研究課題/領域番号 |
22K13245
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柳津 英敬 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (30909560)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 商店街 / 来街者 / 仙台市 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、人口減少・少子高齢化が著しい東北地方の中枢都市である仙台市の中心部商店街を対象とする。 具体的には、来街者の実態を様々な角度から測定するとともに、対象地区の人の流れを過去から複数年にわたって把握し、新型コロナウィルスの感染拡大前後の来街者の量的・質的変化を分析する。 また、中心部商店街関係者へのヒアリング調査等を実施するとともに、実証事業や他地域との比較を行いながら現状を総合的に分析する。 これらの結果から、対象地区の今後の動向やあるべき姿について検討するほか、将来、国内外の都市が直面するであろう共通課題の解決に向けた考察を行う。
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研究実績の概要 |
仙台市内の中心部商店街のうち、アーケード街の6つの商店街を対象として来街者数や属性等の変化を分析した。 来街者数については、「2022年度仙台市中心部商店街通行量調査」の結果を用い、6商店街における2007年から2022年までの傾向分析を行った。その結果、東日本大震災やコロナ禍による大きな変化はあるものの、全体として減少傾向にあり、特に仙台駅から遠いエリアにおいて減少幅が大きいことを確認した。 属性等の変化については、モバイルデータを用いてコロナ禍前の2019年から2022年までのアーケード街における変化を測定した。その結果、コロナ禍を経て、年代別では50代以上の減少幅が大きく、居住地別では東北域内からの来街者の人出が戻っていない実態が明らかとなった。 併せて、毎年1月2日と3日に行われる仙台・初売りについて、2018年から2022年の来街者数や属性等を分析したところ、人出について楽観的な報道が目立った中、ビッグデータを使った推計値は伸びていないことが明らかとなった。この結果については、2月1日に開催した地域関係団体との情報交換会において報告したほか、日本観光研究学会東北支部のNEWS LETTER(2023年2月発行)に投稿し、地域で危機感を共有した。EBPMが叫ばれる中、本研究により客観的な分析を行い、関係機関と共有したことは大きな意義があったと認識している。 また、仙台市以外の調査としては、商店街の活性化を図るため半世紀以上にわたり盛岡市で開催されている「よ市」の取組みを分析したところ、開催日には賑わいが創出されるが、平日の人流や個店の売り上げには直結していないという課題が浮き彫りになった。金沢市においても複数の商店街を調査し、賑わいの創出には観光客の取り込みが重要な要素であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間(2022-2026年度)の初年度にあたり、「仙台市史」等から仙台市内の商店街の成り立ちについて整理したほか、「中心部商店街通行量調査」のデータについて調査開始時点である1985年までさかのぼって入手し、対象地区の人流に関する長期の傾向やコロナ禍前後の変化の特徴を把握した。 また、2019年に仙台市が行った「デジタル技術を活用した人流データ調査に関する報告書」を用いて複数の手法を比較検討し、本調査を行うにあたっては、来街者数の把握は通行量調査、来街者の内訳等の把握にはモバイルデータを採用することとした。 モバイルデータについては、提供する事業者によって特徴が異なるが、測定エリアを自由に設定できるKDDIのシステムを採用することとし、対象商店街の道路上にエリアを設定して、6つの商店街毎のコロナ禍前後の4年間のデータを取得し、一部の分析結果については学会発表や機関誌への報告を行ったところである。 定性的な分析としては、複数回にわたり商店街関係者との意見交換を行ったほか、関係機関を集めて情報交換会を開催し、上記の方法で得られた結果を提供し、現状の課題や今後の施策展開について議論を行った。 初年度としては概ね順調に進み、十分な成果が得られたところだが、いまだコロナ禍から脱し切れておらず、経済・社会の変化が継続しており、課題やアフター・コロナに向けた方向性を見通せる状況にはない。今後、関係機関等との連携をさらに深め、定量的分析と併せて定性的な情報も加味しながら来街者の実態を明らかにし、今後の動向やあるべき姿について分析を深めていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度においては、仙台市の中心部商店街の成り立ちや人流の長期的な傾向など、研究を進める上で前提となる与件の整理を行った。また、来街者の変化の測定方法について比較検討を行い、研究の方針を確定したところである。 新型コロナの収束が見通せない中ではあるが、本年5月8日には感染症法上の位置づけが変更され、人々の心理的側面や行動にも変化が現れると考えられる。今後、引き続き通行量調査の結果の分析やモバイルデータを使った属性等の測定を継続し、新たな視点や周辺エリアも含めたデータの蓄積を行う。なお、モバイルデータの取得時期は、コロナの感染状況を踏まえつつ、研究期間内に複数回を予定している。 令和5年度については、行政や経済団体が、デジタル技術を活用した測定やアンケート調査などを予定されているほか、市内の高等教育機関と連携した個店へのヒアリング調査等も検討中である。今後、こうした調査結果も活用しながら、商店街の人流の実態のほか、来街者や個店が抱く意識などにも着目した分析を行う。 さらに、計画期間内において国内各地の商店街に出向き、現地視察やヒアリング調査等を通して仙台市の状況を客観化しながら、総合的な分析となるよう研究を進める。
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