研究課題/領域番号 |
22K13627
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
瓦林 亜希子 都留文科大学, 教養学部, 准教授 (10780249)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | フレネ教育 / 子ども主体 / 学習者主体 / 探究型学習 / 真正の学び / フランス / 自己表現 / 批判的思考 / 探究 / 生活綴方 |
研究開始時の研究の概要 |
「探究型学習」を主体的・協働的に進めるためには「真正の学び」(自分が自分であることを示す“真実性”を表現し共有すること)が不可欠であり、それを幼少から青年期まで連続して保障する重要性について、近代的歴史観からその意義を探りつつ現代の教育実践を通して明らかにする。ともに1920年代に生まれた生活綴方とフレネ教育を取り上げ、学習者が自らの生活経験を軸に興味・関心を探究へと昇華していく過程について分析する。当時の学びが歴史的に強い先駆性を持っていること、探究的学びという自己表現を長期的に行うことで「真実性」を発見・共有でき自他の世界を広げることが可能になること、以上2点を日仏共同研究により証明する。
|
研究実績の概要 |
一年目の2022年度は、日仏における探究型学習を先駆的に実践している学校の見学を行った。生活教育を軸に独自のカリキュラムのもと教育を行っている①②「私立和光小学校」(世田谷と鶴川)、作文を中心に子どもの自己表現を尊重する教育を推進する③「私立桐朋小学校」(調布)、新教育学者ニイルやデューイの思想を軸に体験学習を軸とした教育を行う④「きのくに子どもの村学園小中学校」(和歌山)、仏トゥールーズ市でフレネ教育を含む新教育の思想を取り入れた教育実践を行っている⑤私立ラプレリー幼稚園小中学校、以上の日仏で計5校の学校を訪問した。また、仏トゥールーズ大学からの招聘により、同大にて大学院での授業を計2回行った際には、生活綴方の実践例を紹介し、戦前から現代まで日本においても子ども中心の教育が行われてきた歴史と意義と自由な表現活動を尊重する教育の先駆性について、発表を行なった。この招聘の際に、上記でも述べた通り、トゥールーズ市内でフレネ教育を含む様々な新教育の理念・思想を元に独自の実践を幼小中と連続して行う私立ラプレリー幼稚園小中学校へ、2日間の見学をすることができたことは大変参考になった。ここでは幼稚園からプロジェクト型教育を取り入れ、子どもたちが自分の興味のあるテーマについて調べ発表するという探求型学習を、中学校までの教育実践の土台としている。今後の調査でさらに詳細を明らかにしていきたい。加えて、今年も県立都留高校にて学校評議員の任務を配されたご縁で、同校にて数年前から行っている探究学習の授業:通称「つる探」の中間発表と途中の授業、そして最終発表の合計3回の見学をさせて頂いた。高校生たちがグループで興味ある分野の研究を進めていくプロセスを、年間を通して見られたことは大きく、問いを持つことや批評の難しさ等の課題も浮き彫りになった。来年も継続して同校の探究活動を見学し分析していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の主な研究計画として、上記での研究成果の他に、1)南仏にてフレネ教育を実践してきた3人の先生方を日本に招聘し、都留市内の学校での生徒たちとの交流や大学での講演とゼミ等での研究交流、2)フランスのフレネ教育における探究型学習用の教材:理科・社会分野の「学習文庫(BIBLIOTHEQUE DE TRAVAIL :通称BT)」と呼ばれている小中学校用の教材一式を渡仏時に購入、3) フランス・トゥールーズ大学での日本とフランスにおける自己表現を尊重する教育実践についての講演、の3つを予定していたが、実現できなかった。理由として、1)については、新型コロナウイルス感染拡大による海外渡航の制限はこれまでよりも緩和されたものの、依然として多少の困難はあり、安全面等も含めフランスから一度に3人の先生を招聘するためには未だハードルが高かったこと。2)については、今回2023年3月に渡仏した際は、フランス全土が年金制度改革に反対するデモやストで混乱しており、郵便・交通事情がマヒしている期間であったため、購入は断念せざるを得なかったため。3)については、2)で述べたフランスにおける年金制度改革に反対するデモにより、講演を予定していた当日に大規模なゼネストが行われることになり、大学自体が閉鎖となり、講演はやむなく来年度に延期となったことによる。来年度こそ、これら3つの確実な実現を目指したい。
|
今後の研究の推進方策 |
来年2023年度は、コロナをめぐる規制はいよいよ解除される予定のため、今年度に引き続き、日本とフランス両国において、探究型学習を行っている学校現場での調査を行いつつ、同時にその記録のまとめと論文化に着手する。特にフランス・トゥールーズ市内の私立学校で、幼小中と連続してフレネ教育を含めた新教育の教育思想をもとに独自の実践をしている私立ラプレリー幼稚園・小学校・中学校には、可能な限りまとまった期間の見学を果たし、フレネ教育を幼少時から思春期まで連続して行なうことの意義について分析する。そして2023年秋以降に、南フランスでフレネ教育を小中高で行ってきた3人のフレネ教師たちを日本に招聘し、フランスでのフレネ教育実践の歴史と現状についての講演会と、都留市内の小中高の訪問と生徒たちとの交流を計画している。招聘予定の3人は、それぞれ南フランスのある地域において、保護者からの強い要望もあり、小学校、中学校、高校と、継続して子どもたちがフレネ教育を受け、協働的な学びを長期間に渡って深められるようにと、フランス国内においてさえも先駆的と言える実践を重ねてきた経験を持っている。このような貴重な経験談から、日本においても如何にして真の探究型学習やそれに伴う協働的・主体的な学びを実現できるかについて、多くの示唆を得られると考えている。さらに仏トゥールーズ大学からは、24年3月に再び招聘の話を頂いているため、今度こそ同大にて日仏における自己表現を尊重する教育実践についての講演を行いたい。その渡仏の際には、フレネ教育における探究型学習用の教材:理科・社会分野の「学習文庫(BIBLIOTHEQUE DE TRAVAIL :通称BT)」と呼ばれている小中学校用の教材一式を購入し、この教材の詳しい内容やその系統性等について論文化を目指す。
|