研究課題/領域番号 |
22K13350
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保田 雅則 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 特任講師 (70902419)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 国家アイデンティティ / 平和愛好 / ラベリング / 国際連合 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国際社会における「平和愛好」という国家の属性に関する認識の変動に影響を与える要因とその変動のメカニズムを明らかにする研究である。平和愛好国であることは国連の加盟条件となっており、敗戦国であった日本が国連加盟に向けて平和愛好国として認められるよう外交努力を重ねたことは、よく知られている。しかし、近年、この平和愛好表現の使用頻度が大幅に減っているのである。そこで本研究では、19世紀後半における国際社会の参加条件であった文明国基準や国際社会から特定の国を排除するならず者国家というラベリングに関する既存の研究に依拠しつつ、平和愛好という表現の頻度の変化要因とそのメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の実績として、2022年10月30日に日本国際政治学会2022年度研究大会の平和研究分科会Ⅱ において、発表ペーパーを執筆し、研究報告を行った。 報告は、国連で平和愛好という表現の使用が減少しているという事実から、平和愛好の意味の変容に着目し、どのようにその意味が変容したのかを明らかにするものであった。この報告では、平和愛好という表現が、国連での国家間の交流を通じて、社会主義から非同盟を意味するものへと変化し、冷戦後には小さく弱いことを意味するものへと変化したという主張を提示した。この主張を提示するべく、本研究はでは、国連総会の文書を網羅的に調査し、確認した6,000を超える平和愛好という表現の頻度の推移を提示した。さらに、平和愛好という表現と共に使用される表現を分析することで、その意味の変容を示した。特に重要な点として、この報告では、平和愛好の意味の変容を量的に分析に、グラフを提示して可視化したことにある。 この報告に対し、討論者の一人は、「平和愛好」概念の意味の変化を国際関係の実際の変化と関連づけることで、報告の重要性の理解が容易になることを指摘した。また別の討論者は、平和愛好は集合的アイデンティティとは言えないし、法学的に希薄な概念だが、反侵略などの否定命題ではなく、規範的に内容を規定して有益な概念にできるかといった指摘を行った。 このような討論者の指摘に対して、特定の加盟国を平和愛好国でないとして国連から除外する動きが見られることが、国際関係への影響といえること、また、「我が国は平和愛好国である」または「他の平和愛好国とともに」といった加盟国代表の発言から、平和愛好が集団的アイデンティティを構成するものであることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、当初の計画の通り、初年度において学会報告を実施した。その報告に対する意見を踏まえ、論文として内容を再構築した。本研究計画ではデータ収集に時間を要したが、国連のインターネットサイトを通じたデータ収集が中心であるため、研究計画の進行に支障はなかった。収集したデータの分析、および論文の執筆作業については予定通り進行している。研究報告を実施したのが日本国際政治学会であったため、執筆した論文は、日本国際政治学会の『国際政治』に投稿した。現在は査読対応のため、論文の内容を加筆修正中である。査読対応のために新たなデータを収集する必要はあり得るが、既に十分な量のデータが揃っているため、データの補完作業に時間はかからないと予想される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は論文の掲載にあるため、現在の加筆修正作業を終えたのち、論文を再投稿する予定である。加筆修正の作業として、先行研究の見直しや、用語の再定義、不足していデータの収集作業および、新たなデータにこれまで収取したデータを合わせて全てのデータの再検証を行う。この加筆修正で論文の掲載が決定されれば、本研究の計画は終了となる。もし、今回の投稿で論文が採択されない場合は、不採択となった結果を検証してさらに加筆修正を施し、別の雑誌に投稿し、掲載決定を目指す。
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