研究課題/領域番号 |
22K13405
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
|
研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
稲葉 千尋 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30806063)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 国際貿易 / 複数スキル / 失業 / 賃金格差 / 貿易パターン / 貿易自由化 / 職業選択 |
研究開始時の研究の概要 |
「個人が保有するスキル」と「企業が労働者に求めるスキル」が複数存在するとき,生産活動の中で両者のスキル組み合わせに差(スキル・ミスマッチ)が生じる。本研究では,スキル・ミスマッチと労働市場の摩擦が発生する下で,貿易自由化が貿易パターン,労働者の雇用および賃金にどのような影響を及ぼすかについて理論的に分析を行う。さらに,各国政府が発表する労働データを活用し,理論分析で得られた結果を数値計算およびカリブレーションなどの数量分析に応用できるか検証を行う。これらの結果から,スキル・ミスマッチによる労働市場や貿易政策への影響を考察する。
|
研究実績の概要 |
2022年度は,(1)前年度に作成した基本モデルの精査,(2)国際貿易への拡張可能性,および(3)日本版O-NETの利用可能性についての検討を行った。 (1)の基本モデルの精査であるが,2021年度に作成した複数スキル下に失業を導入する基本モデルから失業や賃金への影響を確認することができた。企業が求めるスキルの組み合わせを持つ労働者は失業の確率が大きく減少するが,そうでない労働者の失業率は上昇し,賃金も減少する傾向がある。しかし,複数のスキルを持つ労働者と複数のスキルのある組み合わせを必要とする企業とのマッチング問題をどう構築していくかが,大きく結果に影響を及ぼすことがわかった。どの失業モデルを採用するかは,現実の労働市場および労働市場に関する実証研究などを参考にして,論文の中で十分に検討する必要性がある。 (2)の国際貿易は,失業を導入しても能力分布の違いによる国際貿易への結果に大きな影響を及ぼさないことがわかった。とある能力の分布が偏った方を重視する産業に比較優位を持ち,その産業の生産量が増加して海外に輸出するようになる。しかし,労働市場の性質の違いや賃金については産業およびタスクレベルで慎重に検討する必要がある。また,貿易コストの低下による段階的な貿易自由化による影響も検討していくべきである。 (3)の日本版O-NETは,本研究の複数の「能力」を適切に反映されているものの,O-NETが「職種」に焦点当てていることに対して,本研究は「職種」よりも「タスク」に焦点を当てているため,「職種」と「タスク」の接続がうまく行われているかを確認してデータ整理していく必要があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度には理論モデルの完成とデータの収集を課題としていたが,(1)労働者と企業のマッチング問題と(2)労働市場の国際間差異の影響について慎重に取り扱う項目が出てきたため,理論モデルの完成に遅れが出ている。 (1)については,複数のスキルを持つ労働者についての情報を企業側がどこまで把握しているかが失業や賃金格差に影響を及ぼすことまでわかっているが,実際にどのような設定が現実的なものであるかは議論が分かれるケースが多くある。よって,モデル設定のための労働市場に関するサーベイを論文の中でしっかりと議論していく必要がある。 (2)は,能力分布の国際間の差異における国際貿易の効果まではまとめられているが,労働市場の性質の違いや賃金に複雑な効果が見られているので,産業レベルもしくはタスクレベルへの効果をさらに解析的かつ数値的に分析する必要が出てきている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究については,(1)理論モデルの完成と(2)実証分析のためのデータ整理が課題である。 (1)の理論モデルは,労働者と企業のマッチング問題と国際貿易の経済的な効果の問題を解決することでモデルを完成させ,論文を執筆して国内および国際学会で報告していく予定である。 (2)の実証分析パートでは,日本版O-NETの職種とタスクの整理と,日本の賃金や雇用量のデータの整合性が適切に取れているかを検討し,実証分析に必要なデータを整理していく予定である。
|