研究課題/領域番号 |
22K13199
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松岡 弘之 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (30877808)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ハンセン病 / 戦後民主主義 / 社会運動 / 自治 / 地域社会 / アーカイブズ / 当事者運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、わが国初の国立ハンセン病療養所として1930年に設置された長島愛生園(岡山県瀬戸内市)を対象として、戦争によっていったん休止した自治会活動と入所者運動とが戦後再建されるなかで、田中文雄(1912-1979、本名は鈴木重雄)と森田竹次(1910-1977)という対照的な政治的主張を掲げた入所者を中心に、医療と生活をめぐる当事者運動をめぐる戦後史を検討するものである。本研究ではこれまで未整理であった一次資料を調査し、双方の主張や運動の具体的な過程を解明することで、「隔離」を維持しつづけたハンセン病問題を起点として、戦後民主主義の可能性と課題の両側面を考察する。
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研究実績の概要 |
本年度も引き続き(1)国立療養所長島愛生園歴史館(岡山県瀬戸内市)が所蔵する同園入所者であり入所者運動の中心的な人物であった島田等の関係資料、および(2)社会福祉法人洗心会(宮城県気仙沼市)が所蔵するハンセン病回復者である鈴木重雄の関係資料という2つの資料群を中心とした調査に取り組んだ。(1)は今年度確認された資料も含めて全35箱となるものであるが、研究課題との関係では、戦後になりそれまでの療養所や自治会のあり方を厳しく批判して入所者運動の担い手となった森田竹次、および森田とともに活動に取り組んだ島田等が1940年代以降に作成した手帳・ノート類が注目される。本年度はこれら約130点の撮影をほぼ完了することができた。(2)については、代表者が借用中の資料についての目録化を進めるとともに、9月に洗心会で実施した調査で現地に残る文書の目録化を進めたことで、おおよその全体像が確認できつつある。(1)については1980年頃に実施された入所者へのインタビュー音源、(2)では35mmフィルム約1800コマ分のスキャンを完了した。 なお、本年度はこれら国立病療養所が所蔵するハンセン病問題に関する歴史資料の保存と活用に関する議論に参画する機会を得た。特に療養所に保存されてきた運営に関する記録について公文書管理法との関係や今後の活用に向けた理論的・実践的諸課題について医学・歴史学・アーカイブズの関連学会にて報告し、その成果を論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に推移している。島田等資料については膨大な記録であることが判明しつつあり、研究課題との関連で調査順に注意しながら取り組んでいる。洗心会所蔵鈴木重雄関係資料についても書簡群を中心とした内容の把握が着実に進展しつつあるといえる。また、長島愛生園の神谷書庫などにおける入所者作成の記録も調査を継続しており、これらと並行して研究課題にそくした問題の枠組みの把握と新規論点の抽出にも着手している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の感染症法上での取扱いが変更となったことから各方面への資料収集や打ち合わせなどにも取り組みやすくなった。主たる資料所蔵先が高齢者施設であることから感染対策等について細心の注意を払いつつ、今後も資料調査を継続する。なお、目録そのものも研究成果の一部となるもののここにも個人情報が含まれるため、その取扱については資料所蔵先と調整しつつ活用の基盤整備にあたる。また、音声や画像といった多様な資料が確認されたことから、それらの特性にそくした総合的に分析する手法や、保存活用にむけた実践的課題に取り組みつつ、入所者運動の枠組みの把握やそこでの論点の整理にも力を注いでいく。
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