研究課題/領域番号 |
22K13240
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹野内 恵太 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (30778684)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | エジプト / 先王朝時代 / 初期王朝時代 / 清めの儀礼 / 供物奉納 / 土器 / 石製容器 / 共有 / 先・初期王朝王朝時代 / 奉納物 / 儀器 / 供物儀礼 / 神殿儀礼 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、エジプト先王朝時代から初期王朝時代の初期神殿・祭祀遺構出土の儀器および奉納物(土器と石製容器、ファイアンス製容器)を対象とし、それらの容器の分類・整理や出土場所などの分析を行い、さらに後代の古王国時代の碑文資料を用いてそれら容器の機能(どのような儀礼行為で用いられたものなのか)を推定することで、神殿や祭祀場における儀礼の活動実態を復元する。そのうえで、先王朝時代から始まった儀礼活動が初期王朝時代までにどのように各地へ広まり、同時に古代エジプトの宗教の中核ともいえる神殿の儀式イデオロギーがどのように形成・拡散したのかを初期国家形成の文脈の中で議論していく。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、既報告資料の整理・分析・考察に加え、現地での資料調査を中心に研究を進めた。既報告資料については、先王朝時代から初期王朝時代、古王国時代の神殿址や関連する祭祀遺構(大型建造部内の礼拝室、墓前祭祀痕跡など)出土の容器類(土器・石製容器・ファイアンス製容器)を対象として、出土容器の組成・器形や系統性・地域性、出土位置の確認、祭祀遺構の年代観の把握などを実施した。また、使用痕跡の報告や後代の碑文史料との比較などから、その用途・機能を復元し、実施された儀礼祭祀の内容(清めの儀礼、供物奉納儀礼など)を推定する試みも着手し始めた。 現地調査についてはエジプト南部のヒエラコンポリス遺跡にて資料調査を実施した。先王朝時代から初期王朝時代に営まれた初期神殿址であるHK29A出土の石製容器の実測・写真撮影・計測などを行い、データ化を完了した。また、当初計画していなかったが、サッカラ遺跡の発掘調査への参加の機会に恵まれ、初期王朝時代から古王国時代に属する石製容器の新資料を観察することができた。 以上の調査の結果、特に、原王朝から第1王朝初頭の時期において上下エジプト地域間で儀礼用容器の器種や組成が共有され始めていたことを概ね捉えつつある。今年度の研究成果は、儀礼用容器組成の地域的な展開と共有過程、王朝時代における伝統的な儀礼用容器への様式化を素描したことに意義がある(ただし、未だ整理していない既報告資料および未報告資料もあるため、あくまで現時点での成果)。さらに、HK29A出土の未報告資料を多く含む石製容器を資料化し、その神殿内の空間分布の特質や年代的な位置づけなどを明らかにした点が、現地調査における新しい成果として極めて重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までのところ、既報告資料である祭祀遺構出土容器は、発掘調査報告書等からある程度抽出と整理、分析を完了している。しかし、一部でまだアクセスできていない既報告資料がある。加えて、ファイアンス製容器については2022年度中に整理を終えることができず、土器と石製容器のみの整理が現状完了している。そのため、特に容器の系統性などの分析考察は未完了である。 当初計画していたヒエラコンポリス遺跡での資料調査も実施し、HK29Aの出土資料(石製容器)のデータ化は終えている。その一方で、他の地点にあるHK29B(初期神殿址)の資料に関してはデータ化に着手できていない。ただし、当該資料についてはすでに実見を済ませていることから、出土石製容器の組成については概ね把握している。 以上の理由、特に既報告資料の整理・分析が完了していないことから、進捗状況はやや遅れているものとした。
|
今後の研究の推進方策 |
既報告資料についてはその大部分の整理を完了しているものの、祭祀遺構が検出されている遺跡の一部(エレファンティネ遺跡など)およびファイアンス製容器、補完資料としての副葬土器の整理は完了していない。よって、2023年度も引き続き既報告資料の整理と分析考察を進めていく予定である。 HK29A出土資料のデータ化は完了しているものの、分析と考察は十全には進んでいないため、今後は神殿における出土石製容器の機能・役割について、より検討を加えていく。また、現地調査についてはヒエラコンポリス遺跡での資料調査を継続する予定であり、特にHK29B出土資料のデータ化を終えていないため、着手し、完了を目指す。 なお、資料の整理および時空間的な位置づけなど基礎的な作業だけでなく、それらと並行して各祭祀遺構の性質・機能(儀礼祭祀自体の内容)に関する分析・考察もさらに深めていく。そのため、容器以外の共伴資料も勘案する必要がある。 2022年度の調査研究の成果は、2023~24年度にかけて、論文や学会発表にて随時公表していく予定である。
|