研究課題/領域番号 |
22K13296
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
横濱 和弥 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (90878422)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 国際刑事裁判所 / 故意 / 幇助犯 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、国際刑事裁判所(ICC)が管轄する中核犯罪の「周辺的関与者」(強制収容所の医師のように、犯罪組織の体制維持に寄与しているが、組織の日常的職務を担当したに過ぎない者)の処罰の限界を探るため、ICCの共犯概念を解明する点にある。従来の判例・学説は、寄与の程度という客観面に着目し、共犯処罰を限定してきた。しかし、近時の判例上、こうした客観面での限定に疑問が呈されており、ICCの共犯規定等の文言に鑑みれば、主観的観点から(も)共犯処罰を限定する必要があるとの主張が見られる。本研究では、従来議論が手薄であった主観的要件の観点から、英米刑法との比較法的検討を交えつつ、共犯処罰の限界を探る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、国際刑事裁判所(ICC)が管轄する中核犯罪の「周辺的関与者」(強制収容所の医師のように、犯罪組織の体制維持に寄与してはいるが、組織の日常的職務を担当 したに過ぎない者)の処罰範囲を明確化するために、ICCを含む各種国際刑事法廷の解釈および外国刑法の知見を参照しながら、共犯の主観的要件を明らかにする点にある。 採択一年目たる2022年度は、犯罪の正犯の場合に妥当する、犯罪の主観的要件に関する一般規定が、幇助犯等の類型の場合にもそのまま適用されるのか、それとも何らかの修正がなされるのかを明らかにするために、(1)ICC等の国際刑事法廷の判例と、(2)特に英米法の調査を行った。 (1)については、ICCでは、主観的要件の一般規定(規程30条)があり、それによれば、犯罪の結果発生についての意図・認識(結果発生の目的的意図または結果発生が確実であることの認識)が要求される。これを前提に、共犯形態としての幇助犯(25条3項(c))に関する判例をみると、幇助犯の条文上要求される「犯罪実行を容易にする目的」に加えて、結果発生に関して共犯者が30条の要件を満たすことが必要とされる(二重の主観的要件)。他方で、別の共犯形態たる「犯罪集団への寄与」(25条3項(d))に係る判例では、当該共犯形態に固有に要求される主観的要件に加えて、30条の基準が充足されることは、明示的には求められていない。以上の意味で、判例上、共犯形態ごとに、二重の主観的要件が求められるのか否かについて、統一的に解されておらず、その論拠も示されていないことが明らかになった。 (2)について、特にアメリカ模範刑法典では、幇助犯において要求される主観的要件が、ICC規程の幇助犯(25条3項(c))と同様であり、ICCに対する影響が指摘されている。この点については、現在も調査を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ICC判例における、主観的要件の一般規定と共犯規定の関係性については、基礎調査を終え、2つの研究報告においてその成果を示すことができた。 その後は、当初の研究計画通り、英米刑法における共犯の主観的要件についての調査を行っている。英国刑法については、順調に調査は進んでいる一方、米国各州の共犯に関する制定法が、想定よりも多様・複雑であったため、そのまとめに当初想定よりも時間を要している。以上のことから、進捗状況としては「やや遅れている」との評価が適当と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
採択二年目(2023年度)においても、引き続き英米刑法における共犯の主観的要件の調査を継続する。当該調査が終了次第、次の調査事項としての、ICCにおける意図・目的概念の検討に移る予定である。 当初計画においては、2023年内は英米刑法の調査にあて、年明けから次の調査事項に移る予定であった。もっとも、前述の通り、英米刑法の調査にやや遅れが出ていること、当該調査は本研究全体の基礎を成すものであることに鑑み、必要と判断した場合には、3ヶ月程度調査期間を伸ばすことも検討する。次段階の調査で検討対象となる、ICCを含む国際刑事法廷の意図・目的に関わる判例等は、概ね収集済みであるため、このような期間延長を行っても、遅れを取り戻すことは可能であると考える。
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