研究課題/領域番号 |
22K13703
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 |
研究代表者 |
高原 耕平 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター, 主任研究員 (10844566)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 震災学習 / 阪神・淡路大震災 / 教員間の伝承 / 災害伝承 / 当事者性 |
研究開始時の研究の概要 |
災害伝承の本質は何なのだろうか。災害は容易に言語化できないトラウマ的で集合的な体験であり、それを語り・聴くことは衝撃的で痛切な体験である。それゆえに伝承は感受性や当事者性の形成をもたらす創造的な体験となりうる。また、伝承が被災者から非体験者への営みであるなら1世代で途絶えてしまう。創造的で持続可能な災害伝承はいかにして可能なのか。 本研究は阪神地域の公立学校で続けられてきた阪神淡路大震災の「震災学習」に着目し、伝承・防災教育を通じた当事者性形成のプロセスを明らかにすることで、伝承の理論的基盤を提示する。特に当事者性の形成が教員にも生じていると捉え、両者の発達が相乗的に生じる可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
阪神・淡路大震災で校区に大きな被害を生じ、当時の児童と職員が亡くなった神戸市内のX小学校において2022年1月および2023年1月に震災学習の校内調査を行った。また、2021年夏に実施した同小教員へのインタビュー調査の分析を進めた。 以上の調査研究により、(1)震災学習において同小教員が被災状況の想像と当時の被災者等への共感を重視した授業を展開していること、(2)被災体験を持つ教員の多くは自身の被災体験の語りを授業に用いているが、いわゆる「語り部」のように体験談を中心とするものは少なく、授業の合間に自身の体験談を織り交ぜる形式が多いこと、(3)小学校6年間全体の震災学習において災害死の熟考が到達点として設定されていること、(4)児童はこれらの学習体験において教員が求めるもの(想像と共感、災害死の熟考)によく感応していると推測されていること、(5)震災後に生まれた若手教員は、震災体験を持たないことを自身の震災学習においてポジティブにとらえている面があること、などを明らかにした。以上の知見は、震災学習を受けてきた人々を対象とする研究(科研費2019年研究スタート支援)の成果とも整合している。 これらの成果をまとめ、地域安全学会学会誌に論文を投稿し、現在査読を受けている。また、質的心理学会等でも分析結果を口頭発表する予定である。 以上の研究成果は、災害体験に基づいた防災教育が教員の世代を越えてゆく可能性を示唆している点で重要な意義を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
校内調査と教員インタビュー調査の論文化は順調に進展している。 また、他被災地域との比較について、宮城県石巻市の教員にパイロット調査を実施した。 神戸市教育委員会の震災学習教材『しあわせはこぼう』の分析は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
地域安全学会に投稿した論文では震災学習授業の分析や教員の世代間継承の検討を進めたが、やや総論的になったきらいがある。より詳細な分析を進める。 また、この分析は神戸市内の一つの小学校に絞ったものであるため、神戸市教育委員会・兵庫県教育委員会の協力を得て、質問紙による面的調査を実施する。
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