研究課題/領域番号 |
22K13545
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 彩加 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20779590)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 第四波フェミニズム運動 / オンライン・ハラスメント / ミソジニー / バックラッシュ / フェミニズム運動 / 社会運動の敵手 / 第4波フェミニズム運動 / バッシング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、フェミニズム運動の「敵手」とは何かについて考察することである。社会運動研究では、社会運動とは「敵手」も含めた様々なアクターと相互作用を展開するものとして考えられてきた。社会や文化に内在する性差別へ異議申し立てをするフェミニズム運動もその例外ではなく、歴史的に不特定多数の第三者から攻撃や非難などを受けてきた。フェミニズム運動や活動家をバッシングする人々の行為は、社会運動研究においてどのようなものとして位置づけられるのだろうか。この問いを明らかにするために、本研究では第4波フェミニズム運動を標的としたバッシングの実証および理論研究に取り組む。
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研究実績の概要 |
令和6年度の研究では、第四波フェミニズム運動に対するバッシングのテキスト分析を実施した。第四波フェミニズム運動は、従来のフェミニズム運動よりもソーシャル・メディアをその活動において積極的に導入するという特徴がある。ソーシャル・メディアの活用は、個人単位で発信が可能であることや、匿名性を保持できるがゆえに性暴力やセクシュアル・ハラスメントの被害など、これまで公にしにくかったトピックを発信していくことができるというメリットがある。他方で、こうしたソーシャル・メディアを用いた活動が定着していくにつれて、スラックティビズムといった課題も指摘されるようになった。 オフラインでの活動の意義が見直されるなか、昨今では、ソーシャル・メディアを用いたオンラインの活動とオフラインの活動を組み合わせて実施する運動団体も少なくはない。しかし、フェミニズム運動の場合、家父長制社会においてその活動を可視化させることは、広くバッシングを受ける危険性も伴うものである。コミュニケーション技術が発展する一方で、家父長制が維持し続けられている現代社会では、フェミニズム運動は活動展開における新たな困難に直面しているともいえる。 本研究では上記の今日的状況を捉えるために、第四波フェミニズム運動を担っている各種団体のソーシャル・メディアの運用状況と、それらに対してどのようなバッシングが向けられているのかを考察することを目的とし、ソーシャル・メディアのテキスト分析を実施した。今日では多くのソーシャル・メディアが提供されているが、本研究が焦点を当てたのは動画投稿サイトである。動画投稿サイトは一定時間の動画を視聴する必要があることから、当該動画自体の拡散力は大きくはないが、定期的な動画の投稿とそれに対する視聴者からのコメント機能の実装によって、一定の指向性を持ったコミュニティが形成されやすいという特徴がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題はおおむね順調に進展していると評価している。当初の計画では、テキストによるコミュニケーションを重視したソーシャル・メディアを対象に、研究を遂行することを想定していた。しかし、ソーシャル・メディア・サービスの利用規約の改定や、当該ソーシャル・メディア自体の大幅な仕様の変更などの事態を受けて、当該ソーシャル・メディアのデータを本研究の対象とするには流動的で予測不可能な要素が多いことから、テキストベースではなく、動画とそれに付随するテキストによるコミュニケーションをメインとした別のソーシャル・メディア・サービスへとデータの抽出対象を変更するに至った。 分析対象を変更した後、当該動画投稿サービスにて第四波フェミニズム運動に敵対する立場を取る動画投稿者のチャンネルを複数抽出した。そこから、各チャンネルに登録されている動画のうち、データの収集基準に適合している動画をさらに抽出し、その動画に付随する視聴者からのコメントテキストを抽出した。なお、分析対象に合致したデータの量が多かったことから、このデータの収集作業に関してはリサーチ・アシスタントを雇用し、その作業を分担してもらった。上記の手順で抽出したデータを、分析に用いるために時系列順等にまとめて整理した。 このように当初の研究計画から分析データの変更はあったものの、データ収集および分析は順調に進んでいるため、研究進捗はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、以下の2つの課題に取り組むことを計画している。 第一に、本年度に収集したデータの分析を進め、それをもとに学会大会や研究会で研究報告をし、最終的には学術論文として投稿することである。この作業は次年度のとくに前半までに集中して取り組むこととし、次年度後半はその研究成果を踏まえながら以下の研究課題へと発展させていくことを考えている。 第二に、研究計画調書に記載した研究内容3に取り組むことである。研究内容3は文献調査を実施することを計画している。文献調査では、フェミニズム運動に対するバッシングという行為および行為主体を、これまでの社会運動研究および社会運動論のなかに位置づけていくための準備として、当該分野においてある社会運動団体・組織と敵対関係にあるアクターがどのように論じられてきたのかを明らかにすることを目的とする。文献調査で収集および分析するのは、「新しい社会運動」論および資源動員論いずれかの立場をとる社会運動研究・社会運動論である。異なる2つのアプローチ双方を対象とすることで、両者の比較分析も可能になると考えられる。文献および資料については、所属機関の図書館および所属機関の図書館が提供しているオンラインデータベースを用いて収集する。一部の学術雑誌に関しては紙媒体・オンラインともに所蔵・閲覧できない可能性があるため、その場合は所属機関の図書館をとおして他大学に所蔵されているものを取り寄せる。この作業はとくに次年度の後半に集中して取り組む予定である。
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