研究課題/領域番号 |
22K13185
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
Daniel Pearce 四天王寺大学, 教育学部, 講師 (40845088)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 複言語教育 / 分野横断的学習 / 大学外国語教育 / 地域連携 / 教育シナリオ / PASTEL |
研究開始時の研究の概要 |
外国語学習者の多様化しているニーズに応えるため、複言語教育に基づいた分野横断的なPASTELが提案されている。PASTELは対象言語の習得だけでなく、言語や文化そのものを学習内容として捉え、他分野の学習内容と結び付け、多様な相手や言語の使用場面に対応する力の育成を目指す教育的アプローチである。しかし、複言語教育の先行研究の多くは多言語環境で行われ、日本のような言語的均質性が高い文脈での有用性は十分に解明されていない。そこで本研究の目的は、大学・高等学校向けの教材開発や文脈化を行い、実践研究を通して日本の外国語教育におけるPASTEL教育の有用性を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、外国語学習者の多様化しているニーズに対応するべく、複言語教育に基づいた分野横断的なPASTEL学習の有用性を検討する。PASTELは、言語の習得だけでなく、言語そのものを学習内容として捉え、他分野の学習内容と結び付け、教科を越えたな学習を促進するとともにメタ言語能力の育成を図ることにより、多様な言語の使用場面に対応する包括的な言語能力の育成を目指すアプローチである。しかし、関連する先行研究の多くは多言語環境で行われ、日本のような言語的均質性が高い文脈での有用性は十分に検討されていない。そこで本研究の目的は①大学外国語教育のための教材を作成し、実践研究を通してその有用性を検討する、②高等学校における教科間接続と地域連携を意識した学習シナリオを開発し、現役教員と協働アクションリサーチを行い、教材を作成する、③PASTEL学習のための「教育シナリオ」を構築し公開する、の三つである。本年度は、 1)大学のPASTELリスニング教材を開発し、1年間の実践を分析し、結果をまとめた論文が1本採択された。また、海外研究者(カナダ・サイモンフレーザー大学のDaniele Mooreと、デンマーク・コペンハーゲン大学のPetra Daryai-Hansen)と協働し、言語景観や視覚的言語自伝を使った実践を行い、それぞれをまとめた論文が海外出版の研究論文集に採択された。さらに、教材開発を進め、オンライン研究会を開催するとともに、教材作成協力者の募集を行った。 2)山形県庄内地方の現役高校教員と高校生の協力を得て、地域連携を視野に入れたPASTEL学習の可能性について模索し、今後の学習シナリオ開発のための協力者人脈づくりを行った。 3)上記の①と②について、既に複数の査読論文や学会発表が出来た上、本研究の最終成果物である「教育シナリオ集」の構築を進め、令和5年度に部分的に公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に所属している大学の異動があり、研究計画が当初の予定よりやや遅れているものの、「研究実績の概要」の項で示したように本研究の目的①の②に関する複数の学会発表(JALT PanSIG;全国語学学会全国大会)をしたほか、研究論文(The Language Teacher)や海外出版の論文集(Translanguaging and Epistemological Decentring in Higher Education and Research; Linguistic Landscapes in Language and Teacher Education)にまとめることができた。研究目的①については予定していたより協力者を募集することができ、さらなる教材開発の発展と実践を計画している。これらが研究目的③の達成につながることを期待している。 また、研究目的②について、現時点でまだ小規模であるが、上述したように、研究協力者の協力を得て、学習シナリオ構築の準備を進めている。具体的には、令和4年度3月に海外研究者(カナダ・サイモンフレーザー大学のDaniele Moore)とともに山形県酒田市を訪問し、山形県立酒田光陵高等学校の加藤吉絵(商業科教諭)と現役高校生の協力を得て、地域産業の米生産やその他の地域史を取り上げた英語での交流を行った。令和5年度にこの交流の拡大を図り、学習シナリオの構築に向けてさらなる実践を計画している。 さらに、令和4年度3月に他の科研費研究者とともに、京都大学にて「複言語主義の多元性をめぐって」という名義で国際研究集会を開催することができた。研究集会の国内外の研究者の発表を通して複言語教育の多様な実践と教育関係者のニーズに関する理解を深めることができた。 以上の活動を総合してまとめ、研究目的③の「教育シナリオ集」の構築に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、研究協力者とともに教材開発を続けて、研究目的①と②のさらなる充実を図る。 具体的に、研究目的①については、実践・発表済のリスニング教材の多言語・多分野版を作成する。既に協力者数十名に開発協力をお願いしているため、令和6年度の実践に向けて教材を完成させることを計画している。また、「外交史・冷戦史」を取り上げた大学外国語教育のPASTEL実践をまとめ、分析し学会発表(全国語学学会国際大会;EDiLiC 2023)と論文投稿(複言語・多言語教育研究)を予定している。さらに、翻訳機械などを取り上げたライティング授業を継続して行い、データ収集と分析を進める。研究目的②については、山形県酒田市の研究協力者と実践の拡大を図り、酒田市の地域史と社会科・商業科・外国語科の科目内容を視野に入れた、「発信のための複言語活動」プロジェクトを進める。研究目的③については実施済の教材等をまとめ、PASTELや複言語教育全般に基づいた学習の意義・進め方などを含めた教育シナリオ集の構築を進め、既存の教材データベースウェブサイトの「やえことば」(www.yaekotoba.com)への公開に向けて準備をする。
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