研究課題/領域番号 |
22K13303
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 高岡法科大学 |
研究代表者 |
山田 雄大 高岡法科大学, 法学部, 講師 (90877086)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 正当防衛 / 過剰防衛 / 違法性阻却 / 責任阻却 / 免責 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、正当防衛について違法性阻却の観点だけでなく、責任阻却の観点からも検討することで、理論と実務の双方が拠って立つことのできる共通の基盤を構築することを試みる。具体的には、①違法性阻却事由としての正当防衛と責任阻却事由としての正当防衛は併存できることを明確にし、その上で、②違法性阻却事由・責任阻却事由のいずれとして理解するかによって成立範囲が異なってくる、防衛行為の相当性要件について検討を行い、違法性阻却事由としての正当防衛の成立範囲と責任阻却事由としての正当防衛の成立範囲を示すとともに、③責任阻却事由としての正当防衛と誤想防衛との区別を明確にし、理論と実務の架橋を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、違法性阻却事由としての正当防衛だけでなく責任阻却事由としての正当防衛も存在することを示し、あわせて責任阻却される範囲を明らかにすることで、理論と実務が共有できる基盤を提示することにある。採用初年度である2022年度は、スイスにおいて一般的な過剰防衛は刑の減免しかもたらさないが、驚愕など責任を阻却する事情があれば不可罰となるという法規定(スイス刑法典16条)があり、我が国の過剰防衛制度と神話的な側面があることから、スイスにおける過剰防衛(特に免責の余地を認めるスイス刑法典16条2項)について、判例・学説の調査・分析を行った。その結果、(1)この規定は、責任の減少と被害者自らが違法な攻撃を招いた点に鑑みて立法者が刑を科さないとする趣旨のものであり、責任がないことまでは求められないとされていること、(2)興奮・驚愕と侵害の程度の比較衡量が判断基準となっていることが明らかになった。また、(3)スイスにおける過剰防衛の規定と、免責可能な激しい感情の動きや重大な精神的負荷のもとで殺人行為に出た場合である故殺罪(スイス刑法典113条)との関係について議論があることが明らかになった。そこで、当初の研究に加えて新たに故殺罪との関係についても検討を進めた。 以上に加えて、誤想防衛との区別の必要から、責任阻却事由としての正当防衛についても急迫不正の侵害が客観的に存在することが求められると考えるに至った。そこで、今後責任阻却事由としての正当防衛について検討を進める前提として、違法性阻却事由・責任阻却事由に共通して要求される急迫不正の侵害の内容を固める必要があると判断し、急迫不正の侵害について再精査し、その成果を日本刑法学会名古屋部会において、「正当防衛における侵害の急迫性要件について」と題して研究報告を行った。その内容については2023年度に紀要等において公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採用初年度である2022年度は、スイスの過剰防衛規定についての調査・分析・検討を行い、責任阻却事由としての正当防衛の導入し、理論と実務が共有できる基盤を提示する一定の見通しは立ったといえる。また、当初計画では、本研究の2年目である2023年度は、防衛行為の相当性要件について再検討を行い、違法性阻却事由・責任阻却事由それぞれの成立範囲をより具体的に示す予定であった。 その一方で、上記のとおり、スイスにおける過剰防衛規定と故殺罪との関係や急迫不正の侵害の内容確定といった、当初予定していなかった新たな課題も生じた。これは、研究の進展に伴って新たな問題が発見されたことを意味するものであり、これらの課題解決は本研究の内容をより豊かにするものであると判断し、2022年度には追加の作業を行ったことから、本研究の進捗状況についてはやや遅れが生じた。 他方で、当初計画で2023年度に行うこととされていた防衛行為の相当性要件の再検討については、研究成果の見通しをよりよくするため、2022年度から、我が国の判例の分析・検討を行うなど作業を一部開始している。そのため、本研究の進捗状況については遅れを取り戻すことは可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、まず、研究の遅れの原因となっていた、スイスにおける過剰防衛規定と故殺罪との関係について調査を終え、スイスの過剰防衛規定についての調査・分析・検討を完遂する。そして、その成果を紀要論文等として公表することで、違法性阻却事由としての正当防衛と責任阻却事由としての正当防衛の併存可能性の明確化を行う。 また、防衛行為の相当性要件に関する我が国の判例の調査・分析・検討を行い、責任阻却的側面があるとされてきた実務の判断の内実を明らかにする。 なお、研究費については書籍等の購入・閲覧費用や判例等のデータベースの使用料に充てる予定である。
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