研究課題/領域番号 |
22K13659
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
村田 観弥 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (80782531)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 障害疑似体験 / 身体性 / アイマスク体験 / 車いす体験 / 障害理解 / 自己理解 / アンコンシャス・バイアス / 障害理解教育 |
研究開始時の研究の概要 |
【2022年度】《研究1》学生へのパイロットスタディを実施。アイマスクと車いす体験のワークをそれぞれ公募した20名程度の学生に試行する。アンケートをもとにインタービューを行い、データをもとに体験プログラムを開発する。 【2023年度】《研究2》体験プログラムを50名程度の学生に実施する。体験のアンケート調査と並行して、参加者10名程度にインタビューし、体験過程でどのような変化が自身に生じていたのかを量質両面から分析、効果を評価する。 【2024年度】《研究3》体験プログラムを、現職教員や自治体の啓発活動などにも利用可能な汎用性の高いものへと精錬する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、障害理解教育として広く行われる障害疑似体験を、「障害者理解」ではなく「自己理解」のための体験として開発し評価することである。従来の障害疑似体験は、障害者への理解を促進するとされる一方、障害者に対する誤解や偏見を助長するとの指摘がなされてきた。そして、その批判を乗り越えるため、実施者が精緻に構造化した内容で実施する方法が求められている。しかし、誤解や偏見が生じないよう綿密に練られた体験は、実施者の意図する「正解」に誘導されたものに過ぎない。そこで、環境との相互作用として「障害」を体験し、身体性(不安、驚き、違和感など)を掘り下げることで「障害の問題」を障害者の問題でなく、誤解や偏見を生み出す「自身の問題」としてとらえる疑似体験プログラムを開発する。 2023年度は、昨年度実施した視覚障害当事者である研究者に協力を依頼し、実際にアイマスク体験活動に参加してもらいながら指導助言を得る実験的試みの成果の一部をまとめ、2023年8月の日本教育学会第82回研究大会にて、「疑似障害と生成変化の批判的体験活動ー差異の生成に着目した関係論的研究ー」と題し発表した。今後、論文化し投稿予定である。また、本研究の鍵概念である「理解」についての考察をまとめ、『教育における「理解」の脱構築試論-解釈学からフロム,バルトを経由して-』(立命館産業社会論集59(2) 43-57頁)として論文化し発表した。 さらに、本研究の「障害」概念の検討に欠かせない「インクルーシブ教育」についての国際的動向について翻訳作業を行い『インクルーシブ教育ハンドブック』(北大路書房)を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したとおり、昨年度実施のアイマスク実験についてまとめた成果を学会発表した。さらに、本研究における重要な「理解」概念についての論文をまとめ、考察を深めた。 さらなる展開のため、車いす利用者の協力を得て体験活動の助言を得る試みも実践し、プログラム再構成の材料となる実験時の音声と動画データ、参加者の談話データを収集した。時期を並行して学生を対象に障害疑似体験を2回実施した。今回はこれまでの手続きに加えイヤーマフを用いた手話体験と、イヤーマフとアイマスクを併用した重複重度障害(盲ろう)体験も実施した。さらに、「身体性」の限界を検討するためのVR(バーチャルリアリティ)を用いた「発達障害疑似体験」を、学生を対象に2回実施しデータを取集した。VRでの体験活動は、これまでの本研究では得られなかった効果が期待できる可能性があり、新たな研究の方向性が見いだせた。 以上から、本研究における成果報告と新たな実験によるデータ取集ができており、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
日本教育学会第82回研究大会にて発表した「疑似障害と生成変化の批判的体験活動ー差異の生成に着目した関係論的研究ー」を論文化し投稿する。さらに、車いす利用者の協力を得て体験活動の助言を得る試みについても分析し学会発表を行う。 VRを用いた発達障害疑似体験も加えて、研究成果を教員養成プログラム、もしくは学生向けの教員養成プログラムとして再構成し完成させる。可能であれば近隣自治体に依頼し、現職教員向けの教員研修プログラムとして実施先を調整する。
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