研究課題/領域番号 |
22K13570
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
桐原 尚之 同志社大学, 社会学部, 日本学術振興会特別研究員(PD) (90876103)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 障害学 / ピアサポート / セルフヘルプ / 社会運動 / 精神障害者 / 政策過程 / 社会モデル / 障害者権利条約 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで精神障害者の社会運動は、精神医学や社会福祉学を中心に個人に変化を与える集団という観点から研究されてきた。そのため、社会に変化を与える精神障害者の社会運動としての歴史は、断片的な記録があるにとどまり、体系的な研究は先送りにされてきた。また、体系的歴史研究の不在は、ピアサポート政策をはじめとする現実の社会政策にまで影響を及ぼしつつある。そこで本研究は、【1】精神障害者の社会運動の体系的な歴史研究、【2】社会政策が準拠すべき精神障害者の社会運動の価値規範の分析、【3】当該価値規範に基づくピアサポート政策の批判的考察の3点を目的とする。
|
研究実績の概要 |
本研究は、これまで不可視にされてきた精神障害者の社会運動の歴史を明らかにすることを目的とする。2023年度は、ピアサポート制度化の歴史を調査し記述した。 武田牧子は、厚生労働省において専門官を務め、ピアサポート制度化に向けた下地を作ってきた人物の一人である。武田は、精神科病院に検査技師として勤務していたときに、入院患者から「働く場所が欲しい」といわれた。病院を退職して共同作業所桑友を立ち上げ、次第にマディソンモデル――ユーザーがサービス提供するモデル――に影響を受けて就労の場としてピアサポート制度化を目指すようになっていった。 2011年、武田の依頼で宇田川健は、ウィスコンシン州の「ピアスペシャリストマニュアル」を邦訳した。その後、日本国内で実施可能なように「精神障がい者ピアサポート専門員養成のためのテキストガイド」が作成された。2013年同テキストガイドを活用した「ピアサポート専門員養成研修」が実施された。同テキストガイドは、同テキストガイド編集委員会によって3回にわたる改定作業がおこなわれた。2015年には、一般社団法人障がい者福祉支援人材育成研究会が独立行政法人福祉医療機構から助成金(平成26年度社会福祉振興助成事業「精神障がい者ピアサポート専門員養成研修事業」)を受けて、テキストガイド第三版のとりまとめ作業がおこなわれた。2015年9月3日、厚生労働省と同テキストガイド第三版の編集に携わったメンバーで「精神保健福祉に関する勉強会」が実施された。同学習会を受けて厚生労働省は、障害保健福祉推進事業(厚生労働科学研究)「障害者ピアサポートの専門性を高めるための研修に関する研究」を実施し、制度化の足掛かりとなっていった。 以上、上述のような経緯で「事業所に障害者を雇用する」という意味でのピアサポートが構築されてきたことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、聴き取り調査にかかわる研究協力者との調整に時間を要したため遅延が生じている。調査自体は、おおむね終了しているが、全体的にとりまとめや分析作業に遅延が出てしまったため、2024年度中に成果を取りまとめる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
第210回臨時国会では、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議として「多様なピアサポーターの活動の価値や専門性を分かりやすく伝える観点も踏まえつつ、障害者ピアサポート研修事業の研修カリキュラムの見直しを検討すること。」が決議された。このような政策的な流れと相まって関心の高いテーマである。 2024年度は、2023年度に実施した調査結果を用いて、精神障害者の社会運動の歴史を踏襲したピアサポートのパースペクティブを示していく予定である。
|