研究課題/領域番号 |
22K13707
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金 鍾成 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90825837)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 困難な歴史 / 真正な対話 / 歴史対話 / トランスナショナル / 難しい歴史 / デザインリサーチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国内外の歴史を取り巻く葛藤の原因として指摘されている難しい歴史の教育的価値を発掘し、その価値を実現することのできる方策を探究するデザインリサーチである。具体的には、日本と他国(第1期:韓国,第2期:米国,第3期:オーストリア)の子どもが,両国の難しい歴史をめぐる「国家」の語りを解体し,「子ども」の語りを再構築するトランスナショナル歴史対話を開発・実施・検証することで、「難しい歴史」のデザインリサーチ、子どもが主体であるトランスナショナル歴史対話 、「難しい歴史」を活用した「有意味な歴史教育」を試みる。
|
研究実績の概要 |
本研究は,国家の一面的な語りに異議を申し立てる「困難な歴史(Difficult History)」の教育的価値を探究し,その価値の実現に挑戦する日本と他国(第1期:韓国,第2期:米国,第3期:オーストリア)の市民によるトランスナショナル歴史対話のデザインリサーチである。 2年目である令和5年度は、主に困難な歴史の教育的価値を実現するための対話の方略とその媒体の調査を行った。 まず、Julia Roseの記念的博物館教授学(Commeorative Museum Pedagogy)を手掛かりに、学習科学と精神分析学の知見を踏まえながら困難な歴史をどのように学校教育で教えることができるかを探った。その成果は全国社会科教育学会の第71回全国研究大会で報告され、その方略にもとづく単元案は広島大学教育ヴィジョン研究センターの定例オンラインセミナー講演会No.156で提案された。 また、トランスナショナル歴史対話の媒体としての博物館と教科書の価値に注目し、教材研究を行った。博物館に関しては、日本の広島、仙台、大阪、東京、海外のソウル、ウィン、ニューヨークにある困難な歴史を展示している博物館を調査し、対話プログラムの作成可能性を検討した。その成果を踏まえて令和5年度2月には、日本と韓国の市民がともに韓国ソウルにある「戦争と女性人権博物館」に訪れ、どのように「慰安婦」という困難な歴史を記憶すれば良いかに関する歴史対話を行った。その成果は、2024日韓社会科教師交流会で発表された。また、「慰安婦」という困難な歴史が日本、韓国、中国、米国の教科書にどのように書かれているかを分析し、対話のための準備を行った。その成果は、全米社会科協議会のInternational Assemblyで発表された。 最後に、米国とオーストリアでの実践に向け、現地の研究者との調整を行い、次年度に実施する計画を立てた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目である令和5年度は、トランスナショナル歴史対話のための方略と媒体の研究に集中した。その成果として博物館と教科書の対話の媒体としての価値が発掘でき、それを用いたトランスナショナル歴史対話のプログラムが開発された。それにもとづいて昨年度に続き、日本と韓国のトランスナショナル歴史対話を2年連続で行うことができた。2年目で計画されていた日本と米国のトランスナショナル歴史対話の実践が先送りになったが、対話プログラムおよび対話の相手が確定されているため全体の研究目標の達成には無理がないと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和6年度では、これまで行った理論研究とそれにもとづいて開発されたトランスナショナル歴史対話プログラムを実践し、その成果を分析・省察することが重要である。既に行った日本と韓国の実践を分析し学会発表および学会誌に投稿するとともに、日本と米国、日本とオーストリアの実践も着実に計画し、実践・分析・省察する必要がある。1年間の2つのトランスナショナル歴史対話ができるように、各国の研究協力者との調整を進めていきたい。また、分析・省察の成果を踏まえて、トランスナショナル歴史対話の支えている原理をさらに洗練していくことにしたい。
|