研究課題/領域番号 |
22K13191
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
森山 貴仁 南山大学, 外国語学部, 講師 (10844540)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 政治史 / アメリカ研究 / 保守主義 / 社会運動 / マイノリティ / アメリカ政治 / 多文化社会 / 共和党 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代アメリカ保守主義に参加したマイノリティの考察を目的とする。1980年代以降のカリフォルニア州におけるアジア系移民を中心に、人口動態の変化とともに起きた政治的変容の検討を目的として、テクスト分析と資料調査を進める。こうした「多文化保守」の研究は、排他的な保守主義運動がもつ歴史的な包摂性を明らかにするだけでなく、マイノリティが保守主義を内部から変質させる過程を分析する一助となる。
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研究実績の概要 |
近年、反移民や白人至上主義など白人を主体とする右派ポピュリズムに注目が集っている。それに対して本研究は、アメリカ政治の「多文化保守主義」について考察することを目的とする。アメリカ保守主義は主に白人中産階級やプロテスタントの運動として一般に理解されるが、その一方で女性や黒人、移民社会出身者、同性愛者などマイノリティの中にも保守が存在する。こうした少数派の一部は、なぜ自らが属する集団をしばしば排斥する社会運動に共感するのだろうか。本研究は、1980年代以降のカリフォルニア州におけるアジア系移民を中心に、人口動態の変化とともに起きた政治的変容の検討を目的として、テクスト分析と資料調査を進める。こうした「多文化保守」の研究は、排他的な保守主義運動がもつ歴史的な包摂性を明らかにするだけでなく、グローバル化の中でアメリカ政治が今後いかに変容しうるのか議論する上で不可欠なテーマとなる。 2022年度には、二次文献や新聞・雑誌記事といった日本国内で入手可能な資料の分析をとおして研究を進めた。これまで研究蓄積のある黒人保守やラティーノ(あるいはヒスパニック)保守に関する先行研究を収集する一方で、そうしたマイノリティ保守による自伝やその他著作物を読み込み、人種的・民族的少数派の保守に共通する性質を探った。それらの成果として2022年度には、学会での研究報告と、学術論文の刊行に至った。そこから得られたフィードバックを活かしながら、今後もマイノリティ保守やアメリカ南西部地域の変動の分析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では2022年度から2023年度まで一次・二次史料の調査と先行研究の整理を実施する予定であったが、実際には学会での研究報告や、学術論文、そして論集における一章として研究を試論として形にする機会に恵まれた。 まず2022年6月4日に開催された第56回アメリカ学会年次大会のシンポジウムに登壇し、「黒いトランピスト――マイノリティ保守と多人種化する白人性」と題して研究の一部を公表した。本報告は、ドナルド・トランプ元大統領を支持した黒人に焦点を当て、マイノリティ保守を考察する試論である。人種的・性差別的な言動を繰り返すトランプの支持者として、これまで主に白人ナショナリストや白人優越主義者がメディアと研究者から注目されてきた。それに対して本研究は、19世紀末からのアメリカ黒人保守の系譜をたどり、トランプを支持する黒人男女の主張や活動を観察することによって、白人に限定されない〈白人性〉の出現を分析している。フロアからは「黒人保守が認識している自己アイデンティティはどのようなものなのか」「非白人が自らを一部と考える白人性とはどのようなものか」といった本研究にとって重要な質問も受けることができた。 この研究報告をもとに英語による論文を執筆し、2022年12月「Black Trumpists: Minority Conservatives and Multiracial Whiteness」として刊行することができた。 さらに、2016年から進めていたラティーノ保守に関する研究をまとめ、「マイノリティの保守主義――一九七〇年代以降におけるヒスパニック保守」と題する論考を著した。本論文では、カリフォルニア州のメキシコ系アメリカ人であるリチャード・ロドリゲスという保守知識人を取り上げて、1970年代のラティーノと保守主義との関係を考察している。この論考をふくむ論集は2024年度中に刊行される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
このように、2022年度においては保守的な黒人やラティーノについて研究を深め、マイノリティ保守に共通する思想を分析した。今後は、さらなる二次資料の分析をとおして保守的なマイノリティの比較・対照を続けつつ、アジア系アメリカ人の保守派にも研究を広げて、彼らと共和党との関係やアメリカ南西部の環境変化を考察したい。
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