研究課題/領域番号 |
22K13639
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
榎 景子 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60813300)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 管理職 / ふるさと教育 / 地域創生 / ミネソタ校長アカデミー / 校長の力量形成 / 総合的な探究の時間 / 地域活性化 / 学校管理職 / 日米調査 / 育成システム |
研究開始時の研究の概要 |
近年わが国では人口減少や地域衰退等を背景に、学校を核とした地域づくりが求められている。そこで本研究では「地域創生」に資する学校づくりに向けて、第一にその中核を担う学校管理職にはいかなる職能(役割、心構え、力量等)が求められるのか、第二にそれらの育成システムの存立は可能か否か、存立可能な場合はいかなる要件が求められるのか(理論的基盤、制度運用の条件、関連アクターの役割・関係、研修プログラムの内容・方法等)を、日米の実践事例や制度改革の調査分析を通じて解明する。分析成果から、わが国で活用可能な「地方創生に向けた効果的な学校管理職研修プログラム」を開発し、その実施・検証を通じて理論化につなげる。
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研究実績の概要 |
本年度の研究は、まず日本の事例として「学校を核とした地域づくり」に取り組む小学校管理職に焦点を当てて、管理職がなぜどのように地域に向き合おうとしているのか、また、次世代および次世代社会の育成・創造という社会再生産の相における学校・教職の使命を自校の教職員へいかに伝え、彼らを育てようとしているのかについて、参与観察や聞き取り調査を重ねてデータを収集し分析を進めた。 その結果、実践が生起した経緯として、少子化等の社会変化に加えて、保護者の中に地域への諦めの感情があり、それを子どもに伝えてしまうことへの危機感があった。諦めの感情が伝えられれば子どもの足元が揺らぎ、自己肯定感の醸成にも影響を及ぼすと考えられたのである。 次に、具体的実践としては、教職員の負担軽減にも配慮しつつも、多様な価値観を持つ人に関わってもらいながら、子どもたちがふるさとの人・思い・実際を知る仕掛けがなされていた。他方、同校の実践で特徴的であったのは、日常の教育活動に保護者を巻き込んでいることである。それは①長期的視野をもって次世代育成のための「種まき」をするという観点から、②保護者に地域の良さを知ってもらうという大人の学びの観点から行われていた。特殊なスキル・専門性からばかり学ぶのではなく、日常的にできる人ができることをやれるシステムづくりが目指されていたといえる。また、教職員に対しては「生涯にわたる教育」のなかで学校教育の役割を考えさせようとしていたことも明らかとなった。以上の研究成果は、日本教育制度学会にて発表を行った。 次にアメリカの事例としては、ミネソタ州を訪問し、校長の継続的な力量形成を行っている「ミネソタ校長アカデミー」について調査を行い、特に地域との関係づくりについてどのような学びが行われているのかについて聞き取ることができた。以上の成果については、次年度に引き続き解析を進め論文としてまとめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は特に日本の動向については、管理職の異動等もあり調査対象校を当初予定の複数校から1校に絞ったものの、他方で当該小学校では15時間にもわたる管理職及び教職員への多角的な聞き取り調査を行うことができた。その結果、「学校を核とした地域づくり」の実践の特質や意図、課題などが明らかとなったことが最大の成果である。分析内容は学会でも発表し、意見をもらうことができたことから、それらを踏まえつつ、現在、論文化を進めているところである。 また、アメリカの事例については、当初の訪問予定地からは変更があったものの、計画時点から着目していた「コミュニティリーダーとしての学校管理職」の研究を行っているKhalifa, M.の理論を基盤とした管理職の専門性開発を行っている「ミネソタ校長アカデミー」の実施調査を敢行し、現地でしか得られない資料を収集するとともに調査対象としている担当者にインタビュー調査ができた点で、大きく研究が進んだと言える。現在、追加調査の予定を立てており、次年度に実施して学会発表および論文化につなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の前半(4~9月)は、日本の事例に関するデータ解析を進め、論文を完成させる。論文化にあたって追加調査が必要になった場合は、実施していく。同時にアメリカの事例に関する現地収集資料の解析を進めるとともに、追加調査の予定を立てる。昨年度も一度訪問していることから、ミネソタ大学への調査受入はスムーズに進むことが予想されるが、あわせて校長会などにもアプローチして、十分な資料収集ができるよう努めたい。9月には調査を実施したいと考えている。 年度後半(10~3月)は、主に資料の解析を進めて論文等の形にまとめていく予定である。今年度の調査結果を中心としつつも2回目の訪問調査の結果も踏まえて、10~11月には研究成果を学会で発表する予定である。学会発表での意見等も踏まえながら、引き続き分析を進めて論文化する。
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