研究課題/領域番号 |
22K13451
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
張 文テイ 新潟大学, 人文社会科学系, 講師 (10797103)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 燕三条地域 / ネットワーク分析 / 企業間取引関係 / 企業間取引ネットワーク / ネットワーク構造の比較分析 / 中小企業 / ネットワーク / ダイバーシティマネジメント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、地域の中小企業ネットワークを対象として、近年経営学において注目されているフォルトライン理論を用いた組織設計の観点から地域全体のパフォーマンスを向上させるモデルを構築することにある。 まず、文献レビューや事例研究等を通して、「中小企業ネットワーク全体にとってベストとなるダイバーシティのフォルトライン」の構成概念を洗い出し、次にこれまでに主に大企業を中心に一般化された組織とパフォーマンスの因果的なメカニズムを明らかにしたあと、海外のローカル中小企業ネットワークの事例との比較を通して、ネットワーク全体のフォルトラインを弱めながら地域経済のパフォーマンスを向上する仕組みを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域の中小企業ネットワークにおけるフォルトライン理論を用いて、地域全体のパフォーマンスを向上させるモデルを構築することである。これに向けて、文献レビューや事例研究を通じて「ベストとなるダイバーシティのフォルトライン」の構成概念を洗い出し、地域の中小企業ネットワークのフォルトラインを弱めつつ、地域経済のパフォーマンスを向上させる仕組みを明らかにすることを目指した。 具体的には、新潟県の燕市と三条市におけるプラスチック製品製造業の企業間取引ネットワークを分析した。これらの地域は、それぞれ異なる発展経緯を持ち、燕市は洋食器のプレス金型、三条市は利器工匠具の鍛造金型から成長してきた。この違いが取引ネットワークに与える影響を定量的に検証した。 分析の結果、燕市と三条市の取引ネットワークは、スケールフリーネットワークの特徴を持つことが確認された。また、燕市と三条市の企業ともに,仕入と販売の県内と県外の相対的な比率はほぼ同じく7割前後であり、仕入先を見ると燕市の企業は三条市の企業に比べて、卸売業から仕入れる割合が18%ほど高いが、販売先を見ると、製造業への割合が13%ほど高いことが明らかになった。 さらに、ネットワーク構造の分析では、平均次数は類似しているものの、クラスター係数は三条市が燕市の2倍であり、より密な取引ネットワークを形成していることが明らかとなった。これにより、燕市の方が密接な関係性を持つとした先行研究とは異なる結果が検証できた。 これらの結果は、燕三条地域の現状を把握するための基礎データを提供し、地域産業政策の策定や企業間連携の強化に寄与することが期待される。今後は、他地域や業種との比較研究を通じて、ネットワーク全体のフォルトラインを弱めながら地域経済のパフォーマンスを向上させる仕組みをさらに明らかにしていくことが課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度では、新型コロナウイルス感染症の影響により、県外および海外でのフィールドワークの遂行が困難になったことから、研究のスケジュールに予期せぬ遅れが発生した。この状況下で、オンラインリサーチやデータ収集手法の変更など、柔軟かつ創造的な方法を模索しなければならなくなった。しかしながら、物理的なフィールドでの直接的な観察や対面インタビューなど、いくつかの重要な研究アプローチが制約を受ける中、計画通りの進行が難しくなった。 昨年度に関しては、妊娠・出産・育児といったライフイベントが日常生活に大きな変化をもたらした。これにより、研究における時間とエネルギーの配分が再構築される必要があり、理論的な枠組みの精緻化や実証的な分析の作業において、遅れが生じることとなった。新たな家族のメンバーが加わるという変化は、研究者にとって非常に喜ばしいものでありながらも、同時に研究の進捗に影響を及ぼす要因となった。しかしながら、柔軟なスケジュール調整や効率的な作業プロセスの確立に努めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、日本の中小企業におけるダイバーシティ・マネジメントの実態とその地域経済への影響を明らかにすることを目的としている。文献レビューと探索的事例研究を通じて、中小企業特有のダイバーシティの構成概念を特定し、地域間比較調査を行い、地域全体のパフォーマンスとダイバーシティ・マネジメントの因果関係を解明することが課題となる。 まず、文献レビューでは、従来の研究が大規模企業に焦点を当て、多様性の役割や機能について議論してきたことを踏まえつつ、中小企業の特性や課題に合わせてアプローチを変えている。具体的には、異文化経営論や組織行動論を取り入れ、日本の中小企業におけるダイバーシティの実践的な側面を探求している。その中で、表層的と深層的な多様性を加えたデモグラフィー的な属性の多様性に焦点を当て、組織的な補強に関わる解決策を模索している。 次に、実証的研究では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、新潟県内の企業の取材や調査を通じて、地域のダイバーシティ・マネジメントの実態を把握しようとしている。特に、燕三条地域のプラスチック製品製造業の企業間取引ネットワークの現状を把握するために基礎データを定量的に分析し、地域産業政策の策定や企業間連携の強化に寄与することに注目し、これらの変化が地域経済や企業ネットワークに与える影響を探求している。 今後は、新潟県の中小企業群を対象に県外または海外と地域間比較調査を行い、他地域との比較を通じてダイバーシティ・マネジメントの実践や地域経済のパフォーマンスについて理論的なフレームを構築する。中小企業におけるダイバーシティの重要性やマネジメント方法についての理解を深め、地域経済の発展に向けた具体的な方策を提案する。
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