研究課題/領域番号 |
22K13362
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 九州大学 (2023) 東京工業大学 (2022) |
研究代表者 |
阿部 貴晃 九州大学, 経済学研究院, 講師 (60848406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | ゲーム理論 / 提携構造 / グループ / 協力 / 対立 / 安定性 / 分配 / 提携形成 |
研究開始時の研究の概要 |
「グループの中では協力的だが、グループ間では対立している」という構図は、その規模の大小や時代を問わず、社会の中で広く観察される。例えば、国家間の同盟同士の対立、政党と政党の対立、学校・職場での派閥争いなどがあてはまる。このような協力と対立が混在する状況では、「共通の敵がいるから団結する」といったような、協力と対立の相互作用がパワーバランスに影響を与える。従来のゲーム理論では、協力行動の分析と戦略的行動の分析に分化していたため、協力と対立の混在状況に対する分析が困難であった。本研究では新しい理論モデルの提案も含め、この困難の打破を目的とする。
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研究実績の概要 |
社会の中では大小さまざまな「グループ」が、相互に影響を与え合いながら活動している。企業や国家、政党、住民コミュニティなどがその例である。「グループ」を形成することで、資源や情報の交換をスムーズにしたり、生産性を向上させたり、規模や数の力で影響力を強めたりすることができる。本研究では、各種の社会現象の背後で原因となっている一般的構造を、グループというキーワードに注目してモデル化し、理論的に分析することを狙う。 複数の意思決定主体がそれぞれでグループを形成している状況は、一つの「構造」として理解できる。資源や費用の分配はこの構造の形に大きく影響を受ける。例えば、人々が国というグループによって分かれているとする。大きな需要のある資源(食料、資金、ワクチンなど)が、第一段階として国家間で交換・再分配され、そして、第二段階として各国家の中で人々に分配されるという分配の構図を考えてみる。このとき、国家ごとの人口や生産性によって受け取る配分量は自然と異なってくる。本研究課題では、このような構造と分配の関係性を数理的に明らかにする研究を行った。 当該年度の主要な成果は、「提携構造付きゲーム」における分配方法の特徴づけである。貢献度に応じて分配を決定する分配方法であるShapley値と、貢献度等は勘案せずに均等に分配を行う均等分配を折衷するような分配方法は、提携構造付きゲームの分野において特徴づけが達成されていなかった。本研究はこの問題に取り組み、提携構造付きゲームにおける折衷的分配方法の提案と公理的特徴づけを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、理論研究の成果を、ゲーム理論のトップ国際誌に公刊することができた。研究内容は、グループ構造によってプレイヤーが分割されている場合の資源分配に関する理論研究である。グループ構造によってプレイヤーが分割されている状況は、「提携構造付きゲーム」という分野で主に扱われてきた。当該分野においてネックとなっていたのは、貢献度に応じて分配を決定するShapley値と貢献度等は勘案せずに均等に分配を行う均等分配を折衷するような分配方法はどのように特徴づけられるかという問題であった。このような折衷による分配方法自体は、多くの先行研究が存在するが、提携構造付きゲームにおいては、分配ルールの数式的な確立も特徴づけもどちらも達成されていなかった。本研究はこの問題に取り組み、提携構造付きゲームにおける上述の折衷的分配方法の提案と公理的特徴づけを行った。この成果は、査読付き国際誌Games and Economic Behaviorにて公刊された。また、この成果を踏まえて、更なる理論的進展を狙うため、国内外の研究者と共同で更なる分析を現在もなお行っている。
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今後の研究の推進方策 |
プレイヤー達が関わる構造には、様々な種類がある。当該年度には特に「分割」と呼ばれる構造に注目して研究成果を残すことができた。しかし、例えば、ネットワーク構造やツリー構造のような、より多様な構造も考慮すべきである。これらの構造は、複数の国にまたがる河における汚染浄化の費用分担や、複数の県にわたって通される鉄道や幹線の利益・費用分担の問題に直結する点で重要度が高いと考えられる。次年度には、このようなグループ間により複雑な関係が敷かれている状況をモデル化し、分析を行うことを狙う。
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