研究課題/領域番号 |
22K13568
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
孫 希叔 椙山女学園大学, 人間関係学部, 助教 (90881326)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 若手対人援助職、支援 / 悩み、葛藤、成長 / 支援者支援 / ネガティブな感情を伴う経験 / 成長 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、若手対人援助職が実践の中で直面する悩み・葛藤・挫折感といったネガティブな感情を伴う経験(Interpersonal Experiences with Negative Emotions:以下、IENE)に伴うダメージから回復し、新たな学びを得るための効果的な支援ツールの開発を行い、初期キャリア形成に向けた具体的な手立てを示すものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、高齢者介護施設における若手対人援助者が実践の中で直面する悩み・葛藤・挫折感といったネガティブな感情を伴う経験(Interpersonal Experiences with Negative Emotions:以下、IENE)から学び、専門職としての良好な成長を獲得できるという新たな発想に基づき、若手対人援助職が解決可能なレベルでIENEを捉え直し、専門職としての態度理解を深めていくための支援ツールを開発、その有用性の検証を行い、若手対人援助職の自律的な成長を促進させることを目的とするものである。 本研究における今年度の目標は、新人期のキャリア支援内容の検証や新たな開発をねらいに、若手対人援助職の育成支援に関するデータの収集・分析を行うことであった。そのため、WAM-NETに登録されている東海地域の高齢者介護施設のうち、無作為に抽出した800か所に1施設当たり若手(入職3年未満)職員3名への質問紙調査を行った。調査は、2021年12月から2022月3月までに行われ、回答を得た504名を分析対象とした。質問項目は、これまでの研究で得られた知見や先行研究を参考に、①業務上の悩みや不安に関する13項目、②その際の対応のための支援や自己研鑚の機会に関する16項目、③サポート内容の内面化の程度に関する30項目とし、回答結果をもとに若手職員がIENEから学び、専門職としての態度理解を深めていく関連因子の分析を行った。 分析の結果、「業務上の悩みや不安」「その際の対応のための支援や自己研鑚の機会」「上司の指導に対する認識、専門職としての成長に役立ったと認識するサポート内容」「サポート内容の内面化の程度」に関する各3因子を抽出、これらの因子得点を説明変数とし、交絡要因を調整した多変量ロジスティック回帰分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年12月から2022月3月までに実施したアンケート調査の有効回収率は49.1%と高く、探索的因子分析から有意な成長支援因子と業務上の悩み解決因子が各3項目抽出された。職場環境に関する項目による因子分析により3因子が抽出され、各因子と主要関連項目の内容から「所属部署での良好な人間関係」、「仕事への負担感」、「放任主義」と命名した。各因子の因子得点は、勤務継続の意志あり群では意欲なし群と比べて「配属部署での良好な人間関係」(0.37±0.77 vs.-0.30±1.00, P<0.001)、「悩みの原因に直結する職場からの支援」(0.18±1.21 vs.-0.14±0.60, P<0.001)が有意に高いことが示され、若手職員がIENEを捉え直すための支援ツール開発についても取り組んでいける目途がついた。
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今後の研究の推進方策 |
予定通りに、2023年度は介護施設における前年度に把握できた若手対人援助職の支援の実態と特徴を踏まえ、調査協力を得られた5か所の事業所におけるフィールド調査より実証検討を行う予定である。対象施設につき1週間程度の集中的なフィールド調査(指導者、若手、ベテラン職員各2名への聞き取り)を実施し、若手対人援助職が解決可能な具体的なレベルで問題を捉えるための支援方法や、専門職者としての自律的な態度理解につながるツールとその促進要因を詳細に分析する。またその際、IENEを契機とした専門職としての成長に関わる事例の継続的検証も視野にいれて対象の選定と分析を行う。 データ収集が完了次第、本年度と同じ手続きで、高齢者介護施設における若手対人援助職が実践の中で直面するIENEを捉え直すための問題解決能力の形成に向けた支援ツールを開発する。さらに2023年社会福祉学会第71回秋季において、高齢者介護施設において若手職員が「育つ」しくみ―量的データの因子分析結果より―、と題して研究発表を行う予定である。また、本年度に実施した介護施設におけるOJT指導者への質的研究の研究成果について(すでに一部公表済み)、未公表部分を年度内にすべて公表する予定である。 2024年度には、22,23年度の知見を踏まえて、若手対人援助職のIENEから学ぶ力を育むための支援方策を包括的に検討し、研究計画どおりに遂行する見込みである。
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