研究課題/領域番号 |
22K13194
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉田 邦彦 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (50908655)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 「洞」 / 相馬氏 / 岩城氏 / 葛西氏 / 権力編成 / 室町・戦国期 / 東日本大震災 / 福島県復興祈念公園 / 戦国期 / 奥羽 / 洞(うつろ) / 郡主 / 福島県浜通り / 古文書 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、南奥海道地域の相馬氏・岩城氏を主軸に据え、南奥と隣接する中奥の葛西氏・常陸の佐竹氏や江戸氏も射程に入れた調査を行う。研究基盤となるのは、3年間の計画的な史料調査である。 研究フィールドである福島県浜通りは、原発事故被災地である。一連の研究を通じて、地域における震災の位置づけを相対化すべく、現地でシンポジウムを開催し、中世史研究の立場から、震災と被災地の関係を捉え直す方向性を探る。
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研究実績の概要 |
本研究は、南奥海道地域(現福島県浜通り)の領主である相馬氏及び岩城氏を主な検討対象とし、戦国期における権力編成やその特質を追求することで、戦国期奥羽領主研究の枠組みを再構築することを目的とする。研究期間は3ヵ年である。 2年目にあたる2023年度は、研究計画に従い、研究対象を南奥に隣接する中奥の葛西氏まで拡大するとともに、これまで未調査であった岩城氏関係文書の資料調査に取り組んだ。岩城氏関係資料に関しては、岩手県奥州市において自治体史未収録の中世文書原本2点、新出を含む中世文書の写を8点発見し、茨城県高萩市において既知の棟札の再調査を行った。相馬氏関連資料については、2023年度中に刊行された『相馬市史』通史編(原始・古代中世)・中世資料補遺編にて、自治体史未収録の中世文書(原本を含む)を掲載することができた。宮城県松島町や同県石巻市においても、自治体史未収録の南奥仙道地域に関する中世~近世初期文書の原本を複数発見しており、研究基盤が強化されつつある。 2023年度に公表した論文では、室町時代の相馬氏や、戦国後期の岩城親隆・常隆の分析から「洞」に対する認識を深めることができた。また、これまで腰を据えて取り組んできた常陸江戸氏の「洞」に関しては、本科研が水戸市立博物館の特別展「江戸氏」に協力、同館の特別講演会には「共催」として携わり、来場者と「洞」に対する認識を共有する場を設けることができたことは大きい。 本研究は、中世史研究のみならず、研究フィールドである福島県浜通り=原発事故被災地における歴史・文化継承も視野に入れている。この点については、共編著『大字誌両竹』第5号(蕃山房、2023年12月)を刊行したほか、福島県復興祈念公園をめぐる諸問題について論文を公表し、地域住民の立場から同公園や震災の記憶継承をめぐる「内」と「外」との認識の相違を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、1・2年目は秋田藩家蔵文書や葛西氏関係文書の調査を視野に入れていたが、相馬氏・岩城氏関係文書の調査に時間が割かれ、思うように調査対象を広げることができなかった。相馬氏・岩城氏関連文書については、限られた資料群の調査ではあったものの、自治体史未収録の中世文書原本を複数見出すなど、着実に成果を挙げることができた。 戦国期南奥領主は、主家が滅亡した後、近世には秋田藩や仙台藩に仕官した家が多く、旧仙台藩領(宮城県・岩手県南部)に中世文書が移動している事例が多いことも調査の過程でわかってきた。3年目の課題として、旧仙台藩領の資料調査を進めながら、南奥領主及び葛西氏関連史料の掘り起こしを進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
相馬氏関連史料は、すでに1・2年目の調査でほぼ網羅できたものと思われることから、これらの成果に基づき、戦国期の権力編成について研究を深めたい。岩城氏関連史料は、2年目の調査で得られた知見や、見出した中世文書を論文のかたちで公表すべく準備を進めていく。隣接地域である常陸江戸氏・中奥葛西氏について、特に後者に関する資料調査を進めていく必要がある。戦国期までの文書は限られることから、旧仙台藩領における葛西旧臣に関する文禄~寛永期までの史料を視野に入れ、岩城氏関連史料調査とともに取り組んでいきたい。 本研究では、研究成果を論文にまとめるだけでなく、関連地域で講演会やシンポジウムを開催し、住民に成果を直接還元することも視野に入れている。2年目に各自治体と調整した結果、最終年度の3年目に福島県楢葉町・富岡町においてそれぞれ講演会ないしシンポジウムを開催する方向で調整することができた。よりより住民への成果還元の在り方を模索したい。 また、2年目は研究フィールドである福島県浜通り=原発事故被災地における諸問題(福島県復興祈念公園、震災の記憶継承、資料保全等)に言及した。地域の存続は、現在研究を進めている当該地域の中世史を考える上でも重要な問題であることから、引き続き関心をもって取り組んでいきたい。
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