研究課題/領域番号 |
22K13206
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
坪井 剛 佛教大学, 仏教学部, 准教授 (20739792)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 専修念仏教団 / 付法 / 「法難」事件 / 専修念仏禁止令 / 付法状 / 結縁経 / 専修念仏 / 法然 / 新仏教 |
研究開始時の研究の概要 |
近年発見された「西光寺地蔵菩薩像胎内納入品」の分析を中心に、「聖」の人間関係・権門寺院との関係から、専修念仏の宗教集団形成に至る過程を実証的に検討する。また、その宗教集団を維持する原理として「付法」に着目して、法然と門弟の関係を整理することから、宗教集団が維持・継承された要因について考察する。これらの検討を通じて、なぜ鎌倉期に専修念仏や禅宗などのいわゆる「新仏教」が形成されてきたのかといった問題を再考するとともに、宗教集団としての「新仏教」の通時的変容まで見通す。
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度の研究推進の方策に基づき、まず法然やその門弟における相承(付法)のあり方について考察を進めることから、法然在世時の専修念仏教団の組織的特徴について検討した。先行研究では、専修念仏教団には入室弟子と同法者の違いがあることは指摘されてきたが、その違いについては十分に明らかではなかった。この点を検討した結果、相承(付法)を物差しとして見た場合、法然と共同生活する入室弟子と同法者の間では、入門までの過程と相承(付法)の象徴として財産(本尊・房舍・聖教)の処分が伴うかどうかといった違いがあることが明らかとなった。 一方、法然の周囲には、法然と生活拠点を別としつつ、その庵室に通って教えを請う参学者がおり、その中から隆寛・弁長・親鸞といった後の分派派祖となる僧侶が輩出されている。彼らは法然からの『選択集』付与を自身への相承(付法)として認識していたが、これに対しては相承(付法)として不十分であるという批判があった。この点を補うために『選択集』注釈書を記したり、付法状を発給したものと思われる。昨年度に明らかにした良忠の付法状発給の意義は、この流れの中に位置づけることができる。以上の内容は、学会での口頭発表を経て、近日中にその記録が刊行される予定である。 また、その初期専修念仏教団が国家的処罰を蒙った「建永・嘉禄の法難」事件について、「国家」や朝廷の役割や「専修念仏禁止令」の理解を中心に先行研究を整理し、その実態の解明を行った。上記のように同法者・参学者と広がりを持つ専修念仏教団に対しては、権門寺院が主導して追却をすすめており、「専修念仏禁止令」を朝廷の主体的政策として理解することは難しい点を指摘した。この内容は既に論文化し、近日中に刊行される。 併せて「西光寺一筆一行結縁経」の基礎的研究(原本調査・署名者の確定・作成経緯の推定)についても、昨年度より継続して進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
法然在世時の専修念仏教団における相承(付法)について、その教団組織のあり方も含めて整理し、発表することができた。昨年の研究成果と合わせると、法然在世時から鎌倉末の良忠の段階まで、専修念仏教団における相承(付法)のあり方を通時的に見通すことが可能となった。また「西光寺一筆一行結縁経」についても、その作成経緯の検討を続けることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、引き続き専修念仏教団における宗教集団維持の原理について考察する。昨年度までの研究によって、法然没後の専修念仏教団が、幾つかの分派に分かれることになった原因、及び分派内で一定の結束をしていた原理については、相承(付法)という観点からある程度、把握することができた。 となると、それらの分派が互いに批判しあいながらも、全体として法然を祖師とする専修念仏教団として、顕密仏教とは異なる宗教集団を形成していた原理についても、問い直さなければならない。そこで本年度は、改めて法然への祖師信仰という側面からこの課題にアプローチし、その研究成果を論文としてまとめることを目標とする。 また「西光寺一筆一行結縁経」については、昨年度に引き続き、「真言陀羅尼集」紙背文書の検討から、その作成経緯について考察していく予定である。
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