研究課題/領域番号 |
22K13770
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
垣本 晃宏 森ノ宮医療大学, 医療技術学部, 講師 (50443784)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | VR / 静脈注射 / 放射性医薬品 / 緊張感 / 医療技術 / 学習効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、没入型VR技術を導入した放射性医薬品投与システムの開発、診療放射線技師の養成教育効果、および、緊張感と学習効果の関連性の調査を目的とする。核医学検査における静脈ライン確保等のシーンについて、実際の臨床現場および患者を想定した標準3Dモードと、実空間上では見えない上肢の内部組織や放射線を映像化する可視化モードを搭載することで、体感的な緊張感に差を設ける。従来およびVRトレーニングの教育効果を比較し、緊張感と学習効果の関連性を明らかにする。本研究は、教育面に加えて経済面、穿刺や放射線被ばくに伴う倫理的事由も解決され得る重要な研究テーマである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、没入型VR(virtual reality)技術を導入した放射性医薬品投与システムの開発、診療放射線技師養成教育(以下、放射線技師教育)における教育効果、および、緊張感と学習効果の関連性の調査である。初年度の2022年度は、主に核医学検査における静脈ライン確保、自動静注装置との接続および操作、抜針および止血等の手技に関連する実空間環境の整備及びVRシステムの開発を進めた。まず、近隣の医療機関に協力いただきながら、放射性医薬品の上肢静脈注射に必要な検査室環境、患者接遇や処置等、実際の医療現場を想定したシナリオを作成した。次に、シーン毎の診療放射線技師の動きを360度カメラにて動画撮影し、技師の視点で処置作業をトレースできるコンテンツを作成した。現在はこのシナリオを基に、完全なVR空間上で没入型体験ができるよう開発を進めている。 本研究の特徴である緊張感と学習効果の関連性を調査するため、実際の臨床現場および患者を想定した標準3Dモードと、実空間上では見えない上肢の内部組織や放射線を映像化する可視化モードを搭載することで、体感的な緊張感に差を設ける予定である。そこで、できうる限りヒトの血管走行に近いモデルを構築するため、研究代表者所属機関の倫理審査承認を経て、上肢のMRおよび超音波撮影を実施している。現状、予定されているボランティア20名中約半数の撮影を終えており、一部のデータを用いて上肢動脈および静脈の3Dモデルを構築後、VR空間上に投影、透視化まで確認済みである。これにより、上述の標準3Dモードと可視化モードのVRシステムの実現が可能となり、緊張感と学習効果の関連性を明らかするためのキーシステムがおおよそ完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究計画は、(1)没入型VRを用いた放射性医薬品投与システムの簡易版を開発すること、(2)上肢の内部構造モデル構築のため、MRおよび超音波計測を実施することの2項目である。(1)の遂行にあたり、操作者の視線解析機能付きのVRゴーグルおよび、細かな手指の動きをトレースできるグローブ型VRデバイスを購入させていただいた。なおこの際、当初購入予定であったVRグローブが廃版となった影響もあり、研究費用の前倒し請求をさせていただいた上で、研究遂行に支障のない別製品を選定、購入したことも併せて報告する。また、ソフトウェアは無償版のUnity(Personal)及びSteamVR Unity pluginを利用しており、前述のシナリオに沿ってシーン毎のVR環境整備を進めている。 一方、(2)の遂行に必要なヒト計測のため、研究代表者所属機関の倫理審査承認後に若年層のボランティア約20名を募り、上肢の外観3D写真撮影、MR計測、超音波計測を実施している。3種類の画像を用いて、上肢皮膚表面から内部血管走行の若年層の平均的な詳細モデルを構築する予定であり、これまでのところ約50%の撮影が終了している。また、撮影は継続して中期的に進める予定だが、撮影が完了している一部のデータを利用して、(1)の簡易版システム構築用の上肢モデルを作成した。ソフトウェアはOsiriX MD Version12を用いてVR投影、透視用の上肢外観および血管走行モデルを構築し、VR上にコンテンツとして追加した。結果、上述の標準3Dモードと可視化モードのVRシステムの切り替え機能が実装され、緊張感と学習効果の関連性を明らかするための簡易版システムが完成した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は放射性医薬品投与に関する簡易版VR投与システムを構築し、ハード、ソフト面のインフラ整備を行った。2023年度前半もMR及び超音波撮影を継続し、より詳細かつ多彩な上肢モデルを構築することに注力する。また、検査シナリオやシーンの詳細を詰め、より臨場感ある医療現場を再現したVR環境に仕上げていく予定である。加えて、視認できない放射性医薬品の放射線分布マップを可視化モードに追加導入し、放射線被ばく低減を意識した患者接遇や静注操作の技術習得が可能な、放射性医薬品投与時の没入型VR教材の完成を目指す。 続いて、2023年度後半からは、本研究の核心となる「VR操作時の緊張感が学習者の臨床トレーニングとパフォーマンスにどのような影響を与えるか」について本格的な調査を進めるため、VR操作時の生体情報を同時測定できるよう準備する。具体的にはVR操作者の視線、脳波等の生体情報や、POMS(Profile of Mood States)等のアンケート形式による気分の数値化を予定している。 最後に、2024年度は最終版の放射性医薬品投与VRシステムの教育効果を検証し、かつ、緊張感と学習効果の関連性を調査する。予定では、まず、放射線技師養成校に所属する学生ボランティア30名を男女比や成績に有意な差がでないよう10名ずつの3群にグループ分けし、①市販の模擬血管を用いた従来の実習法、②標準3DモードのVRシステム、③可視化モードのVRシステムによるトレーニングを実施する。また、操作中の動作、視線、脳波を計測し、POMS(Profile of Mood States)等で気分を数値化する。実技評価スコア、視線、脳波、POMSを多角的に解析し、本システムにおける緊張感と学習効果の関連性を明らかにする。
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