研究課題/領域番号 |
22K13137
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中嶌 浩貴 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 講師 (00823460)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 英語 / er名詞 / 認知言語学 / フレーム意味論 / コンストラクション形態論 / 英語名詞由来er名詞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は英語名詞由来er名詞(e.g. Londoner<ロンドン居住者>)について、コンストラクション形態論とフレーム意味論を援用して研究を行う。本研究では英語名詞由来er名詞を構文としてとらえる仮説を導入し、当該er名詞の解明を行う。本研究は構文とフレームという、認知言語学での2つの重要な概念の密接な関連性に焦点を当て、両者を組み合わせて言語現象のより包括的な解明を試みるものである。
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研究実績の概要 |
R4年度取り組んだ研究についての途中報告の取りまとめを行うとともに、引き続きデータの収集と先行研究の調査を行った。 まず、英語名詞由来er名詞について、フレーム意味論とコンストラクション形態論の2つを援用し、本研究で中核となる仮説および分析案を提示した。先行研究では、名詞由来er名詞について、基体の名詞の意味やそれと結びつく一般的な知識に着目するアプローチと、er接辞の意味構造を考察するアプローチが提案されていた。本研究ではこれらを排他的関係にあるとするのではなく、統合する形での分析を提示した。すなわち、er名詞を1つの構文としてとらえ、基体の名詞と構文がそれぞれ喚起するフレームが組み合わされるという仮説を提案した。また、コンストラクション形態論の定式化を援用して名詞由来er名詞の定式化を行い、暫定的な分析を提示した。このことは中嶌 (2023)として論文化した。加えて、昨年度に引き続き、現代英語コーパスThe Corpus of Contemporary American English (Davies 2008-)を用い、新規の名詞由来er名詞を収集したデータベースの作成に取り組み、現象の整理と記述を進めた。 さらに、名詞由来er名詞および関連する事象についての先行研究の調査を行った。調査によって、構文理論では構文の定式化について研究によって差異があることが判明した。また、構文とフレームの融合について具体的にどのように取り扱うかに関する先行研究はいくらかあるものの、体系的な議論は今後の課題としてさらなる研究が必要である状況であることも明らかとなった。以上を通じて、名詞由来er名詞の理論化に向けて論点の整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R5年度はR4年度に引き続き、先行研究の収集および整理とデータの収集・分類を行うともに、分析案の提示についても並行して取り組んだ。本年度は昨年度までの進捗を取りまとめた報告を行うこととしていたが、計画通りに報告を論文化するに至っている。 しかし、データの収集において当初の想定通りには進んでいない状況であり、現在もデータの収集を継続中である。また、研究対象についての基礎的文献、および援用する理論についての主要文献、および関連する文献についての収集と整理を継続して行っているが、現在まででさらなる調査の必要性が生じているため、現在取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き名詞由来er名詞のデータ収集を行い、データベースの完成を目指す。特に、本研究は現代英語に関する研究であるため、その実態を反映した形でデータ収集を行うという方向性をより一層推進していくとともに、効率的なデータ収集のため年代ごとに整理して収集を行う方針をとる予定である。 また、研究対象や援用する理論に関する文献の収集と先行研究の整理を継続して行う。特に、コンストラクション形態論に基づく研究について、近年蓄積されてきている知見と今後の課題を整理し、本研究の位置づけと独創性を明確にしていく。 さらに、中嶌(2023)で提案した分析案を検証し発展させる形で分析を進める。現時点では名詞由来er名詞に見られる意味パターンを説明する仮説には至っていないため、データを基に分析を拡張していくことを目指す。er名詞が表す意味を分析した先行研究では、いくつかの意味的パターンが存在することが示されており、パターンの説明をer接辞に求めるものと、基体名詞に求めるものがある。前者は付加する品詞について区別を設けていないものの、動作主体を中心とする、動詞由来er名詞の影響が見られる意味分析を行っている。この点において、名詞由来er名詞の分析としてどの程度有効であるか検討の余地がある。他方、後者の基体名詞に基づく分析についても、当該現象の意味パターンをどの程度カバーできるかが今後の課題として残されている。 本研究では、既に設定した仮説を発展させ、er名詞を構文としてとらえるとともに、構文の持つ意味と基体名詞の持つ意味の合致性に着目した形で意味パターンの説明を目指す。理論的には、構文と基体名詞の双方のフレームの可能な組み合わせのパターンとしてモデル化することを目指す。 以上に関し、データの記述や分析で得られた成果を適宜研究発表や論文を通じて報告していく。
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