研究課題/領域番号 |
22K13275
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
許 仁碩 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 助教 (50876307)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 法社会学 / 治安 / 植民地 / 東アジア / 警察 / 社会運動 / 台湾 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、植民地台湾の社会運動における民族問題、そして東アジアで抵抗し続ける台湾人活動家に対し、日本警察はいかにして越境的な治安体制を構築して応じたのかを明らかにする。具体的には植民地における固有の民族問題による警察への影響に着目する。また、民族問題を背景にして、中華民族と日本国民という二重身分を持つ台湾人による越境的な社会運動を取り締まる治安体制を考察する。主に歴史文書を用い、植民地の治安体制における民族問題への対応を把握した上、日本政府が構築した越境的な治安体制の全貌を提示することで、現在の国境と学問分野によって分断された植民地の治安法社会史を総合的な理解へつなげる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本植民地統治を受けた台湾人活動家はいかに当時の国境を越え、抗日活動を展開しているのか、そして戦前の日本警察はいかに越境的な取締体制を構築したのかを、歴史文献調査によって解明するものである。 今年度は、まず戦前満州国、朝鮮半島及び南洋における台湾人の活動をめぐる先行研究から、当時各地で活動していた台湾人の概要をまとめた。そして、『特高警察関係資料集成』から台湾関連の特高文書を調査し、内地の特高が把握した台湾人活動家の情報を抽出した。また、『台湾総督府警察沿革誌』から、当時台湾から大陸に警察官を派遣したことが分かった。 国立台湾図書館など台湾の文書館に現地調査を行った。『台湾総督府警察沿革誌』など資料集に収録されていない『台湾の警察』、『警友』、『台湾警察協会雑誌』、『台湾警察時報』など文献を調査し、植民地たち湾における政治、社会運動への取締実態の解明を進んだ。また、国立台湾歴史博物館、高雄市市立博物館、旧台中警察宿舎、旧嘉義監獄博物館、歴史建築韓内科など博物館に訪問し、展示、所蔵資料、郷土史資料集、遺族の語り及び研究員、学芸員との情報交換によって調査対象になる台湾人活動家の情報を収集した。国立台湾大学、国立政治大学の台湾史研究者に訪問し、戦前治安史、法制史について情報交換を行った。今まで調査してきた一部成果は、中央研究院法律学研究所で開催された「歴史記憶の倫理」ワークショップに招待され、「戦後日本公安警察の歴史記憶と法執行」をテーマに報告をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本で入手できる各資料集に収録されている関連情報は、予想以上に情報量が少なく、断片的なものである。これは当時、内地の特高警察と植民地台湾警察は縦割り組織になり、情報共有が十分ではなかったためと考えられている。そこで、現地の文献調査の重要性が増えてきた。しかし、コロナによる水際対策が緩和されたのは2022年10月以降になり、それ以降も航空便の回復遅れや航空券の高騰など、台湾での文献調査を展開しにくい状況が続けてきた。そのため、国立台湾図書館所蔵資料への初回調査は、時間の関係で文献の所在と概要を把握したが、全文を調べ切るまでまたかなり時間かかる。結果として、植民地時代台湾の政治・社会運動、組織、活動家に関する資料調査は結果を上げたものの、「越境的な抵抗」をした調査対象を本格的に絞り込むことに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これから引き続き特高警察と植民地台湾警察の資料調査を進み、縦割り組織によって断片的な資料を整理し、官僚組織の壁を越える全体像を解明しにいく。とりわけ国立台湾図書館の所蔵資料に詳しく調べていく。 政治・社会運動側の資料について、本年度の研究によって把握された運動組織や活動家に関して、戦後に個人の回想録、日記、書信集、オーロラヒストリーなど資料が残される場合がある。これからこうした人物史の資料も取り入れ、それぞれ越境的な経歴を調査しにいく。
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