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数理モデルと非破壊評価法に基づく文化財害虫の検出精度の向上

研究課題

研究課題/領域番号 22K13244
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分03060:文化財科学関連
研究機関独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館

研究代表者

渡辺 祐基  独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 研究員 (20825583)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードニュウハクシミ / 生活史 / 行動解析 / オオナガシバンムシ / X線CT / ケブトヒラタキクイムシ / アコースティック・エミッション / 文化財害虫 / 総合的有害生物管理(IPM) / 個体群動態 / 非破壊評価 / 博物館
研究開始時の研究の概要

文化財を管理する博物館等においては、総合的有害生物管理(IPM)によって害虫被害を予防することが求められる。しかし、文化財害虫の発見に通常使用されるトラップ調査や目視点検のみでは、展示・収蔵エリア内の害虫生息個体数の実数を正確に把握することや、文化財内部で被害を及ぼしている害虫を検出することが困難である。本研究では、博物館や文化財における害虫の検出精度を向上し、文化財IPMの効果を増強することを目指す。そのために、文化財害虫の食害および行動の数理モデルに基づき、トラップ捕獲数から個体数を推定する手法を確立すること、ならびに文化財内部の害虫の非破壊検出手法を開発することを目的とする。

研究実績の概要

本研究では、博物館や文化財における害虫の検出精度向上によって、従来よりも実効的な文化財IPM体制を提案することを目指す。目標達成のため、本年度は、ニュウハクシミの生活史の解明、行動特性の解析手法の検討、および薬剤を用いた対策手法の効果検証を行った。
ニュウハクシミ(Ctenolepisma calvum)とは、紙を中心に食害するシミ類の一種で、近年まで日本国内では未記録種であったものの、既に国内の広範囲に分布を拡大している可能性もある。本種の屋内環境における生活史に関して、産卵は4月から11月にかけて行われ、6月上旬がピークであり、卵期間は通常約2ヶ月であること、孵化後約1年経ち、10齢または11齢になると産卵を開始すること、産卵は年に複数回行われ、1回につき約10個またはそれ以上の卵を産むこと、雌のみで単為生殖が可能であることなどを明らかにした。上記成果は国際誌に掲載された。
また、本種の対策の一手法として、薬剤を壁際へ噴霧する処置の有効性を検証した。本種が発生している屋外に独立した機械室の現場において、残光性のあるピレスロイド系薬剤(乳剤)を壁際に細く噴霧した結果、トラップ捕獲数および目視で発見した死骸数が大幅に減少した。
さらに、本種の歩行パターンを解析する手法を検討した。ニュウハクシミ1頭が長方形の容器内で歩行する様子をビデオカメラで撮影し、得られた動画を個体追跡ソフトウェアで処理することで、個体の軌跡を抽出できた。この手法を用いて、本種を含む歩行性文化財害虫の歩行距離、接触走性(壁沿いに歩く性質)、およびこれらに及ぼす明暗の影響などを評価できることが示された。
上記の他、木製文化財に被害を及ぼすオオナガシバンムシについて、幼虫の木材内部における行動や蛹化・羽化の過程をX線CTによって観察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、近年文化財分野で問題となってきているニュウハクシミを中心に、その総合的管理に必要な知見を基礎・応用の両側面から得ることができた。ニュウハクシミに関する研究成果は、研究成果を学術誌にて論文として公表したり、学会発表を行ったりでき、概ね予定通り進めることができた。一方で、オオナガシバンムシに関する研究については、共同研究者との協議や研究成果の取りまとめが多少遅れており、全体としてやや遅れていると評価した。

今後の研究の推進方策

次年度は、本年度検討した文化財害虫の歩行・移動パターンの解析手法を用いてニュウハクシミの様々な条件下における行動特性を明らかにする。また、ニュウハクシミの発生現場において、個体数や体サイズ構成の季節変化を調査する。さらに、オオナガシバンムシの成長、蛹化、羽化のX線CTによる観察結果を取りまとめ論文として投稿する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 残効性ピレスロイド系薬剤の使用によるニュウハクシミ対策の一事例2024

    • 著者名/発表者名
      渡辺祐基, 島田 潤, 和泉田絢子, 佐藤嘉則, 木川りか
    • 雑誌名

      保存科学

      巻: 63 ページ: 139-144

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development and Reproduction of a Japanese Strain of Ctenolepisma calvum (Ritter, 1910) at Room Temperature2023

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Hiroki, Shimada Megumi, Sato Yoshinori, Kigawa Rika
    • 雑誌名

      Insects

      巻: 14 号: 6 ページ: 563-563

    • DOI

      10.3390/insects14060563

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] アコースティック・エミッションによる木材害虫の非破壊検出 ―ケブトヒラタキクイムシの食害を受けた木製民芸品における一事例―2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺祐基
    • 雑誌名

      保存科学

      巻: 62 ページ: 35-42

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 文化財害虫の歩行パターン解析手法の検討2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺祐基, 木川りか
    • 学会等名
      文化財保存修復学会第45回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] X線CTによる木材害虫の検出と生態解析2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺祐基
    • 学会等名
      2023 東アジア文化遺産保存国際シンポジウム in 札幌:CTの活用ワーキンググループ
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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