研究課題/領域番号 |
22K13277
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
李 英 岡山大学, 社会文化科学学域, 講師 (90848938)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 問題説明 / 会話分析 / 調停者役割 / 調停者介入 / 調停者役割認識 / 民間型ADR / 自律的紛争処理 |
研究開始時の研究の概要 |
法施行15年を迎える現在、依然としてADRの利用低迷が持続する要因として、調停者役割論が果たして安定的・恒常的に自律的紛争処理を導かせうるかという疑問がある。当事者が自分たちで紛争統制が困難となるとき、調停者は、どのように介入すればよいか具体的な指針が得られないのである。本研究は、民間型ADRでの交渉促進型調停による事件処理の録音データをもとに、会話分析の手法により調停者介入の会話的秩序を経験的に解明したうえで、調停者の役割認識とすり合わせつつ、自律的紛争処理を促進させる調停者の介入的な役割論を構築する。本研究によって調停サービスの向上とともに、ADR運航の実効化・安定化が期待される。
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研究実績の概要 |
第一に、民間調停機関において実際に実施された、二名以上の調停参加者が出席した対話型調停の会話資料を題材に、エスノメソドロジー的会話分析を用いて、問題説明の場面での会話的相互行為を分析した。具体的には、調停参加者たちが二当事者対立構造に基づく紛争の語りとは異なる型を持つ紛争の語りを行うことを明らかにし、調停参加者たちの関係性が多様に現れることを示唆した。 第二に、模擬調停の録音データを用いて、対話型調停場面における当事者と調停者の力学が交錯する一局面を調停者の役割に着目して分析した。この研究は、調停場面を単にトラブルについての当事者同士の力学の場として捉えることの限界を指摘している。この研究はすでに脱稿しており、近いうちに公表される予定である。 第三に、民間調停機関の調停実務家に対しインタビュー調査し、調停人の役割認識と実際の役割の整合性について検討した研究は昨年度に実施したが、今年度に論文として公表することに至った。 第四に、愛媛和解支援センター創立20周年記念公開講座および関連企画である民間型ADR機関の情報交換会に出席し、複数の民間型ADR機関を対象に、交渉促進型調停運用の実態、機関の認知度を高め、交渉促進型調停を有効にするための組織運営のあり方、機関が抱える課題とその打開策や展望について、多くの情報を得ることができた。これらの知見は、調停者の活動を取り巻く全体的な社会状況を踏まえつつ、調停者の役割論を展開するための重要な手がかりを提供している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コロナ禍などの影響で実際の調停データの収集が難しかったため、既存のデータを元に分析を行った。また、某調停機関の定例研究会に継続して出席することで、模擬調停のデータの収集と分析を行うことができた。これらの結果を基に、二つの局面における調停者の現実的役割について論文としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、調停者の役割認識の調査を引き続き行う。これまでは、同じ調停機関の2人の調停者に対して調査を実施してきたが、今後は比較検討のために、他の調停機関を二箇所程度対象に調査を行う予定である。 第二に、引き続き複数の調停機関と連絡を取り、調停データの収集可能性を探る。 第三に、調停者の役割認識に関するデータの分析と、調停者の介入実態に関するデータの分析を統合して検討することで、調停者の介入を包括的に理解するための理論的枠組みを構築する
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