研究課題/領域番号 |
22K13474
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀綱 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (90779539)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 経営学 / 組織行動論 / 社会的勢力感 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,組織成員の「社会的勢力感(sense of social power)」を規定する要因を明らかにすることである。近年,主に社会心理学の領域を中心に,勢力感の上昇が個人の思考や行動に様々な影響を及ぼすことが明らかにされてきた。こうした知見は組織現象を理解するうえで有益な示唆を持つ一方,組織におけるどのような要因が成員個人の勢力感を左右しているかについては明らかにされてこなかった。そこで本研究では,主に質問票調査を通じて,成員個人の勢力感を規定する組織的要因について探索・検証を行う。
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研究実績の概要 |
社会心理学および組織行動論の領域において,社会的勢力感の変動が個人の認知・感情・行動に様々な変容を及ぼすことが明らかにされている。とりわけ勢力感の上昇は,対人関係における自己本位性や,判断・意思決定における短絡性を促進し,組織のマネジャーにとって望ましくない影響を及ぼしうる。しかしながら,いかなる組織的要因がマネジャー個人の勢力感を左右するかについては未だ明らかになっていない。そこで本研究では,組織成員の勢力感を規定する要因の探索を行う。 2023年度は,昨年度実施した予備調査や文献レビューの成果を踏まえて,Web上での質問票調査を実施した。この調査では,個人的要因と組織的要因という二つの観点から,勢力感に影響すると思われる要因を探索している。 まず個人的要因については,自尊感情や権力欲求が高い者ほど勢力感も高い傾向がみられた。とりわけ,自尊感情と勢力感の間には強い正の相関が確認されている。ただし,両者は(一方的な因果関係というよりは)互いに影響を及ぼし合う双方向の因果関係にあると言えるだろう。他方で,性別や年齢などといった要因と勢力感との間には有意な傾向が見いだせなかった。勢力感は,デモグラフィック属性よりもパーソナリティ特性とより強い関係にあることが示唆される。 続いて組織的要因については,予備調査の結果とも概ね一致して,上司や部下の人数,決済可能額,部下とのコミュニケーション機会の多さ,他の権力者との親密さなどといった要因が勢力感と相関を示した。他方で,職階については有意な傾向が確認されず,組織階層の高低は勢力感を左右する重要な要因ではないことが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の質問票調査を通じて,勢力感と関係する諸要因の探索作業は順調に進行している。これらの結果を踏まえて,現在はさらに,要因間の相互関係を考慮した因果モデルの構築に着手している。こうしたモデルの構築および検証により,勢力感の変動と影響のメカニズムを明らかにすることが可能になると考えられる。現時点では,権力の大きさ(どれだけ多数の人々の多様な行動に確実に影響を及ぼせるか)と同等以上に,権力の一方性(どれだけ一方的に権力を行使できるか)が勢力感の水準を左右すると想定し,更なる質問票調査の計画を策定している。 当初の想定を超えた問いおよび仮説を構築し,その検証に着手できていることから,本研究課題は順調に推移しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2024年度は,これまでに実施した調査と理論的な検討を踏まえて,新たに質問票調査を1~2回程度実施する予定である。それらは,探索的な調査というよりも,勢力感の変動と影響のメカニズムを同定するための検証的な調査となる。また,こうした調査で得られた知見を確証するために,他の手法による概念的追試を行う予定である。具体的には,質問紙実験などによって勢力感の変動をもたらす状況を再現し,その影響を検討する予定である。 なお,研究代表者は2024年度秋より半年間の在外研究を行う。渡航先の研究機関には本研究課題と関連する領域を専門とする研究者も在籍しており,有益な意見交換を行うことが期待できる。勢力感をめぐる現象は文化的な影響も大きく作用していると思われ,国際比較研究などへの展開も今後の課題となる。海外の研究者との研究交流を通じて,新たな研究課題の構想を立てることを目指す。
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