研究課題/領域番号 |
22K13242
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 明治大学 (2023) 東京電機大学 (2022) |
研究代表者 |
村串 まどか 明治大学, 理工学部, 助教 (20868880)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ガラス玉 / 蛍光X線分析 / トンボ玉 / 朝鮮半島 / 古代ガラス |
研究開始時の研究の概要 |
ガラス玉(親玉)に異なる色のガラスが斑点状に象嵌された斑点文トンボ玉は、古代の日本列島内で多数流通しており、朝鮮半島の新羅古墳などからも同様な模様をもつガラス玉が出土している。この斑点文トンボ玉は、その分布状況から東アジアにおけるガラスの生産や流通を知るうえで重要な資料と考えられるが、自然科学的調査事例があまり多くなく、現在までのところ形式的な分類と分布状況からの比較検討が中心であった。本研究では、非破壊オンサイト分析による日本列島および朝鮮半島で出土した斑点文トンボ玉の科学的調査を実施し、考古学・科学的な分析と比較により、その生産と流通の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は斑点状の装飾があるガラス玉(本研究では、「斑点文トンボ玉」とする)の組成情報から日本と主に朝鮮半島との物質交流の一端を明らかにすることを最終的な目的としている。ガラスの化学組成は、その生産地域を推定するための有効な指標であり、本研究では可搬型蛍光X線分析装置を用いた非破壊かつオンサイトでの分析手法によって組成情報を集め、各資料のデータの位置づけを評価し、集めたデータに基づいて日本と朝鮮半島の斑点文トンボ玉の比較を行う。 2年目となる令和5年度は、韓国の国立加耶文化財研究所主催のシンポジウムに参加し、同研究所および国立慶州博物館と国立慶州文化財研究所の見学や、文化財研究に携わる多数の研究者たちと交流の機会を得た。韓国の各文化財研究機関に所属する研究者たちとのコネクションを得ることができ、意見交換も行うことができた。このような交流は、朝鮮半島を視野に入れている本研究の遂行に大きな意味がある。国際的な研究交流だけでなく、本研究に関わる調査として、茨城県ひたちなか市に所在する古墳から出土したガラス玉の分析調査を実施した。調査した資料に斑点文トンボ玉は含まれず、全て単一色のガラス玉ではあったが、貴重な組成データを得ることができた。 また、斑点文トンボ玉に限定せず、文化財の調査手法の充実化も進めており、その一策としてマルチスペクトルカメラを導入した。このカメラは様々な光源とフィルターを入れ替えることで、可視光領域を撮影する一般的なカメラと違い、紫外光領域や赤外光領域の画像を撮影することができる。実際の調査への本格導入はこれからであるが、試験的な利用は始めており、調整を進めている。 以上のように、初年度(令和4年度)の研究状況を受け、令和5年度では分析調査だけではなく多様な方向から研究の遂行に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までのところ、初年度(令和4年度)にて静岡県藤枝市の若王子古墳群から出土した斑点文トンボ玉をはじめ、分析データを蓄積するための調査を実現した。得られたデータについては、まだ解析が完了していないものもあり、データ解析と分析結果の解釈を進めている。二年度目(令和5年度)は、日本国内出土古代ガラスの調査を実施しているが、本研究で用いる分析装置の修理・調整が長期的に必要になったこともあり、本研究の直接的な対象である、斑点文トンボ玉の新規データを得ることはかなわなかった。しかしながら、本研究のもうひとつの対象地域である、韓国の資料調査を目指す足掛かりとして、同国で開かれたシンポジウムに参加し、文化財研究に関わる研究者らとの人脈を得ることができた。本研究を遂行する上での重要な礎を築けたと考える。しかしながら、新規データの蓄積やデータの解釈がやや遅れている印象があるため、研究成果として発表できる段階までもう少し時間がかかる状況である。今後はより一層データの蓄積に力を入れていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、本研究の目的である物質交流の理解度をあげていくためにも、データの蓄積を継続的に進めていきたい。特に朝鮮半島の斑点文トンボ玉の新規データがまだ得られていない。これについては、令和5年度に参加した、韓国開催のシンポジウムで得た人脈を活かし、韓国の文化財研究者に協力を求めていきたい。日本国内の資料に対しても、さらなるデータの蓄積が必要であるが、本報告書執筆時点では、調査の対象候補として具体的に検討しているものがあり、順次進めていきたい。加えて、調査方法を充実させるための策として、令和5年度に導入したマルチスペクトルカメラの実用化も併せて今後進めていきたい。 既に蓄積しているデータについても、解析が完了していないものもあるので、そちらも進めていき、分析調査と並行して、データの解析と結果の解釈をしていく。ある程度まとまったところで、関係学会での発表を検討し、研究成果の報告を目指したい。
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