研究課題/領域番号 |
22K13222
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
岩本 真利絵 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (50823225)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 明代 / 嘉靖 / 礼制改革 / 中国 / 皇帝 / 政治 / 嘉靖帝 / 張居正 |
研究開始時の研究の概要 |
中国明王朝の歴代皇帝・官僚にとって、祖先が定めた制度、すなわち「祖制」は、君臣両者の行動範囲を拘束する規範を形成していた。ただし、「祖制」は古くから存在した言葉ではなく、明代後期から恒常的に使われるようになった。祖先が定めた制度を表す新たな政治用語の誕生をもたらした明代後期の政治環境や政治議論の変化は明らかにされていない。 本研究では、明代後期の政治議論の中で、祖先が定めた制度を表す言葉がどのように変化していったのかを分析し、「祖制」が生み出された政治的背景とそれが定着していく政治的過程を明らかにし、「祖制」とは明代後期の個別の政治問題に根差して誕生・定着した言葉であることを実証する。
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研究実績の概要 |
まず『明実録』中の嘉靖年間までの用例を集めて、使用時期・使用人物・本当に使用したかどうかの確認をまとめ一覧表を作成した。その結果、「祖制」が対句のための修辞ではなく内実をともなった政治用語として使われるのは、嘉靖九年の礼制改革以降であることが浮かび上がった。そこで、嘉靖九年の礼制改革の議論の詳細を考察し、「祖制」が使われた理由を検討した。その結果、礼制改革初期の天地分祀議論では「祖制」は政治的な意味を持つ用語として使われていなかったが、郊祀配侑論争で嘉靖帝の意向に反対するため礼部が「祖制」という言葉を故意に使用し、その後に嘉靖帝側も「祖制」を使用して自己喧伝するようになったことが明らかになった。また、「祖制」以外に王朝の祖先が定めた制度を表す類義語が中国の政治史上どの時代から使われるようになったのかの概略を調べ、あわせて明代初期における類義語の政治的使用を考察した。これらの成果をまとめて、2022年5月に京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター「近現代中国の制度とモデル」共同研究班において、口頭報告「中国明代における「祖制」の政治化―『明実録』の用例を手がかりに―」を行った。この口頭報告でコメンテーターを始めとする研究者から意見を頂戴し、それを反映させた学術論文を準備した。 また、嘉靖年間後半から隆慶年間における「祖制」の展開を検討するため、隆慶年間の内閣大学士趙貞吉に関する史料を主に収集した。さらに「祖制」をめぐり議論が展開された嘉靖年間~隆慶年間の京営改革を考察するため、台湾で先行研究や史料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に論文を投稿できなかったこと以外は特に問題はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、2023年度内に嘉靖九年の礼制改革と「祖制」の関係をまとめた論文を学術雑誌に投稿する。 また、2022年度に収集した趙貞吉および京営関係の史料・先行研究を整理し、嘉靖帝にとっての「祖制」とそれを否定した趙貞吉の政治姿勢に関する論文としてまとめる。 2023年度はさらに、『皇明経世文編』など明代の代表的な上奏文集を読み込み、『明実録』にみられる「祖制」の用例の変化が他の史料でもあと付けられることや、時代ごとによく使われる類義語の傾向およびその時代背景の検討を予定している。 以上のように、2023年度は主に嘉靖・隆慶年間以前における「祖制」の研究を進め、2024年度以降に万暦年間の研究に移行できるよう準備する。
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