研究課題/領域番号 |
22K13618
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 東京聖栄大学 |
研究代表者 |
熊谷 美智世 東京聖栄大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30914858)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 真空包装 / 野菜 / 調味 / 空隙率 / 組織構造 |
研究開始時の研究の概要 |
真空調理は食材と調味液を真空包装し,その後加熱するという2工程からなる調理方法である。真空調理の特徴の一つとして味がよくしみ込むといわれている。申請者らは真空包装後においては常圧包装よりも有意に味がつくが,加熱後は有意差がなくなることを明らかにしている。このことは,野菜に調味するためには加熱などにより細胞膜機能を消失させる必要があるが,真空包装ではその必要がないことから生の野菜の食感を失うことなく,調味可能であることを意味している。そこで,本研究では真空包装による調味の現象を種々の野菜について調べ,そのメカニズムを解明するとともに,新たな調理加工法としての真空包装の活用法を構築する。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究により,真空包装処理による溶液の浸入量は野菜によって異なることが明らかとなった。真空含浸法の先行研究において,浸入量には食材の空隙が関与していることが報告されていることから,2023年度は種々の野菜の空隙率に着目した。空隙率は野菜内部に存在するすべての空隙割合を示した真の空隙率と有効空隙率(等張液を用いて真空包装処理を行った際に溶液が浸入した体積の処理前の試料体積に占める割合)を測定した。その結果,真の空隙率が大きいものほど有効空隙率が大きい傾向を示したものの,野菜のなかには真の空隙率は同程度でも有効空隙率が異なるものがあった。このことは野菜における空隙の大きさや入り方に違いがあると考えられることから,X線CTスキャンで空隙の状態を撮影し画像解析を行った。その結果,真の空隙率が同程度で有効空隙率の大きい野菜においては,有効空隙率が小さい野菜に比べて空隙のサイズが大きく,つながっている部分が多い様子が観察された。さらに,同一試料を用いて等張液による真空包装処理前後についてX線CTスキャン撮影を行ったところ,有効空隙率の大きい野菜では,処理前の空隙が溶液で満たされた様子が観察された。すなわち,真空包装による溶液の浸入量には野菜の空隙の状態が関与し,真空包装処理を利用することで野菜の空隙に溶液を浸入させることができると考えられる。 生の野菜への調味は細胞膜の半透性が消失し調味料成分が食材内部へ拡散することによって可能となる。生の野菜を調味する場合は,一般に塩漬けによることが多いが,塩漬けには一定濃度以上の食塩を必要とすることから,生野菜の調味という観点において課題といえる。真空包装処理を用いて塩漬け以外の方法で調味ができれば,真空包装処理は新たな生野菜の調理法となりうる可能性が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定は、真空包装による溶液の浸入量ついて野菜の空隙の観点から検討する予定であった。野菜内部に存在するすべての空隙割合を示した真の空隙率と有効空隙率(等張液を用いて真空包装処理を行った際に溶液が浸入した体積の処理前の試料体積に占める割合)を測定し、さらに空隙の状態についてもX線CTスキャンにより観察することができた。これらの結果から、真空包装による溶液の浸入量と空隙の関連性について明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
真空包装処理では圧力勾配により食材の空隙に溶液が浸入し効率よく調味できる可能性が示唆された。生の野菜を調味した料理の代表的なものに漬物類がある。生の野菜に直接調味しようとすると細胞膜の半透性があるために時間がかかり,短時間で仕上げようとすると前処理として塩で揉むなどの作業が必要となる。一方で高濃度の調味液を使用すると急な脱水が起こり,調味液濃度が低下するだけでなく生とは異なる特有の硬い食感になる。真空包装処理を利用すれば生の食感を保持しながら調味された,新しい調理品の可能性が考えられることから,次年度は真空包装を漬物に利用した場合について検討する。
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