研究課題/領域番号 |
22K13241
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
村上 夏希 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, アソシエイトフェロー (90801267)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 古代食 / 奈良時代 / 残存脂質分析 / 胎土分析 / 考古生化学 |
研究開始時の研究の概要 |
古代の土器や食に関する研究は、考古学の地道な発掘調査と遺物の精査により膨大な研究蓄積がされてきた。土器とは本来、食生活の中の一道具であり、土器と食は不可分の関係である。しかしながら、両研究を積極的に結びつける議論は十分にされて来なかった。そこで、本研究では残存脂質分析を用いて土器と直接的に関連する食料資源を推定し、古代の土器や食に関する研究成果を有機的に結びつけることを目指す。多角的な視点から、古代土器本来の役割・機能の復元を試みたい。
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研究実績の概要 |
今年度は①須恵器の産地分析のためのレファレンス作成、②壺G・臼の残存脂質分析、③堝形土器の残存脂質分析の分析結果のまとめをおこなった。 ①は奈良を中心とした地域の窯場資料の元素分析をおこなった。各窯場で化学組成にどの程度差があるのかを確認し、県レベル(奈良、京都、大阪)であれば問題なく分類可能であることを確認した。 ②は須恵器のなかでも壺Gと臼を対象とした残存脂質分析をおこなった。壺Gは静岡から運ばれてきた堅魚煎汁(カツオイロリ)の容器であったといわれている。臼は香辛料の粉砕に利用されたと推測されている。現在の和食文化へと繋がる古代食の継承や消滅を考察する上でカギとなる重要な資料といえる。ただし、両者の注目したい化合物はそれぞれ異なるため、目的に合わせて抽出方法を変えて分析をおこなった。昨年度までに須恵器の分析には通常の野焼き土器の4倍(4g)のサンプル量が必要であることを明らかにしていた。本研究では4gのサンプルから抽出をおこなった。その結果、多くの試料から考古学的解釈が可能な程度の残存脂質が抽出された。 ③は静岡の各遺跡より出土した堝型土器について解析をおこなった。堝型土器については木簡などに見られるカツオ製品(堅魚煎汁カツオイロリ、煮堅魚ニカツオ)などを生産するための道具であったと考えられている。残存脂質分析による化合物の同定と個別脂肪酸の安定炭素同位体比測定の結果、本試料は海産資源の煮炊きに利用された可能性が高いことが明らかとなった。これは従来説であるカツオの煮炊きとも整合性のある結果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の進捗状況について①残存脂質分析と②土器胎土分析にわけて報告する。 ①残存脂質分析についてはデータ解析をほぼ終了しており、現在は文章・図化を進めている。一部成果については本年度中に査読雑誌へ投稿予定である。 ②須恵器の胎土分析について、レファレンスとなる一部窯試料については分析が終了している。ただし他地域の窯場資料の分析と消費地遺跡出土土器の分析については、2024年度も継続しておこなう予定であるが、各資料の入手に関する手続きなどについては問題なく進んでいる。 以上より、本研究はほぼ研究計画通りに進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
残存脂質分析の分析結果については、本年度中にまとめ、インパクトファクターの高い学術雑誌への投稿を予定している。壺Gの胎土分析について、現在は県レベルで産地推定が可能であることを明らかにしているが、県内レベルでの産地推定が可能かを検討している。今後は関西以外の窯場資料を追加し、レファレンスのさらなる充実を図るとともに、壺G資料(生産地遺跡出土、消費地遺跡出土の両資料を対象)を加え、壺Gの産地推定を行っていく。
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