研究課題/領域番号 |
22K13390
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大越 裕史 岡山大学, 社会文化科学学域, 講師 (90880295)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 租税競争 / 多国籍企業 / 経済統合 / 外国資本規制 / 租税回避 / デジタル化 |
研究開始時の研究の概要 |
各国政府による外国企業の誘致競争が激化しており、有害な租税競争として知られている。しかし、(A)海外直接投資規制の撤廃、(B)多国籍企業による国家間の金銭輸送が容易な金融制度の拡充、さらに(C)デジタル化によるボーダーレス社会の実現など、新しい形態の経済統合も注目されており、租税競争への影響は未知である。 以上を踏まえて、本研究では有害な租税競争を防止するための理論的な示唆を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
研究初年度は、多国籍企業を誘致するための租税競争に関する3つの研究計画のうち(A)外国資本規制の緩和と、(C)デジタル化の発展が租税競争に与える影響の分析を行い、複数の学会・セミナー報告を行ってきた。
研究(A)では、2つのメカニズムによって外国資本規制が租税競争の結果に大きく関与することが明らかになった。中でも興味深い結果としては、外国資本規制の緩和は一見すると外国資本の誘致に寄与すると思えるが、現地企業が合弁企業設立に反対することによって外国企業の参入が妨げられるということだ。外国資本規制のある下では、外国企業は現地企業との合弁企業設立が必要になる。しかし、出資企業の企業利潤は出資比率によって配分されるため、外国資本規制が非常に緩いような状況では現地企業の配分額が低くなり、合弁企業設立の締結が困難になるためである。この結果は、外国資本規制を緩和させることで外国企業を誘致しにくくなる可能性を暗示しており、企業誘致においては外国資本規制を議論する必要性が窺える。
研究(C)では、ある財を利用する人の数が他の消費者の満足度に影響を与えるような“ネットワーク効果”が各国政府の外国企業を誘致するインセンティブに大きく関与することが判明した。携帯電話などのネットワーク財においては、市場の大きい国で生産・供給することで多くの人がその財を利用できることにつながり、その効果は企業誘致ができなかった国の消費者の購買意欲を誘発する。そのため、ネットワーク効果が強い状況下においては、市場規模が小さい国は外国企業を誘致するインセンティブが小さくなるという結果を得られた。この結果はデジタル化の発展に伴い、租税競争は緩和されていく可能性をほのめかしており、企業誘致に関する政策設計においてはデジタル化の特性を考慮する重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では4年間で3つの研究を行うことを計画していた。研究計画(A)については初年度と2年目に行うことを想定しており、計画通りの進捗状況である。一方研究(C)については計画段階ではモデル化に時間が必要であると考えており、3年目および4年目に時間をかけて進める方針であったものの、すでに基本的な理論枠組みの構築に成功しており、来年度を通じてさらなる発展が期待できる。どちらの研究についても、すでに複数のセミナー報告をしている段階であり、2年目の終わりまでにディスカッションペーパーとして刊行することを目指す。 これらの進捗があった反面、初年度に研究(C)に予想以上に時間を費やしてしまったため、当初の予定では2年目から3年目に実施するはずの研究(B)の準備を進めることができなかった。 以上を踏まえると、総合的に判断すると、当初の研究計画をおおむね順調に進展させているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間2年目は、研究(A)と(C)を国際学会等で報告し、さらに精緻な分析を行ったうえでディスカッションペーパーとして刊行することを目標とする。ディスカッションペーパー刊行後は海外の査読付き学術誌への投稿をはじめる。研究(B)については当初の計画の通り、2年目の期間を通じて基本的なモデルの構築と分析を開始し3年目にセミナー報告が行える準備を行う。
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