研究課題/領域番号 |
22K13214
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
井上 正望 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 科研費支援研究員 (40896362)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 天皇 / 古代・中世移行期 / 都城 / 平安京 / 神器 / 剣璽 / 境界祭祀 / 四角四界祭 |
研究開始時の研究の概要 |
古代・中世移行期の、特に平安京の内か外かという空間認識の観点から、当該期の天皇における変質過程の一端を明らかにする。都城は、律令制国家の国家としての威容を誇示するために造営された政治的都市である。従って平安京の都城としてのあり方が当該期に如何に変遷したかということは、律令制に対する認識の変遷を示すものである。特に都城たる平安京の内と外それぞれに対する認識の変遷は、中世以降も形式的ながら律令制的あり方が残る京内と、実態として中世的あり方へ移行する京外というコントラストを際立たせるものと考える。このような空間的コントラストの形成過程を考察することで、都城の主たる天皇の変遷を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、古代中世移行期における都城平安京の境界認識や、陰陽道の境界祭祀四角四界祭、当該期の天皇の変質に深くかかわる神器について研究を進めることができた。 学会・研究会での口頭報告を2回行った。具体的には、2022年8月に同朋大学での2022年度日本宗教史懇話会サマーセミナーにて行った、「古代・中世移行期における神器と天皇―剣璽を中心に―」と、東京大学での第120回史学会大会にて行った、「古代・中世移行期における平安京の「内」と「外」」である。前者では神器のうち、皇位継承時に先帝から新帝へと受け継がれる宝剣・神璽(以下、剣璽)に注目し、9~13世紀の天皇や貴族たちの剣璽観の変質過程を検討した。9世紀段階では皇位継承を補強するものでしかなかった剣璽が、12・13世紀には生身の人間としての天皇とは別に、抽象化された別格としての天皇を象徴する存在へと変化する様子を明らかにするとともに、剣璽が平安京内・外のいずれに存在するかが意味を持つようになることに注目した。後者では、11~13世紀の都城平安京の境界認識に注目し、実際に住む人々が実態として認識する境界と、律令制を体現する政治的都市たる都城平安京が持つ理念的境界の2種類の境界が同時併存していたことを指摘した。これらの口頭報告において、いずれも当該期における天皇の変質と密接にかかわる結果が得られたとともに、古代史のみならず中世史の研究者からの意見も頂戴できたのは大きな成果であった。 また四角四界祭に関して、「古代・中世移行期の天皇と境界の祭祀―四角四界祭を題材に―」と題した論文を執筆し、23年度中に刊行される予定である(現在校了)。 23年度は、上記の本年度口頭報告で扱った都城平安京の境界に改めて注目し、2種類の境界認識のうち、特に理念的な境界の意義について、院の認識を中心に研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2回の口頭報告のうち、「古代・中世移行期における平安京の「内」と「外」」によって、本研究全体の大まかな見通しと問題点を得ることができた。また、剣璽に関する口頭報告や四角四界祭の論文執筆により、当該期における人々の境界認識について具体的に検討することができた。これらによって、研究は「おおむね順調に進展している」としている。 併せて、現在『日本書紀』を使用した論文執筆を依頼されており、上記の剣璽に関する口頭報告にその後の成果を交えて、鋭意執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は研究の2年目であるが、上記の通り概ね順調に進展していることから、予定通り院御所が平安京内・京外に置かれた例を網羅的に調査し、院の境界認識を検討する。これによって、院が京=都城という空間を如何に認識していたか、都城の主たる天皇を如何に位置づけていたか、これらの変遷も含めて検討する。最終年度である24年度は、平家政権や鎌倉幕府にも対象を拡大し、武士たちの認識も含めて検討する。
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