研究課題/領域番号 |
22K13440
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
井上 達樹 明治大学, 商学部, 専任講師 (10876626)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 経済史 / 計量経済史 / 近代日本 / 乳児死亡率 / 工業化 / 石炭消費 / 煤煙 / 大気汚染 / 死亡率 / 健康 |
研究開始時の研究の概要 |
産業革命による工業化は,急速な経済成長と同時に水質汚染によって健康被害をもたらしたが,大気汚染による影響は明らかでない。本研究では,急速な工業化が進んでいた1900年代初めの日本を対象として,記述史料に基づいた史料分析と統計史料から構築するデータベースを用いた計量分析の双方のアプローチにより,石炭使用量の増加が大気汚染を通じて乳児死亡率を増加させたという仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
プロジェクトの第二年度にあたる本年度は、前年度に構築したデータ・ベースを用いた統計解析を実施し、得られた推定結果を論文にまとめる作業を進めた。作業工程としては、第一に、前年度の記述史料を用いた史料分析により把握した史実を基に、本研究課題の核となる仮説を検証する推定モデルを定式化した。具体的には、乳児死亡率を被説明変数とし、石炭消費量を主要な説明変数とする固定効果モデルを設定した。第二に、定式化した推定モデルに基づき統計解析を行った。その結果、石炭消費量の増加が乳児死亡率の増加に繋がっていたことが明らかとなった。これは定性的な歴史史料分析により得られた仮説と整合的な結果であった。こうした健康への悪影響を示す効果はPooled OLSによる推定では得られず、パネル・データの特性を活かした固定効果モデルを用いた推定の妥当性が支持された。また、推定結果は工業水準や工場労働者数に牽引されるものではないことを確認した。第三に、戦前期における石炭消費量の増加が乳児死亡率を減少させる効果の詳細を解明するため、ラグを用いた分析や死産率に対する影響を検証する分析を実施した。さらに、乳児死亡率をより細かい期間に分けた変数を利用することで、戦前期の大気汚染は出生直後の死亡率にはあまり影響がなく、その後徐々に影響が大きくなることが明らかとなった。また、得られた推定結果の頑健性を検証するため、複数の統計学的テストを実施した。その検定結果は、いずれも統計解析結果の頑健性を支持するものであった。最後に、これら一連の分析結果を論文としてまとめる作業を進めた。作成中の論文は、査読付き国際学術誌に投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、記述史料に基づいた推定モデルの構築とそれを用いた分析を実施することができた。それらを論文としてまとめる作業も進行している。以上から、本年度の研究の進捗状況は、計画にしたがい順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は順調に進展したため、次年度も記述史料分析や計量分析の精査を中心に活動を進める。これにより、工業化による石炭の大量消費がもたらした大気汚染が乳児死亡率に与えた影響をより正確に把握していく。また、新しい記述史料の収集・調査や分析結果の妥当性を歴史史料からも検証する作業も引き続き進めていく。得られた研究成果は、国内外の学会・研究集会で報告し質の向上に努め、次年度中に査読付き国際学術誌に投稿する予定である。
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