研究課題/領域番号 |
22K13625
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
植原 俊晴 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (30887279)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 概念変化 / マイクロジェネティック法 / 科学的知識 / 概念的理解 / 小中学校理科 / 基本概念 / 知識理解の水準 / 小・中学生 / 理科 |
研究開始時の研究の概要 |
OECDが示すコンピテンシーを育成する要素として,教科の知識の獲得がある。一方,生徒は科学的知識の概念的理解が苦手であり,これの向上が課題である。また,科学的概念の学習には生徒が概念変化を経験する必要があるので,概念変化を促す理科授業が期待されるが,理科授業における概念変化過程は明らかではない。 本研究は,複数学年の理科授業で観察される発話や行為などをマイクロジェネティック法で分析し,概念変化のきっかけやそれに伴う思考の変化に着目して,概念変化過程を横断的に明らかにする。そして,生徒の概念的理解を促す観点から,理科授業を構築する手がかりを与えたり,理科教育政策の課題を検討したりすることを目指す。
|
研究実績の概要 |
2年目の目標は,①理科の授業において得られた学習過程のデータから,学習者が科学的概念を構成する際に直面する困難や構成されたと推察される概念の保持について検証すること,②1単元の理科授業を通してデータを収集し,概念変化が生じたきっかけやそれに伴う思考の変化を観点に,学習者の行為に随伴する発話などを対象にして,マイクロジェネティック法を援用して解釈的に分析することであった。 ①については,中学生を対象に化学反応式を学習する過程において,その概念を構成する際に生徒が直面する困難や構成したとみなされる概念の保持について調べた。前者については,化学式の意味を高度な知識理解の水準で理解することや,化学式から原子の種類や数に関する情報を正しく把握することが,化学変化を化学反応式で表すときの難しさであることが示唆された。後者については,「物質モデルカード」を操作させる授業(実験群)と「原子や分子のモデル」を描画させる授業(対照群)を行い,化学式や化学反応式に関する調査を行ったところ,約3カ月の調査(遅延調査)で,実験群で有意に多くの生徒が化学変化を化学反応式で表すことができていた。この結果については,理科教育学研究誌(第64巻第1号)で公表した。 ②については,小学3年生が磁石の性質を学習する過程や中学2年生が気象とその変化を学習する過程について,1単元を通した授業をそれぞれ記録した。学習指導要領解説に記載されている内容を参考に,例えば小学3年生では,「磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があること」や「磁石に近づけると磁石になるものがあること」などを主要な概念と位置づけ,このような概念が構成される過程について,マイクロジェネティック法を援用して分析を進めている。 今後の課題としては,②に関して分析を進め,学習者の概念変化の過程を明らかにすることである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は,理科の学習場面における学習者の概念変化過程を明らかにするため,1つの単元に亘る授業のデータを収集し,分析を進めることであった。 小学校3年生を対象にした磁石の性質を学習する場面で,単元内自由進度学習を導入した理科の授業および中学校2年生を対象にした気象とその変化を学習する理科の授業からそれぞれデータを収集することができた。これらのデータについては現在分析中であり,学会等で報告する予定にしている。 また,学習者の発達とともに,生物の進化に関する概念がどのように変化するのかを調査した。その結果,中学校や高等学校で進化について学習し,構成された進化概念の内包は比較的一貫性のあるものであったが,それを過剰な範囲に適用し,外延は広くなる傾向が示唆された。これについては,この一部を日本理科教育学会第73回全国大会で報告した。 データ収集上の課題をある程度解決し,小学校および中学校の1単元に亘る授業のデータが得られたことは2年目の成果の1つである。引き続き,マイクロジェネティック法を援用して質的に分析したり,必要に応じて知識理解の水準を測定する量的な分析を組み合わせたりすることで,本研究の目的を達成することができると考えられる。これらより,概ね2年目の目標は達成されたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために,研究実施計画に基づき研究を進める予定である。具体的には,得られているデータをマイクロジェネティック法を用いて事例的に分析することで,対照の児童・生徒が既有概念から科学的概念を構成する過程を明らかにし,個別の事例から一般的な傾向を導き出すことを目指す。そのために,可能な範囲で多くの事例について分析を進めていく。
|