研究課題/領域番号 |
22K13237
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金崎 由布子 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (10908297)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アンデス考古学 / アマゾン考古学 / 地域間交流 / フロンティア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アンデス・アマゾン間の境界地域における先史社会の動態を追跡し、文明形成プロセスを明らかにするものである。そのため、山地と熱帯低地の境界にあり、文明形成の初期に一つのフロンティア領域を形成していたアンデス東斜面の熱帯林での発掘調査を実施する。1960年代以来停滞していた当地域の調査に着手し、今後のアンデス・アマゾン研究の基盤となる高精度編年を構築するとともに、経済・文化・政治等の境界が絶えず揺れ動き、技術革新や様々なシステム創発の揺籃の地となったフロンティアの力学を明らかにすることで、文明形成プロセスの解明の糸口を掴む。
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研究実績の概要 |
本研究は、アンデス・アマゾン間の境界地域における先史社会の動態を追跡し、文明形成プロセスを明らかにするものである。そのため、山地と熱帯低地の境界にあり、文明形成の初期に一つのフロンティア領域を形成していたアンデス東斜面の熱帯林での考古学調査を実施する。 2023年度は、半世紀以上にわたって考古学調査がほとんど行われてこなかったワヤガ川上流域の熱帯林地域と、過去に山地・熱帯低地のルートの一つとなっていた可能性のあるワヌコ市近郊の山岳部において、遺跡探査および試掘調査を実施した。その結果、熱帯林地域では、新たに約30の遺跡が登録された。これらの遺跡の大半から、先スペイン期後期のものと思われる土器が採集された。ワヌコ市近郊でも、同時代と思われる遺跡が複数発見された。ただし、両者の土器は様相が大きく異なっていた。また、当地域では、これまで見つかっている紀元後以降の土器(イゲーラス文化等)とは様相の異なる土器を伴う建築が確認された。 これらの遺跡のうち5遺跡について試掘調査を行った。このうち、標高700mほどの熱帯林の中に位置するピラミッド洞窟遺跡では、先スペイン期後期の堆積の下から、紀元前にさかのぼる形成期の土器や、先土器期の石器群を含む層が発見された。また、レチューサス洞窟遺跡に隣接するカナレス遺跡では、地形が大きく整地された痕跡が見つかったほか、先スペイン期後期の土器や石器を伴う厚さ数十センチ程度の暗色土層が広がっていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、当初の計画以上に進展していると言うことができる。2022年度には、これまで形成期の基壇建築遺跡が発見されていなかったワヌコ地方の雲霧林地域において、このような遺跡が複数分布することが明らかになり、またこの地域が近隣の山岳部、低地の森林地帯の両方と関係を持っていたことを明らかにした。 2023年度には、これまで僅かな遺跡の存在しか知られていなかったワヌコ地方の熱帯低地において、約30の遺跡が発見された。特に、ピラミッド洞窟において、先スペイン期後期から先土器期までの長期にわたる人為堆積が発見されたことは、予想外の成果であった。このような遺跡の発見は、これまで考古学調査がほとんど行われてこなかった当地域において、研究の基盤となる編年構築を可能にするものとして重要である。 また、調査の進捗も順調である。2022年度、2023年度の発掘調査の図面類は全てデジタル化されているほか、これらの調査によって得られた土器・石器についてもすでに図化・写真記録が済んでいる。さらに、2024年度の調査に向けた準備も進められている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の調査は、2023年度の調査で発見されたワヤガ川上流域ピラミッド洞窟遺跡の発掘調査および出土遺物分析を主に実施する。2023年度の調査では、洞窟外側の岩陰部分と、洞窟の入り口付近の2か所において試掘を行った。2024年度の調査では、これらの2か所を拡張してより広い範囲の発掘を行う。発掘調査では、現地考古学者、測量技師、現地学生、作業員らを雇用し、7週間程度調査を実施する。調査により得られた遺物の層位情報、型式学的分析等をもとに、できる限り精度の高い編年を構築する。また、動植物遺存体の分析等を通じて、洞窟の各時期の利用状況の詳細を明らかにする。 また、2023年度の踏査および試掘調査で得られた遺物の分析を現地で行うとともに、炭化物サンプルを日本に輸出し、年代測定を実施する。 2022年度、2023年度の調査成果と本年度の成果を統合し、文明形成期におけるアンデス・アマゾン間境界領域の社会動態を明らかにする。得られた成果は国際誌等で順次発表する。
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