後期以降盛んになってゆく四段動詞の下二(一)段化と自動詞・他動詞の対応との関係の解明を主たる目的とするものである。 昨年度は中世前期の明恵関連の聞書を調査して口頭発表を行い、口語が窺われる聞書において助動詞「リ」の例が見られること、その「リ」の特徴として、文末において終止形で使われる用例に偏るという他文献では見られない傾向が確認されることを明らかにした。本年度はその内容を論文化するにあたって追加調査を行い、聞書や他の鎌倉時代の文献において「言ヘリ」の「リ」がアスペクト性を失っているように見える例が一部見られることを新たに指摘した。 また、現代語の他動詞+「テアル」には受身表現に似た性質が確認され、古典語の助動詞「タリ」が他動詞に接続した例でも同様の例が見られることが先行研究で指摘されている。このことを踏まえ、助動詞「リ」が他動詞に接続した例においても同様の例が見られないかを平安時代の散文を対象に調査したところ、わずかではあるが確認された。 以上の助動詞「リ」に関する調査・検討は、中世後期の抄物に見られる「ヨメル」の類いが四段動詞が下一段化したものなのか、それとも「ヨム」に助動詞「リ」が付いたものなのかといった議論の参考とするために行ってきたものである。助動詞「リ」が現代語の「テアル」と同様に使われうるということと、鎌倉時代における「リ」が文献によっては終止形に偏って使用されたり、アスペクト性を失っているように見える例があったりするという指摘は、中世後期の「ヨメル」の性格を考えるにあたって大きな示唆を与えるものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き助動詞「リ」を中心に検討を行ってきたが、昨年度には指摘できていなかった助動詞「リ」の新たな性質や傾向を見出すことができた。これは、本研究の主眼である四段動詞の下二(一)段化と自動詞・他動詞の対応との関係の解明に対して大きく関係してくるものだと考えられる。さらにその成果の一部については、論文化することで公表した。 以上の通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
調査を進めてきた中世における自動詞・他動詞の特徴の確認について、最後の整理を行う。 この調査の結果と本年度の助動詞「リ」に関する研究の成果を踏まえ、四段動詞の下二(一)段化と自動詞・他動詞の対応との関係についての一連の研究をまとめ、公表することを目指す。
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