研究課題/領域番号 |
22K13461
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高田 直樹 中央大学, 商学部, 助教 (60846947)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 技術進歩 / イノベーション / リサーチ・テクノロジー / 発明 / 科学装置 / 質量分析計 / 科学的知識 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,リサーチ・テクノロジーの進歩の様相を明らかにすることにある。リサーチ・テクノロジーとは,研究や技術開発の道具として使用される技術であり,装置の形態を取るのが一般的である。この用途からして,リサーチ・テクノロジーは科学研究やイノベーション活動の実践に大きな影響を及ぼしうる。本研究は質量分析計というリサーチ・テクノロジーを主要な調査対象として,その進歩の軌道に影響を及ぼす要因を探索的に検討する。特許や論文のデータ,科学者や装置メーカーによって記された歴史資料,および関連主体への聞き取り調査をもとにして,装置実践に関わる主体の相互作用が装置進歩に及ぼす影響を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,リサーチ・テクノロジーの長期的なイノベーション・プロセスの様相を明らかにし,それに影響する要因を解明することにある。リサーチ・テクノロジーの事例に質量分析計を採用していることから,本研究は質量分析計の発展史を技術や産業の側面から素描した上で,発展に影響した要因を定性・定量の両面から特定することに注力する。 本年度は,質量分析計に関連する新技術の発明や普及の動向を定量的に捉えるためのデータセット構築を目標として,それに援用できるような歴史資料の探索を行った。当初は特許や論文データに基づいてデータセットを構築する予定だったものの,検索性や網羅性に限界があり,これを補完できる資料が必要となったためである。結果的に,ASMS ProceedingsとMass Spectrometry Bulletinに基づくデータセットの作成を開始した。ASMS Proceedingsはアメリカ質量分析学会の年次大会における報告要旨集であり,特許や論文として成立したものよりも幅広い成果を分析の対象とすることができる。Mass Spectrometry Bulletinは英国の質量分析データセンターによって編纂されていた索引集であり,約半世紀に渡る期間の質量分析関連業績を網羅的にカバーしている。これらの情報に基づくことによって,いつ,誰が,どのような成果を産出したのかを知ることができる。 ただし,上記の資料のうち古い年度のものは書籍媒体でしか存在しておらず,デジタルデータに変換したうえでデータセットを作成する必要がある。資料の全てについてデータの入力を行うことは現実的でないため,特に大きな進歩が見られた前後の時期に研究範囲を限定することを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析計の発展に関する概略史を記述するための資料収集・整理は概ね完了した。ただし,質量分析計は現在も発展を続けている装置であるため,近年の発展動向については継続して情報を収集する必要がある。加えて,石油化学産業への展開や生命科学領域への応用など,質量分析計が飛躍的な発展を遂げた幾つかの時期については詳細な記述を行うことが望ましいと判断し,追加的な資料収集を実施する予定である。 また,定量的な分析を目的としたデータセットの構築も順調に進展している。前年度時点では,特許や論文に関する市販データベースの検索では質量分析計に関する成果を網羅的に特定できないことが課題として残されていた。これに対して今年度は,学会報告要旨集(ASMS Proceedings)や専門家による会報(Mass Spectrometry Bulletin)を補完的なデータとして採用することを構想し,試行的にデータセットの作成作業を開始できた。この意味において,研究は概ね順調に進展していると判断した。ただし,新たに採用することを決定した上記データから,実際に分析に使用するデータセットを作成する方法や手続きについては引き続きの検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,(1)分析用データセットの作成,(2)質量分析計の発展史の記述,(3)リサーチ・テクノロジーの発展プロセスのモデル化,という3点に重点的に取り組む必要がある。 第一に,分析用データセットの作成を進め,定性的には考察することが難しいトピックについて分析を進めたい。関連主体の種類(例えば企業と大学)によって開発成果の量や質がどのように違うのか,関連主体による貢献は発展段階においてどのように変化するのか,といったトピックが考えられる。 第二に,質量分析計の発展史を記述し,発展のプロセスや影響要因に関する仮説を明示的に示す作業が必要である。これについては資料の収集・整理が概ね完了しており,既に記述を進めている段階にある。現時点では,物理学での勃興,石油化学領域での商業化,多様な領域への応用,という大きく3つの時代区分に分けて記述する予定である。 第三に,上記2つの作業を通じて,リサーチ・テクノロジーの発展プロセスに関するモデルを提示したい。特に,リサーチ・テクノロジーは科学と産業の両領域に属するという特殊性を有することから,発展に応じた装置開発のインセンティブの変化や,それに伴う開発体制の変化といった点に注目してモデル化を進める予定である。また,質量分析計を事例とした分析から得られる示唆に基づいて,他のリサーチ・テクノロジーについて考察することも必要となる。
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