研究課題/領域番号 |
22K13791
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 向社会的行動 / 文化 / 他者の期待 / 後悔感情 / お節介 / 罪悪感回避 / 対人的相互作用 / 関係流動性 |
研究開始時の研究の概要 |
直接的な援助要請が少ない日本では,困っている人のニーズや期待を察知することが求められている。しかし,援助する意志があっても,受け手の期待に応えることができない場合もある。受け手との関係を継続する見込みが高く,新しい人間関係を構築する機会が少ない文化においては,こうした援助行動の不実行や不成功が送り手の心理状態と二人の関係性に大きな負の影響を及ぼす可能性がある。本研究では,援助行動の失敗状況に着目し,受け手の期待の効果を文化心理学の観点から検討することを目的としている。
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研究実績の概要 |
日本では、直接的な援助要請が少ないため、困っている人のニーズや期待を感じ取ることが重要である。これまでの研究では、サポートの提供を促す要因に焦点が当てられてきたが、サポートを提供する意志があっても、提供できなった場合や、提供したサポートが受け手の望んでいたことではなかった状況に着目する研究が少ない。本研究では、サポート提供の失敗状況に注目し、受け手の期待の効果を文化心理学的観点から検討することを目的としている。具体的に、送り手の行動が受け手の期待に応えられなかった場合、送り手の感情や今後の行動はどのような影響を受けるのかを探求する。 令和5年度にサポート提供の失敗が送り手の感情に与える影響を検討するためにシナリオ実験を実施した。この実験では、職場でのサポート提供の場面を取り上げ、同僚に期待されていなかったサポートを提供してしまった場合(サポート実行条件)と待ち望まれたサポートを提供しなかった場合(サポート不実行条件)の送り手の後悔感情を比較した。明確な援助要請のない状態での援助提供があまり多くない日本において、お節介となりえるため、積極的なサポート提供は一般的でないと考えられる。一般的でないことをして失敗した時に後悔感情を経験しやすいため、不実行条件に比べて、実行条件における後悔感情がより強いという仮説を検証した。予想に反して、不実行条件ではより強い後悔感情が報告された。また、実行条件の送り手はより好意的に評価された。これらの結果から、サポート提供の失敗場面において、受け手の期待よりも、社会的望ましさが重要視される傾向にあり、お節介であっても、サポート提供が称賛されやすいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度に一つのシナリオ実験を実施することができたが、結果は仮説を支持するものではなかったため、研究方法や質問紙の内容を見直し、新しい研究を実施することが必要である。また、シナリオ研究だけではなく、実験室実験も計画しているが、サポート提供の失敗を実験室で引き起こす実験課題の設計をまだ模索している段階にいるため、研究の進展がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に行った研究では、向社会的行動の失敗における送り手の感情体験と今後の援助提供意図、また、第3者から見た送り手の人物評価を検討した。その結果、必要なサポートを提供しなかった送り手が、不必要なサポートを提供した(お節介をした)送り手に比べて、より強い後悔感情を抱き、今後の援助提供意図がより高く、有能さや温かさがより低く評価された。この結果は、日本の職場では、サポート提供が規範的とみなされていることを示唆している。しかし、サポート提供の規範性を直接的に測定していないため、規範の影響を明らかにするために、さらなる検討が必要である。また、社会的望ましさのバイアスを排除するために、より外的妥当性の高い実験課題が必要である。 そこで、令和6年度に、サポート提供に関する規範が向社会的行動の失敗状況の解釈にどのような影響を与えているのかをより詳細に検討するために、シナリオ実験、調査と実験室実験を実施する。シナリオ実験では、職場のサポート規範を操作し、サポート提供の規範が存在しない職場において、お節介がよりネガティブに評価されるかどうかを検討する。また、有職者を対象に調査を行い、現在の職場におけるサポート提供に関する規範の強さを評価してもらい、規範の存在がお節介の評価に与える影響を検討する。加えて、チームワークにおける実際のサポート提供の失敗を観察できる実験課題を用いて、失敗した後の送り手の感情体験を検討することを予定している。これらの研究を通して、向社会的行動の失敗はどのように解釈され、どのような条件において非難されるのかを明らかにし、サポート授受の多い社会づくりに貢献できるエビデンスを得たい。
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