研究課題/領域番号 |
22K13445
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 大阪大学 (2023) 摂南大学 (2022) |
研究代表者 |
佐藤 秀昭 大阪大学, 大学院経済学研究科, 講師 (40909488)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 住友 / 財閥史 / 経営史 / ファミリービジネス史 / ビジネスグループ論 / 担保史 / 近代大阪経済史 / 事業多角化 / 非製造業 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、住友が「三大財閥」の一角へと成長するきっかけとなった非製造業部門(金融業・倉庫業・不動産業)への事業多角化が、いかなる過程を経て成功したのかを明らかにする。これまで、明治・大正期における住友の非製造業部門への事業多角化過程の実態は必ずしも明らかにされていない。本研究は、住友史料館所蔵の一次史料に基づき、住友本店が貸金業務で扱った「担保」が住友の経営に与えた影響に注目する「担保史的アプローチ」によって、住友がいかにして非製造業部門への事業多角化を成功させたのかを明らかにする。本研究は日本財閥史研究のみならず、新興国などを対象としたビジネスグループ研究に対する貢献が見込まれる。
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研究実績の概要 |
本年度は、日本の財閥史研究・同族企業経営に対して新たな実証研究の成果を付け加えるとともに、それら領域における先行研究の分厚い蓄積を、国際的なファミリービジネス研究・ビジネスグループ研究と接続することを意図した活動を行った。まず、日本の三大財閥の一角である住友について、明治・大正期におけるその事業多角化過程が、国際的なビジネスグループ論の中でどのように位置付けられるのかを検討した。その結果として、従来のビジネスグループ論では発展途上国における産業横断的な事業多角化は政府による後押し(big push theory)が想定されていたところ、住友はそのtheoryに反する事例として位置付けられることが判明した。これは財閥の発展経路の多様性を国際的なビジネスグループ研究者に対して示すものであり、2024年度には英語論文として掲載される見込みである。また、いくつかの史料の発掘を通じて、住友という個別企業の枠を超えた実証研究に繋げることができた。例えば、近代大阪において住友銀行に並ぶ規模を誇った三和銀行の設立過程について、三十四銀行・山口銀行・鴻池銀行の各経営者・オーナーファミリーの交渉の様子を一部明らかにすることができた(論文投稿済み、査読中)。また、住友が大阪において特に多額の資金を保有するようになった1930年代初頭に関して、大阪の商工業者がどのような資産規模・地理的分布に分かれていたのかを明らかにするために、住友を含めた商工業者の階層別分析を行った(論文投稿済み、査読中)。さらに、日本におけるファミリービジネスが近世末から現在にかけてどのような盛衰を辿ったかについて、他国の研究者向けの概説を執筆した。この概説は書籍の1つの章として、routledge社から出版される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度における本研究は、論文投稿・書籍の共同執筆・学会報告の面で、概ね当初計画に即した成果を達成することができた。まず、論文投稿については、計画通り3つの学術誌へ投稿を行うことができた。社会経済史学、経営史学、business history誌の3誌に対する投稿である。このうちbusiness history誌では“conditionally accepting”という査読結果を得ており、再投稿によって掲載が決定する見込みである(残り2誌は拙稿をご査読いただいている状態)。さらに、書籍の共同執筆を通じて、国際共同研究を進めることができた。routledge社より出版予定のRoutledge Book Global Family Capitalism A Business History Perspectiveは20弱の国々についてそれぞれの国の専門家が1章ずつを担当する共著本である(編著者はバルセロナ大学・Paloma Fernandez Perez教授)。そのうち日本の章を執筆し、筆頭執筆者として原稿を提出した(co-authorは京都大学・黒澤隆文教授)。同書は2024年度の出版を見込んでいる。これらの成果は、いずれも日本の財閥史研究・同族企業経営に対して新たな実証研究を付け加えるとともに、それら領域における先行研究の分厚い蓄積を国際的なファミリービジネス研究・ビジネスグループ研究と接続することを意図したものであり、概ね当初計画を達成できたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(2024年度)は、まず本年度に投稿した論文の再投稿を通じて、各学術誌における論文掲載を目指す。また、研究実施計画に示した通り、本研究の成果・結論が援用できる範囲を特定し、さらなる論文投稿を行う。これらの追加的な論文執筆は、住友という一企業に関する事例分析を軸にしつつ、その事例をより広い視野の中で位置付けるために、当該事例に関係の深い他企業・地域を分析対象とする。例えば、住友と並ぶ大阪の富豪である鴻池について、一次史料の整理・公開を行いながらそれら史料の分析を進める。また、住友銀行と並ぶ大阪の銀行である三和銀行について、一次史料の整理を行いながらその分析を行う。また、住友倉庫が深く寄与した大阪の保税倉庫業について、新たな一次史料の収集を行いながらその分析を行う。さらに、住友銀行が普通銀行として日本最大の預金量を誇るようになった1930年前後における経済構造を分析するために、大阪府・東京府の商工業者の階層別分布を明らかにする。これらの分析はいずれも、本研究の特色である担保史的アプローチに沿って実施されるものである。すなわち、それぞれの事例は、担保がどのような役割を果たしたのかという視角から分析が行われる。これらの分析によって、担保がその経営に大きな影響を与えたという住友に関する本研究の結論が、どの程度の範囲にまで援用可能なのかを明らかにする。
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