研究課題/領域番号 |
22K13662
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
金 美連 熊本学園大学, 外国語学部, 准教授 (10896335)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 地域との連携 / 地方教育行政 / 韓国 / 外国人生徒 / 外国人密集地域の学校 / 多文化教育 / 多様性 / カリキュラム / 代案学校 / 教育支援 / 韓国の多文化教育 / 外国につながる子ども / 多様性の承認 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、日本において、早期離学や未就学の問題など、外国人生徒の学ぶ権利の保障や居場所の確保が課題となっている。韓国でも同様の課題を抱えており、その対応として2010年代以降、従来の公立学校とは異なるタイプの学校を積極的に導入してきた。代表的なものとして、外国人密集地域で導入される「多文化教育政策学校」や完全分離型の教育を行う「代案学校」等がある。本研究では、これらの学校におけるカリキュラム、個別の支援、地域社会との連携に関する実態調査を行い、外国人生徒に必要な「包摂的な」学校整備のあり方について示唆を得る。
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研究実績の概要 |
本年度は、外国人生徒に対する「包摂的な」学校教育を進める際に重要となるポイントを抽出することを目的として、現地調査を継続した。特に、外国人集住地域の教師や教育行政へのインタビュー調査、ならびに地域支援センター(3カ所)への訪問調査を行い、外国人生徒への効果的なアプローチについて、主に検討を加えた。 分析から明らかとなったのは、外国人生徒の教育支援にかかわる「特殊性」と「普遍性」の両方の視点からのアプローチの重要性である。韓国ではこれまで、「外国ルーツ」という文化的な差異から起因する「特殊性」に着目し、手厚い韓国語教育の提供、外国人保護者を巻き込んだ実践、キャリア教育の強化という三つの取組みに力を入れてきたが、近年では教育福祉事業との連携などにより、すべての子どものための発達保障という「普遍的な」アプローチの中で、制度設計を捉えなおそうとする動きが加速していることを指摘した。すなわち、入国年数や親の社会経済的な地位の違いなど、外国人生徒の多様性が増す中、生活支援、心理的ケア、基礎学力保障については韓国人生徒と共通のニーズがあることから、すべての子どものホリスティックな発達保障の議論の中に、外国人生徒に対する支援を位置付け、対応を細分化しようとしていることがわかった。それは、外国人生徒の文化的な「特殊性」を強調しがちな昨今の研究動向に、重要な視点を提供するものといえる。 また、学校をサポートする機関について検討するため、昨年度に引き続き、外国人集住地域の地域支援センターが担う役割について分析を行った。学力の問題のみらず、心理的な困難を抱えることも多い外国人生徒にとって、同センターは心理・情緒的なケアや緊急性の高い福祉のニーズに適しており、入国初期の子どもや学校教育の「外」にいる外国人生徒への対応を中心に、学校との役割分担が図られている実態を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の二年目は、外国人集住地域における支援学校の実態分析、特に、国や地方教育行政が進める外国人生徒のための様々な支援策が実際に教師や現場の担当者にどのように受け止められているのかを確認することが中心的な課題であった。当初は教師を対象とした量的なオンライン調査を予定していたが、調査を進める中で、サンプリングによる質的調査の方が「包摂的な」学校教育の条件を探るうえでより効果的であると判断し、調査方法を変更した。そこで、ソウル市の代表的な「多文化教育政策学校」であるK小学校、京畿道の外国人生徒向けの公立代案学校であるK学校(小中高)および「多文化国際革新学校」の指定を受けているY中学校に対象を絞り、現地調査を行った。分析の結果、外国人生徒の「多様性」に応えるためには、追加予算の投入によるマンパワーの拡充および地域社会とのネットワークの深化が重要であること、また、多文化教育を学校全体の改革として捉える視点が欠かせないことが示唆された。すなわち、自由裁量のカリキュラムの拡大や代案学校の導入等、従来の画一的な学校教育から脱却し、子ども一人ひとりの「多様性」の実現を重視する韓国全体の教育改革の潮流が多文化教育の実践にも重要な下支えとなっていることが明らかとなった。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
外国人生徒に「包摂的な」学校教育について、「特殊性」と「普遍性」という視点の重要性については、令和5年度に発表した論文の中で、その一部を明らかにすることができた。令和6年の研究では、教員加配をはじめ、多文化カウンセラーやバイリンガール講師、大学生メンターなど、マンパワーの拡充に焦点を当て、その実態を明らかにするとともに、それがいかなる運営体制の下で実施されているのかを検討していく。 併せて、外国人生徒に特化したキャリア教育について、令和5年度の学会発表で、社会情動的スキルを重視する国のカリキュラムを紹介したが、今年度は韓国語教育や外国人保護者に対する支援内容についても追加の調査を行い、さらなる検討を行いたい。 「外国ルーツ」という「特殊性」と、「子どもの発達保障」という「普遍性」の両方の観点から、いかなる制度整備が効果的であるのかを具体的に提示することが、今後の課題となる。
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