研究課題/領域番号 |
22K13580
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 尾道市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 沙織 (高間沙織) 尾道市立大学, 経済情報学部, 准教授 (20782030)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 医療扶助 / 病院 / 長期入院 / 短期頻回転院 / 医療機関 |
研究開始時の研究の概要 |
戦後日本の生活保護の捕捉率は、先進諸外国より低いものの、「医療ニードには積極的に対応してきた」といわれている。
実際、路上で暮らす生活困窮者の保護開始場所として医療機関が多くなっていたり、生活保護の受給が決定されにくい稼働年齢層の男性でも、医療ニードがあれば受給が決定されやすくなっている。医療扶助単給の実績も生活扶助以外の他の扶助に比べて多くなっており、医療扶助費は生活保護費のなかで最大費目となっている。
ではなぜ戦後日本では、医療ニードには積極的に対応する生活困窮者処遇が展開されることになったのか。本研究の目的は、医療ばかり頼らない支援体制の構築に向けて、上記の問いに答えを提示することである。
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研究実績の概要 |
戦後日本の生活保護の捕捉率は、先進諸外国より低いものの、「医療ニードには積極的に対応してきた」といわれている。実際、路上で暮らす生活困窮者の保護開始場所として医療機関が多くなっていたり、生活保護の受給が決定されにくい稼働年齢層の男性でも、医療ニードがあれば受給が決定されやすくなっている。医療扶助単給の実績も生活扶助以外の他の扶助に比べて多くなっており、医療扶助費は生活保護費のなかで最大費目となっている。 ではなぜ戦後日本では、医療ニードには積極的に対応する生活困窮者処遇が展開されることになったのか。本研究の目的は、医療ばかり頼らない支援体制の構築に向けて、上記の問いに答えを提示することである。 そこで本研究は、「なぜ戦後日本では医療ニードには積極的に対応する生活困窮者処遇が展開されることになったのか」という問いを解明するため、「戦後日本において医療扶助は誰にどのように給付され、誰をどう処遇してきたのか」という作業課題を、2022年度から2024年度までの間に、段階的に検討することにした。 2022年度は、作業課題のうち「医療扶助は誰にどのように給付されてきたのか」を検討した年度であった。まず、戦前から戦後にかけて、生活困窮者処遇において政策的な医療給付がどのように展開されたと説明されているのかを先行研究をもとに整理し、レビュー論文として公表した。次に、生活保護行政に長年携わった経験のある行政職員にインタビュー調査を実施し、行政職員の立場から「医療扶助は誰にどのように給付されてきたのか」という問いに関する意見を聞き取った。加えて、医療扶助受給経験のある当事者にインタビュー調査をするために支援団体にコンタクトをとり、関係性の構築を図った。以上が2022年度の実績の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「なぜ戦後日本では医療ニードには積極的に対応する生活困窮者処遇が展開されることになったのか」という問いを解明するため、「戦後日本において医療扶助は誰にどのように給付され、誰をどう処遇してきたのか」という作業課題を、2022年度から2024年度までの間に、段階的に検討している。2022年度は、作業課題のうち「医療扶助は誰にどのように給付されてきたのか」を検討した年度であった。 まず、戦前から戦後にかけて、生活困窮者処遇において政策的な医療給付がどのように展開されたと説明されているのかを先行研究をもとに整理し、レビュー論文として公表した。具体的に参照したのは、戦前の社会事業史と戦後の社会保障史である。その作業から、(1)戦前から戦後において、医療がその他の福祉よりも生活困窮者処遇に関わらざるを得ない背景に、政府による福祉給付の抑制傾向があったこと、(2)戦前と戦後の明白な違いとして、戦後に量的拡大された政策的な医療給付が、生活困窮者処遇において、戦後に創設された各種制度との第一接点として機能していたり、居所の提供というかたちで機能したりしていること、以上二点が整理された。 次に、生活保護行政に長年携わった経験のある行政職員にインタビュー調査を実施し、行政職員の立場から「医療扶助は誰にどのように給付されてきたのか」という問いに関する意見を聞き取った。具体的にインタビュー調査を実施したのは、都道府県レベルの行政職員と市区町村レベルの行政職員である。 加えて、医療扶助受給経験のある当事者にインタビュー調査をするために支援団体にコンタクトをとり、関係性の構築を図った。 以上から現在までの進捗として、「医療扶助は誰にどのように給付されてきたのか」という作業課題に対して、社会事業および社会保障の歴史、行政職員の見解、当事者の見解をもとに多角的な側面から検討している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き「医療扶助は誰にどのように給付されてきたのか」という作業課題を、歴史資料、行政職員および当事者へのインタビュー調査をもとに検討し、論文として公表する。 次に、「医療扶助は誰をどう処遇してきたのか」という残りの作業課題を検討する。特に当事者の居場所ニードに積極的に対応してきた病院での医療扶助入院に焦点を当て、治療の必要がないのに医療扶助を受給しながら長期入院や短期頻回転院をすることになっている原因と、退院後の受け皿が見つかりにくい原因を、各アクターの関係性を歴史的に整理することで明らかにする。 そのうえで、医療扶助の内実が、医療扶助費として社会保障財政にいかなる影響を与えているのかを分析し、福祉行政の手続き的にも財政的にも、「なぜ戦後日本では医療ニードには積極的に対応する生活困窮者処遇が展開されることになったのか」という問いに、最終的な答えを導く。それにより、医療ニードに依拠した生活困窮者処遇の課題と限界を明確化し、医療ばかりに依拠しない処遇の仕組みへの移行に向けて、社会的に議論を要する論点と、整備されるべき社会的条件を抽出する。
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