研究課題/領域番号 |
22K13660
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
中島 悠介 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (60780939)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 湾岸アラブ諸国 / 教育制度 / アラブ首長国連邦 / カタール / 教育改革 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はUAEとカタールに焦点を当て、2000年代以降に進行する教育改革の中で、多様なアクターによる関与の様相を包括的・構造的に明らかにする。湾岸アラブ諸国ではグローバル化への対応とともに、資源に依存しない知識基盤社会の構築を目指し、多くの教育改革が実施されてきた。それらの改革はイスラームの伝統的な価値観や強固な国家権威といったローカルな要素と、欧米諸国の手法の採用や機関の関与という国際的な要素がせめぎ合う中で展開している。本研究は、両国の教育改革に対してどのようなアクターが関わり展開しているのか、また、類似した社会環境を持つ両国においてどのような共通点と相違点が見られるのかを考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、湾岸アラブ諸国の中でも特にアラブ首長国連邦(UAE)とカタール国(カタール)に焦点を当て、2000年代以降の主要な教育改革の動向を、「政府」「コンサルティング機関」「学校」といった多様なアクターによる関与の観点から検討し、この地域における教育改革の特質を導き出すことを目的としている。 この目的のため、2022年度は特にUAEを取り上げ、その教育改革の動向を整理した。UAEでは2000年代以降から積極的な教育制度改革が進められているが、主なものとして2018年以降の学校段階の組み換えが挙げられる。従来は基本的に5―4―3制とされていたが、2018年以降は4-4-4制に組み替えられており、連邦全体でより統一的な制度を目指すとされた。また、2008年よりドバイにおいて学校監査が実施されており、各学校が格付けされ、その結果が社会に公表されることで、学校運営にも影響を及ぼしている。加えて、2017年よりUAEのすべての学校において道徳教育が導入され、イスラーム教育とともに統合的な価値教育の実施が進められている。このように、UAEでは積極的な教育改革が進められるとともに、教育内容や制度を全国的により統一的なものにしようという動きが見られる。 これらの成果は、中島悠介「第24章 アラブ首長国連邦の学校―ローカルとグローバルの両立をめざす学校」二宮晧編著『世界の学校―グローバル化する教育と学校生活のリアル』学事出版、2023年、198-203頁、中島悠介「アラブ首長国連邦の教育改革」『「湾岸アラブ諸国における若年層の社会参画促進と社会変容」研究会』日本貿易振興機構アジア経済研究所、2022年において公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の大部分は新型コロナウイルス禍で海外渡航が困難であったことから、これまで入手してきた文献資料及び日本国内で入手できる文献資料の検討を進め、湾岸アラブ諸国の教育制度改革の展開について整理してきた。UAEでは2000年度以降にイスラーム教育や道徳教育、学校教育段階、学校監査をはじめとした積極的な教育制度改革が進められているが、それらの多くが政府主導で進められながらも、内容に応じて欧米諸国のコンサルティング機関も活用されている。 その一方で、2022年度終了間際には海外渡航の制限も緩和され、湾岸アラブ諸国でも現地調査が可能な状況となっている。実際に、2023年2月~3月にはUAEに渡航し、連邦教育省やドバイ知識・人材開発庁における教育制度改革の担当者とも、今後の現地調査に関する打ち合わせを実施している。また、UAEや各首長国の教育改革に影響を及ぼしうるコンサルティング機関とも、将来的にインタビュー調査を実施するための調整を進めている。 加えて、今後カタールにおいても現地調査を実施するために、文献資料の収集・分析を進めている。特に、2000年代に実施された「Education for a New Era」によるインディペンデント・スクール設置の推進及び最高教育評議会の設立による教育行政改革について、その背景や内容、コンサルティング機関の関与について整理するとともに、2010年代以降のこれらの廃止の動向について検討することを通し、現地調査実施に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、2022年度後半には湾岸アラブ諸国に渡航可能になっており、政府機関や学校への訪問も可能な状況になっているため、2023年度以降には積極的に現地調査を実施する予定である。特に、UAEではこれまで連邦教育省やドバイ知識・人材開発庁といった政府機関とのつながりを形成しているため、これらの関係者に対してインタビュー調査や関連文献の収集を実施する。加えて、これまで研究の対象としてきた学校にも訪問し、連続的に実施される教育改革からどのような影響を受けているのか、また、学校側からのアプローチについても調査するため、これらの学校との調整を進めている。 さらに、2023年度から24年度にかけてはカタールにおいて調査を実施するために、日本国内で入手できる文献資料、これまで入手してきた文献資料を検討し、2000年代以降の教育制度改革の動向について整理を進めている。加えて、すでに面識のあるカタール大学の教員及び教育・高等教育省の関係者との調整を進め、カタールの教育制度改革に影響を及ぼしうるアクターにどのようなものがあるのか、また、実際にどのような影響を及ぼしてきたのかを明らかにするためのインタビュー調査を実施できるよう準備する。 以上の調査をふまえ、UAEとカタールにおいて進めてきた文献調査・現地調査で得られた情報を整理し、その異同を検討することによって、湾岸アラブ諸国における教育改革の特質を各アクターによる関与の観点から考察し、最終報告書の作成に努める。
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