研究課題/領域番号 |
22K13262
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梅村 絢美 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (80870261)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | long covid / 後遺症 / 医療人類学 / アーユルヴェーダ / 漢方鍼灸 / COVID-19の後遺症 / 南アジア / 伝統医療 / 生物医療 |
研究開始時の研究の概要 |
パンデミックが長期化するなか、COVID-19の診断基準や予防・検査方法の世界標準化とは対象的に、「COVID-19 の後遺症」の範囲や位置づけは、ローカルな文脈において多様化し錯綜している。この状況下、回復後に患者が経験する複数の症状のうち、ローカルな文脈において、何がどこまで 「COVID-19 の後遺症」として認知・診断される/されないのか、それら身体精神的な仕組みや政治・経済・社会・文化的因果関係を、誰がどのように解釈しケアしているのか。本研究では、日本・インド・スリランカにおける複数の医療(生物医療・ 漢方鍼灸・アーユルヴェーダ)を対象とした調査により明らかにする。
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研究実績の概要 |
初年度である本年度は、日本国内およびインド・スリランカにおけるCOVID-19感染拡大状況とその対策の変遷、「COVID-19の後遺症」の行政レベルおよび新聞等オンラインで確認できる範囲での位置づけやその対応について文献・オンライン調査および現地調査によって明らかにした。また、スリランカにおいて短期調査を実施し、「COVID-19の後遺症」がどのように受け止められているのかについて、文献収集およびアーユルヴェーダの医師に対するインタビュー調査を通じて明らかにした。 本年度は、文献およびオンライン上の情報を中心とした調査を実施したため、マクロな視点および医療者側の視点からの「COVID-19の後遺症」のとらえかたを中心に把握することができた。一方で、感染リスク等を考慮する必要から、患者やその家族の「COVID-19の後遺症」やそのケアに関する捉えられ方については、調査が不十分となり、しっかりと把握ができていない。第5類移行に伴い、少なくとも日本国内においては、医療機関における参与観察や患者・家族へのインタビュー調査の実施可能性が高まることが予想されるため、次年度以降、中心的に取り組みたい。また、漢方鍼灸に関しては、情報を収集できる医療機関にアクセスできなかったことから本年度の調査は不十分であったといえる。次年度は漢方鍼灸の調査も積極的に進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、日本国内およびインド・スリランカにおけるCOVID-19感染拡大状況とその対策の変遷、「COVID-19の後遺症」の位置づけやその対応について2020年初頭から時系列を追って整理した。 そこで明らかとなったのは、生物医療において、「COVID-19の後遺症」の枠組みそれ自体が、症状が出現する部位に関する治療方法の枠組み(例えば診療科ごと)の枠内で独自に定義されていることである。また、一部ではゲノムレベルでの研究も進められているようであり、そこでは「COVID-19の後遺症」の発現しやすい遺伝子や、ワクチンの副反応の出やすさ、等に関わる遺伝子型の特定や、免疫反応に関連する細胞に関する研究が進められていることも分かった。これを踏まえ、現時点では、生物医療分野における「COVID-19の後遺症」の認識のされ方とアプローチ法の特徴を、求心的・個別分析的とした。 一方、独立した診療科はあるものの、身体を包括的に捉える身体観をもつアーユルヴェーダにおいては、「COVID-19の後遺症」が、老廃物(アーマ)の蓄積によるものととらえられ、「後遺症」が発現する部位や出方が違えど、適切な方法により、アーマを体外に排出することに治療の主眼が置かれることが明らかとなった。これを踏まえ、現時点では、アーユルヴェーダにおける「COVID-19の後遺症」の認識のされ方とアプローチ法の特徴を、生物医療との対比のなかで、遠心的・綜合的とした。なお、インド・スリランカにおける「COVID-19の後遺症」に関するアーユルヴェーダ的治療は、政府が国内患者へ向けて積極的にその活用を促していることに加え、メディカルツーリズムの文脈において、国外患者へ向けて情報発信していることが分かり、実際、「COVID-19の後遺症」ケアとして外国人が渡印して治療を受けている実態も把握できた。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目にあたる令和5年度は、日本国内における生物医療および漢方鍼灸分野の「COVID-19の後遺症」について、実際の診察を観察したり、医療者や患者にインタビューを実施することを通じて、よりミクロな視点で明らかにしていく。特に、初年度、調査が不十分であった漢方鍼灸分野については、東京都内の医療機関におけるコロナ後遺症外来での診療の観察や医療者・患者・家族へのインタビュー調査を通じて、多角的に明らかにしていきたい。また、初年度は調査ができなかったインド(南インド)のアーユルヴェーダの医療機関においても調査を実施する予定である。 そこで得られた成果を、"Social Science and Medicine"等の国外の医療社会科学系の査読つき学術誌に投稿し、積極的に発信していく予定である。また、本研究を通じて得られた成果や視座について、医療者や医学研究者と意見交換をし、「COVID-19の後遺症」研究の領野を広げていきたい。
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