研究課題/領域番号 |
22K13135
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
河野 光将 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 助教 (10828784)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 近世歌学 / 日本語学史 / 本居宣長 / 国学 / テニヲハ |
研究開始時の研究の概要 |
近世期の日本語研究は、本居宣長を代表とする国学者らによって飛躍的に発展したとされる。そこにはある種の「断絶」ともいえる発展があったとされるが、比較対象は中世歌学資料が多く近世歌学資料への言及は少ない。一方、文学研究の側に目を向けると、近世和歌の研究が進み、資料へのアクセスが向上している。堂上歌人と地下歌人の交流の実態なども明らかになってきており、そうした知見や資料を踏まえ、改めて近世歌学と日本語研究の関係について考える必要がある。近世歌学資料から言語学的言説を収集・整理することによって、日本語研究史のいわば間隙となっている近世前期の日本語研究の実相を剔出し、その研究史的意味を明らかにする。
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研究実績の概要 |
近世における日本語研究は、本居宣長を代表とする国学者らによって「飛躍的」に発展したとされるのが、従前の日本語学史記述である。そこにはある種の「断絶」ともいえる発展があったとされる(尾崎知光1983)が、比較対象とされているのは、『歌道秘蔵録』などの中世歌学資料であることが多く近世前期の歌学資料への言及はあまり見られない。一方、文学研究の側に目を向けると、近世和歌の研究が進み、『近世歌学集成』などの刊行によって資料へのアクセスが向上している。堂上歌人と地下歌人の交流の実態なども明らかになってきており、そうした知見や資料を踏まえ、改めて近世歌学と日本語研究の関係について考える必要がある。近世歌学資料には語法に関する記述も散見され、各資料から言語学的言説を収集・整理することで近世前期歌学と宣長らの研究の比較が可能になる。本研究は日本語研究史のいわば間隙となっている近世前期の日本語研究の実相を剔出し、その研究史的意味を明らかにすることを目的としている。 今年度は、『近世歌学集成』をもとに近世歌学が志向したものについて考察を行った。近世歌学は、詠歌の担い手が爆発的に増加する中にあって、和歌の伝統を堅持しようと努めていた。特に、実作において新規性をいかに盛り込むのかという問題が重要であり、それは、和歌にとどまらず、俳諧の世界においても同様の問題があるなど、広く同時代的な問題であったことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は『近世歌学集成』をもとに、近世歌学が志向していたものについて考察を行った。その結果、全体としては安易な方法で和歌における新規性を盛り込むことの制限ないし禁止という傾向を確認した。また、それに関連して、俳諧における状況も同様であったことを確認し、これらが詠歌全体に関わるものであったことを確認した。そして、そうした背景には経済的な安定をもとに詠歌を担う層が拡大していったこととの関係性を指摘した。 また、詠歌の担い手が増加することに関連して、石門心学における道歌を取り上げ考察を行った。心学道話については口語性の高さが夙に指摘され研究も進んでいるが、その心学道話とセットで挙げられることが多い道歌についてはこれまでほとんど言及されることがなかった。心学における道歌は幕末にかけ、次第に心学道話から独立して道歌集も編まれるようになるが、表現面に着目すると言語遊戯的性格を強めていく。その背景には、押さえるべき教訓は限られているにもかかわらず、新たに歌を作り出さなければならないという状況があり、これは近世和歌や俳諧が置かれていた状況と同様であったことを明らかにした。 あわせて、「かかへ」や「おさへ」といった歌学独自の用語の内実を明らかにするため『テニハ秘伝』に収録されている術語一覧のデータ化を進めており、テキスト化は完了させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はまず、『テニハ秘伝』に収録されている術語一覧のデータベース化を完了させる。そのうえで、そこで挙げられている出典先本文も併せて一覧を作成することで、各歌学書における術語の比較が容易になるようなデータベースの完成を目指す。具体的には、まず『近世歌学集成』の本文入力が完了できるように、『近世歌学集成』の電子化を進めていく。
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